どくしょ応援団

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十代、こんな本に出会った

『三毛猫ホームズ』シリーズ 放送作家・鈴木おさむさん

鈴木おさむさん

マンガでは味わえない面白さ

 僕らが10代だった1980年代は、少年マンガの全盛期でした。学生服はダボダボのヤンキー風といった具合で、「本を読むヤツはダサい」。そんな僕らを夢中にさせたのが、赤川次郎です。

 中学生のころ、爆発的にはやっていたのが『三毛猫ホームズ』シリーズ(光文社文庫ほか)でした。そんなに面白いの?と手に取ったら、確かに読みやすい。推理小説としても、物語としても面白かった。マンガしか眼中になかった僕らでさえ楽しめる本を書く人って、あのころ他にいたのかな。

 あとは、友達が「めちゃくちゃ面白い」って教えてくれたシドニィ・シェルダン。中でも『明日があるなら』(天馬龍行訳、アカデミー出版サービス、絶版重版未定)は、幸せの絶頂にいたヒロインが犯罪に手を染め、世界を股にかける展開が予想外で、まるでハリウッド映画を見ているようだった。

 「本にはマンガでは味わえない面白さがあるんだな」と実感したけれど、残念ながら僕の読書ブームはここで終わります。それ以上の本に出会えなかったし、やりたいことが見つかったので。

小学校の卒業式で。母親と一緒に(本人提供)

 折しもテレビやラジオでは放送作家の高田文夫さんや秋元康さんが大活躍で、番組を作る仕事は面白そうだし、カッコよかった。「放送作家になる!」と決めた僕は、大学に入ると授業そっちのけで芸能プロダクションの門をたたき、この世界の見習いから始めることにしたんです。

 最初は「ピン芸人をやってみろ」ってことで舞台に立ったものの、全然ウケなかった。次にラジオ番組の制作を手伝わせてもらえたけれど、番組で使うネタを毎日10本以上書くのが鉄則。しかもリスナーの層に合わせて、主婦やOLになりきって考えろという。

 当時僕は19歳。書いてもボツだし、寝る時間はないし、ノーギャラだし。それでも認められたい一心で、月に400本は書いていました。

 思えば僕らの10代は、マンガやテレビの勢いがすごかったこともあるけど、読みたい本が少なかった気もする。今は中高生でも楽しめる作品がたくさんあるじゃないですか。僕が今10代だったらどんどん本を読んで……どんな人生になっていたでしょうね。

 (ライター・安里麻理子 写真家・吉永考宏)

◆おすすめは

 「嫉妬」は人を限りなくみじめに壊す感情だ、と僕は思う。10代で落語の世界に飛び込んだ立川談春のエッセー『赤めだか』(扶桑社・1400円)には、弟弟子に嫉妬する談春を師匠の立川談志が諭す場面が出てくる。これがどんな辞書にも載っていない大人の言葉で、しびれます。

 みんなが普通に使っているゲーム機も、発想の転換がなければこの世に存在しなかったかもしれない。そんなことを教えてくれたのが『任天堂“驚き”を生む方程式』(井上理著、日本経済新聞出版社・1785円)。本を読むと身近な物事の裏側までわかる、それが今の時代のすごさかな。

すずき・おさむ  1972年、千葉県生まれ。大学在学中にデビュー。小説『芸人交換日記〜イエローハーツの物語〜』が映画化され、3月公開予定。
『明日があるなら』
著者:
シドニーシェルダン

『三毛猫ホームズの推理』
著者:
赤川次郎
出版社:
角川文庫
価格:
¥580(税込)
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『赤めだか』
著者:
立川談春
出版社:
扶桑社
価格:
¥1,400(税込)
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『任天堂 “驚き”を生む方程式』
著者:
井上 理
出版社:
日本経済新聞出版社
価格:
¥1,785
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