どくしょ応援団

本を読もう。何を読もう? 迷ったら「どくしょ応援団」へ。親子で、ひとりで、夢中になれる本との出会いがここに!

ブックサーフィン

読むぞ! ホップ ステップ ジャンプ

佐藤優

信頼関係を築くには 佐藤優

  親子の信頼関係は、社会的に形成されるものです。血のつながりがあれば、自然にできるわけではありません。新生児誘拐事件を題材にした角田光代『八日目の蝉』(中公文庫)を読むと親子の信頼関係について深く考えさせられます。長く誘拐されていたため、実の両親との関係がぎくしゃくしている恵理菜は、シングルマザーになる決意をします。「子どもが生まれたら立川の実家に戻ろう。母親になれなかった母と、どんな人を母というのか知らない私とで、生まれてくる赤ん坊を育てよう。父であることからつねに逃げ出したかった父に、父親のように赤ん坊をかわいがってもらおう」と独白、近くにいる人たちとのつながりを再構築しようという気持ちが生まれます。この気持ちが実は親子の信頼関係の基本になるのです。

 親子関係が難しいことについては昔話にもたくさん書かれています。その中で、柳田国男が『日本の昔話』(新潮文庫)に収録した「鳩(はと)の孝行」が興味深い。「鳩は親が死んでから、始めて親の言うことを聴かぬのは悪かった」と思います。もし鳩が、親が生きているうちに反省することができれば、親子はずっと幸せになっていたと思います。

 信頼を構築するには、勇気を出して素直になるだけでは不十分です。人間関係にとって信頼がなぜ大切なのかを理屈で理解することも重要です。この点で宮台真司『きみがモテれば、社会は変わる。』(よりみちパン!セ)はとてもよい本で、「ローカルであること、近くに接していること、ひとつながりの共同体を意識するなかで、おたがいに内発的に『いいことをしようじゃないか』と思うような社会をつくれるかどうか。これこそが、日本が変わっていけるかどうかの、大きなポイントだと思います」と述べていますが、私も全面的に賛成です。他人に対して善い行動をする人の影響を人間は自然に受けます。宮台先生はこのことを哲学の伝統を踏まえて「感染的模倣(ミメーシス)」と呼びます。善い親子は、形はさまざまですが信頼関係を構築しています。それをまね(模倣)することが重要なのです。

 (作家・元外務省主任分析官)

『八日目の蝉』
編著:
角田光代
出版社:
中公文庫
価格:
¥620(税込)
この商品を購入するヘルプ
Amazon.co.jp

『日本の昔話』
著者:
柳田国男
出版社:
新潮文庫
価格:
¥420(税込)
この商品を購入するヘルプ
Amazon.co.jp

『きみがモテれば、社会は変わる。』
著者:
宮台真司
出版社:
イースト・プレス
価格:
¥1,260(税込)
この商品を購入するヘルプ
Amazon.co.jp