どくしょ応援団

本を読もう。何を読もう? 迷ったら「どくしょ応援団」へ。親子で、ひとりで、夢中になれる本との出会いがここに!

ブックサーフィン

十代、こんな本に出会った

安部公房『壁』 オリエンタルラジオ・中田敦彦さん

中田敦彦さん

「変わったヒト」と思われたくて

 本にしろ、ゲームにしろ、みんなが面白いというものには絶対、走らない。ベストセラーを読むなんてとんでもない。10代のころの僕は「変わったヒト」と思われたくて、かたくなでした。

 例えば高校時代、みんなが宮部みゆき、東野圭吾と騒ぐ中、僕がはまったのは安部公房です。きっかけは国語の授業で薦められた『壁』(新潮文庫)。主人公は名前をなくした男、S・カルマと名乗る「名刺」が自分になりすましているという設定に意表を突かれたし、クラスの誰も安部公房を読んでいないのも気に入った。

 文庫で何作か読んだ後、大学受験のころ、最後の長編となった『カンガルー・ノート』の書名をラジオネームに使って爆笑問題さんの深夜放送に投稿したら、読んでもらえたんです。この時は、自分の存在が初めて認められた気がして「生きていてよかった!」と思った。というのも、そのころの僕は、クラスの中で誰とも口をきかない「変わったヒト」になっていたので。

 人間の友達がいないから、暇な時は本を読みました。親の本棚で見つけた『優雅で感傷的な日本野球』(高橋源一郎著、河出文庫)、本屋をうろついて出会った『ドンナ・アンナ』(島田雅彦著、新潮文庫・重版未定)……。他にもいろいろ読んだけど、やっぱり周りが面白いという本には手を出さなかった。

高校生のころ(本人提供)

 そういう考え方が変わったのは、ここ2、3年です。「武勇伝」でブレークして、その後しばらく低迷。強烈に思いました、「変わらなきゃ」って。あらためて相方(藤森)を観察したら、ヤツは出会った時から「流行以外に関心がない人間」で、絶えず目が社会に向いている。僕は真逆(まぎゃく)で、10代のころからずっと「自分のことにしか関心がない人間」だった。

 これからは流行もチェックしよう! そう決意したものの、本の前では、まだ、あがいていますね。本には鏡みたいな作用があって、読んでいると、本当の自分の姿が見えてくる気がする。新しい鏡を集めたら新しい角度の自分が見つかるって、わかっているんですけどあまのじゃくだから。でも、まずは東野圭吾からかな、攻めていきますよ。

 (ライター・安里麻理子 写真家・吉永考宏)

◆おすすめは

 住宅地に突然ペンギンの群れが現れる。研究熱心な小学生と、不思議な能力を持つ「お姉さん」の交流を描いた『ペンギン・ハイウェイ』(森見登美彦著、角川書店・1680円)は、犬も猫も苦手な僕が「動物好きな心優しい人間」を装うために手にした結果、思いがけず爽やかな読後感に浸ってしまった一冊です。

 『「悪」と戦う』(高橋源一郎著、河出書房新社・1680円)はその逆で、人間の醜さ、悪意、すごく嫌な部分をパラレルワールドで展開します。「お笑い」では触れにくい、だけど誰もが持っている一面に気づかせてくれるところに、小説の力を感じます。

なかた・あつひこ  1982年、大阪府生まれ。慶応大在学中に明治大の藤森慎吾と出会い、お笑いコンビ「オリエンタルラジオ」結成。
『壁』
著者:
安部公房
出版社:
新潮文庫
価格:
¥515(税込)
この商品を購入するヘルプ
Amazon.co.jp

『カンガルー・ノート』
著者:
安部公房
出版社:
新潮文庫
価格:
¥452(税込)
この商品を購入するヘルプ
Amazon.co.jp

『優雅で感傷的な日本野球 』
著者:
高橋源一郎
出版社:
河出文庫
価格:
¥735(税込)
この商品を購入するヘルプ
Amazon.co.jp

『ドンナ・アンナ』
著者:
島田雅彦
出版社:
新潮文庫
価格:
重版未定
この商品を購入するヘルプ
Amazon.co.jp

『ペンギン・ハイウェイ』
著者:
森見登美彦
出版社:
角川書店
価格:
¥1,680(税込)
この商品を購入するヘルプ
Amazon.co.jp

『「悪」と戦う』
著者:
高橋源一郎
出版社:
河出書房新社
価格:
¥1,680(税込)
この商品を購入するヘルプ
Amazon.co.jp