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読むぞ! ホップ ステップ ジャンプ

池田清彦

違う価値観を知ろう 池田清彦

 学校でのいじめが社会問題になって久しい。個々のケースの直近の原因は様々だろうが、閉鎖社会の中での同質性圧力が共通の原因として根底にあることは間違いあるまい。世界は広く、学校の中だけで通用している価値観などたかが知れていることに思い至れば、いじめも少しは減るだろう。少し異なる考えをもつ人たちの本もぜひ読んでほしい。

 まず呉智英『健全なる精神』(双葉文庫)を紹介したい。学校指定の推薦図書にはまずならないであろうこの本を読めば、いじめたりいじめられたりするのがアホくさくなることは保証する。民主主義は少数者の立場を尊重する思想などでは決してなく、多数者の立場を少数者に押しつける思想に決まっている、とのまえがきからはじまって、全編が世の常識なるもののいかがわしさを暴露するエッセーで満ちている。著者の意見に賛成するしないはともかく、多様な意見を知ることは、力強く生きるためにとても大事だ。

 名越康文『自分を支える心の技法』(医学書院)は精神科医である著者が、対人関係に悩んでいる人に向けて、解決策は相手との関係をどうするかではなく、自分の心にどう向き合うかにあることを、わかりやすくつづったものだ。キーワードは「怒り」である。怒りは百害あって一利なし、と著者は言う。しかし、日本の社会は怒りに甘く、怒っている人をかっこいいと思う風潮すらある。怒りは危険であり、上手にコントロールしないと人生も社会もロクなことにならない。怒りを消せば心も落ち着き、見えなかったものも見えてくる。対人関係に悩んでいる人は、本書に書かれた名越式レッスンを試してみたらどうかしら。

 本川達雄『「長生き」が地球を滅ぼす』(文芸社文庫)は題こそ過激だが、中身は極めてまっとうである。現代社会は膨大なエネルギーを使って寿命をのばし、所要時間を短縮し、効率化を実現した。しかし、それは生物の本来の時間とは折り合わず、現代人の不幸の源泉はここにあるとの著者の主張はもっともだ。本書を読んで、人類の来し方行く末を考えるのも悪くない。

 (早稲田大学教授〈生物学〉)

『健全なる精神』
著者:
呉 智英
出版社:
双葉文庫
価格:
¥630(税込)
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『自分を支える心の技法』
著者:
名越康文
出版社:
医学書院
価格:
¥1,470(税込)
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『「長生き」が地球を滅ぼす』
著者:
本川達雄
出版社:
文芸社文庫
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