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池田清彦

公平な社会とは 池田清彦

 自由で平等で戦争や紛争のない社会は人類の夢だが、現実にはそんなユートピアのような社会はない。それは人間という生物種の性質に根差すものなのか、それとも現在の社会制度に欠陥があるせいなのか。

 山極寿一『15歳の寺子屋 ゴリラは語る』(講談社)は長年アフリカの森でゴリラの生態を研究してきた著者が、人間を映し出す「鏡」としてのゴリラの社会を解説した、楽しく、そしてちょっぴり切ない本だ。ゴリラは平和的な動物で弱者に優しく、紛争を上手に解決する知恵も持っているという。人間社会が紛争だらけで階層格差が縮まらないのは、所有欲と過剰な愛と言語を有しているせいだとの著者の洞察は示唆的だ。それにしても野生のゴリラと友達になれる著者の勇気と優しさもすばらしいよね。

 多くの人はもちろん階層格差に心を痛め、平等な社会を実現しようとして社会制度の改革に努力してきた。しかし、現場を見ない理念だけの制度改革は逆効果になることも多い。苅谷剛彦『学力と階層』(朝日文庫)は日本の教育制度の問題点を、階層の固定化という観点からあぶり出した労作である。教育は生身の人間が行うものであり、先生を追い詰めれば追い詰めるほど破綻(はたん)が進むという指摘はまったくその通りだと思う。階層下位の子弟は能力とは別の社会構造的な理由により、勉学への動機付けを奪われているとの指摘も重要だろう。巻末には内田樹の解説があり、苅谷の考えのエッセンスをすくい取って秀逸だ。

 あまりにも大きな経済格差が生ずるのも困った問題で、それに対処するために考え出されたのがベーシックインカム(BI)である。BIは「最低限の生活を保障するために政府が基本所得を無条件に一律に給付する構想」であり、魅力的ではあるが問題点も多い。萱野稔人編『ベーシックインカムは究極の社会保障か』(堀之内出版)は9人の論者がBIのメリットとデメリットを論じている。BIは労働と生活を切り離すというラジカルな思想だけに、おのおのの論考も熱を帯びていて読み応えがある。

 (早稲田大学教授〈生物学〉)

『15歳の寺子屋 ゴリラは語る』
著者:
山極寿一
出版社:
講談社
価格:
¥1,050(税込)
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『学力と階層』
著者:
苅谷剛彦
出版社:
朝日文庫
価格:
¥777(税込)
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『ベーシックインカムは究極の社会保障か』
編・著:
萱野稔人
出版社:
堀之内出版
価格:
¥1,680(税込)
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