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池田清彦

震災1年、心の支えは 池田清彦

 東日本大震災から1年が過ぎた。多くの人々が肉親を失い生活の場を失った。かろうじて苦難から立ち上がった人もいれば、鬱々(うつうつ)とした日々を送っておられる方もいるはずだ。「人はパンのみにて生きるにあらず」というのは、人は衣食住なしには生きられないことを意味すると同時に、心の持ちようの重要さを説いたものだ。リセットせざるを得ない人生にどう立ち向かえばよいのか、あるいはその人たちとどう向き合えばよいのか。「がんばろう」という威勢のよい言葉を掛け合っているだけでは心は空しくなるばかりだ。

 鷲田清一『語りきれないこと 危機と傷みの哲学』(角川oneテーマ21)は、近代化とはライフラインをすべて行政などに任せることで、危機の際には無能力になっていくプロセスのことだと述べる。個々人の危機対応能力を上げるためにいま何を考えたらよいかを、深く静かに語った本だ。自分が立ち直り、他人を立ち直らせるのはコミュニケーションの力だが、コミュニケーションとは単なる情報のやり取りではなく、それを通して人の心がなごむことだ。

 被災者のためにボランティア活動をした人も多いと思う。西條剛央(たけお)『人を助けるすんごい仕組み ボランティア経験のない僕が、日本最大級の支援組織をどうつくったのか』(ダイヤモンド社)は、伯父さんを津波で亡くした著者が、できることはすべてやろうと決意して始めた支援活動の経緯を赤裸々に語って感動的だ。プロジェクトの有効性は状況と目的に応じて決まる、という現場主義の考えが、物心両面の支援の指針として役に立つことがわかる。

 最後に御手洗瑞子(たまこ)『ブータン、これでいいのだ』(新潮社)を紹介したい。GNH(国民総幸福量)第1位の国として知られるブータンで、GNHコミッションの「首相フェロー」第1号として働いた著者が語るブータン滞在記だ。ブータンでは役人といえども手帳を持たず、予定は覚えられる範囲までしか立てない。どんな失敗も基本的には許されるとか。日本人もブータン人を見習えば、少しは幸せに近づけるかもね。

 (早稲田大学教授〈生物学〉)

『語りきれないこと 危機と傷みの哲学』
編著:
鷲田清一
出版社:
角川学芸出版 角川oneテーマ21
価格:
¥760(税込)
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『人を助けるすんごい仕組み』
著者:
西條剛央
出版社:
ダイヤモンド社
価格:
¥1,500(税込)
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『ブータン、これでいいのだ』
著者:
御手洗瑞子
出版社:
新潮社
価格:
¥1,470(税込)
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