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十代、こんな本に出会った

『脱走と追跡のサンバ』 俳優・ラサール石井さん

ラサール石井さん

言葉どどっ、何なんだ? 笑える

 シュールなギャグ、すごい疾走感、破壊的なスラップスティック。とがった表現がこれでもか、となだれ込んでくる。「SFでこんなカッコいいことができるのか!」。筒井康隆さんの『脱走と追跡のサンバ』(早川書房・重版未定)との出会いは強烈で、その後、僕が目指す「笑い」の決め手となりました。

 当時、僕は鹿児島にある私立ラ・サール高校の2年生。寮の友人が発売されたばかりのを貸してくれた。読んでびっくり。実験的で難解なのに、ナンセンスも満載なんです。例えば「もちろんですともあなた。わはは、わは、わは、わははははははは」って、一体いくつ「は」を読ませれば気がすむのか。「画期的飛躍的畳韻的スーパー・ヘテロダイン的スリリング・ワンダー的大発見」って、何なんだ。笑える。こういう笑い、好きだなぁ。続けざまに筒井作品を読んで、すっかりとりこになりました。

 もともとは小説家か漫画家かフォーク歌手になりたかったんです。小学生の頃は江戸川乱歩やディクスン・カーを乱読して、中学でガストン・ルルーの大作『黄色い部屋の秘密』を読破。壁新聞に推理小説を連載したこともあります。「黒い粉の秘密」って題名で凶器は鉛筆。もう思いっきりネタバレですよね。で、あと書くことなくて、すぐ連載打ち切りました。

ラ・サール高校時代のラサール石井さん(本人提供)

  漫画は小学生の頃、鉄腕アトムを描くのが得意で。だけど左向きのアトムしか描けなかったから、いろんな向きのアトムが描ける転校生がやって来て人気を奪われ挫折。

 歌も、作詞作曲からイベントまで主催してかなり本気でしたが、あまりの音楽性の無さに自ら気づいて断念。

 やっぱり小説家かそれとも放送作家か。揺れ動いた末に選んだのは舞台でした。大学でミュージカル研究会に入ってみると、舞台にはやりたいことが全部ありました。創作したければ脚本を書けばいいし、歌ってもいい。ナンセンスで人を笑わせることも。

 でも、ナンセンスで笑わせるのって難しいんです。日本人は「笑い」にも意味や秩序を求めるから。だから時には筒井さんの「禁ギャグ無断流用」の戒に背いて……。今も大変お世話になっています。

 (ライター・安里麻理子 写真家・吉永考宏)

◆おすすめは

 文章がきれいでユーモアがあって、しかも漢字が多いから勉強になる!ということで、小中学生には『吾輩は猫である』(夏目漱石著、新潮文庫・660円など)を。ヘビを鍋で煮て食べるとかブラックなホラ話も面白いし、名作を読んだという達成感が格別です。  少し大人の高校生や大学生には『ライ麦畑でつかまえて』(J・D・サリンジャー著、野崎孝訳、白水Uブックス・924円など)。著者は10代の傷つきやすい心をよくわかっているなあと感心する。僕にとっては大学1年の時、遠距離恋愛に破れた僕が最後に彼女に贈ったという、いわくつきの本でもあります。

らさーる・いしい  1955年、大阪府生まれ。劇団テアトル・エコー養成所を経て「コント赤信号」結成。声優、タレント、演出家としても活躍。
『脱走と追跡のサンバ』
著者:
筒井康隆
出版社:
早川書房など
価格:
品切れ重版未定

『吾輩は猫である』
著者:
夏目漱石
出版社:
新潮文庫
価格:
¥660(税込)
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『ライ麦畑でつかまえて』
著者:
J.D.サリンジャー
出版社:
白水Uブックス
価格:
¥924(税込)
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