どくしょ応援団

本を読もう。何を読もう? 迷ったら「どくしょ応援団」へ。親子で、ひとりで、夢中になれる本との出会いがここに!

ブックサーフィン

十代、こんな本に出会った

『城砦』 医師・細谷亮太さん

細谷亮太さん

男子一生の仕事、見つけられた

 小学生のころに「偉人伝」で読んだ野口英世やリンカーンは、みんな子どものころ、貧しい暮らしをしていました。だから母が新しい靴を買ってくれた時など、「こんな贅沢(ぜいたく)をしていたら人の役に立つ人間にはなれない」と思い、わざわざ汚したりしたものです。

 父は村の開業医。戦後間もない時代にしてみれば恵まれていたと思います。それでも急患とあれば夜中でも跳び起き、車も通らない道を歩いて往診です。「人の役に立つとはいえ医者は大変だ」と子どもながらに思いました。

 その後、医学部に進んだものの、産婦人科は出産に立ち会うのが恐ろしく、酒豪ぞろいの外科は体質的に飲めない(と当時は思っていた)からあきらめ、幼い命に寄り添う小児科にやりがいを見つけました。でも、「苦労するぞ」と父は言ってましたね。

 そんな僕の背中を「男子一生の仕事に値する」と押してくれたのが『城砦(じょうさい)』(A・J・クローニン著、竹内道之助訳、三笠書房ほか・重版未定)です。新米ドクターがへき地医療に携わり、チフスの感染源だった古い下水道をひそかに爆破し、行政の怠慢に抗議する。作者自身が医者で、当時は医学界の倫理を扱った小説は珍しく、大学1年で出会って以来、ずっと手元に置いている一冊です。

大学1、2年生のころ

 そのころから、何度も読み返しているのが、太宰治の『桜桃』(280円文庫など)です。バーかどこかの大皿に盛られたサクランボ。つなげば「珊瑚(さんご)の首飾のように見えるだろう」というくだりにぐっときた。

 実家にはサクランボの木があって、季節になると母が首飾りにしてくれた。宅配便もない時代、主人公の小説家、恐らく太宰が訪れた店は、どうやって、サクランボを手に入れたのか、想像をふくらませていました。

 僕は来年1月で定年となります。その後の夢が病児のための自然体験施設「そらぷちキッズキャンプ」(北海道滝川市)開設だといえば支援してくれる人が現れるし、実家の病院を存続させてくれる仲間もいる。男子一生の仕事が本当に大切なものを教えてくれたのだと、今では思っています。(ライター・安里麻理子 写真家・吉永考宏)

◆おすすめは

 生きていく上で「いいことさがし」ほど重要なものはない、と僕は思う。『少女パレアナ』(エレナ・ポーター著、村岡花子訳、角川文庫・540円)の主人公は、大変な時でも喜びの種を見つける、「いいことさがし」の天才です。人生にはお金より力になるものがあるんだと、教えられました。

 『星の王子さま』(サンテグジュペリ著、池澤夏樹訳、集英社文庫・400円など)は、自分の中にいる「子ども」ともう一度お友だちになれる本。読む年代によって「子ども」の姿が違って見えるのも面白いし、10代で読んでおくと生涯楽しめると思います。

ほそや・りょうた  1948年、山形県生まれ。専門は小児がん。聖路加国際病院副院長・小児総合医療センター長。著書に『小児病棟の四季』など。
『城砦』
著者:
アーチボルド・ジョーゼフ・クローニン
価格:
絶版

『桜桃』
著者:
太宰治
出版社:
角川春樹事務所(280円文庫)
価格:
¥280(税込)
この商品を購入するヘルプ
Amazon.co.jp

『少女パレアナ』
著者:
エレナ・ポーター
出版社:
角川文庫クラシックス
価格:
¥540(税込)
この商品を購入するヘルプ
Amazon.co.jp

『星の王子さま』
著者:
サン=テグジュペリ
出版社:
集英社文庫
価格:
¥400(税込)
この商品を購入するヘルプ
Amazon.co.jp