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佐藤優

心開く力で関係修復 佐藤優

 人間関係でも、外交でも、こじれてしまった関係を修復するには、たいへんなエネルギーが必要になります。綿矢りさ『ひらいて』(新潮社)は、どうすれば人間が信頼を回復できるかについて描いた傑作です。

 高校3年生の愛は、すこし陰がある同学年のたとえ君に恋をしています。たとえ君の机の中から手紙を盗みだし、たとえ君が美雪と付き合っていることを知ります。愛と美雪は1年生のときは同級生でした。愛は美雪と友だちになれば、たとえ君の気持ちを引き寄せることができると思い、さまざまな策略をめぐらします。ある晩、愛はたとえ君を呼び出し、「私を好きになってほしい。私のものになってほしい」と告白しますが、拒絶されてしまいます。

 自暴自棄になった愛は、美雪に自分の策略を暴露します。信頼関係が完全に失われてしまったと思っていた美雪から愛に手紙がきます。そこには、「ほんのひとときでも、心を開いてくれたのであれば、私はその瞬間を忘れることはできません」と感謝の気持ちが記されていました。それから、心を開く力によって、愛と美雪とたとえ君は、こじれてしまった関係を修復するだけでなく、ほんとうの友だちになります。綿矢さんは、人間の心の奥底にある肯定的な力を見事に描き出しています。いじめ問題を解決するためにも心を開く力を再発見することが大切です。

 スウィフト『ガリヴァー旅行記』(平井正穂訳、岩波文庫)は、いまから300年近く前の作品です。大人国、小人国など、架空の国への旅行を通じて、異文化の中で人間がどうすれば、お互いに尊敬できる関係を構築することができるかについてスウィフトは真剣に考えています。

 現実の外交の世界では、松本俊一『日ソ国交回復秘録』(朝日選書)を読むと、国家間のこじれた関係を修復していくためには、交渉に従事する政治家や外交官の職業的な誠実さと相手の気持ちを理解する人間力が重要であることがわかります。松本氏の「私はひそかに外交とは忍耐の同義語だと感じた」という言葉が感動的です。

 (作家・元外務省主任分析官)

『ひらいて』
著者:
綿矢りさ
出版社:
新潮社
価格:
¥1,260(税込)
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『ガリヴァー旅行記』
著者:
スウィフト
翻訳:
平井正穂
出版社:
岩波文庫
価格:
¥945(税込)
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『日ソ国交回復秘録』
著者:
松本俊一
解説:
佐藤優
出版社:
朝日新聞出版
価格:
¥1,575(税込)
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