どくしょ応援団

本を読もう。何を読もう? 迷ったら「どくしょ応援団」へ。親子で、ひとりで、夢中になれる本との出会いがここに!

ブックサーフィン

読むぞ! ホップ ステップ ジャンプ

池田清彦

だまされないために 池田清彦

 東日本大震災から2年が過ぎた。福島第一原発の事故の責任を誰も取らず、事故原因の追及もうやむやのまま、またぞろ原発再稼働への動きが活発になってきた。いつかまた大事故が起きても、やっぱり誰も責任を取らず同じことが繰り返されるに違いない。利権がらみで原発を推進してきた人たちの罪はもちろん重大だが、自分で物事の是非を判断せずに、不都合が起きたら「だまされた」で済ませてしまう国民にも大いなる責任があるのではないか。

 小出裕章・佐高信『原発と日本人――自分を売らない思想』(角川oneテーマ21)は反原発の旗手2人が、原発を許してきた日本人の「善人の思想」を問いただしたすばらしくスリリングな本である。「私たちには騙(だま)された責任、そして二度と騙されない責任がある」との帯のコトバが本書の真骨頂を示している。悪いのはすべて政府や電力会社のせいで、だまされた国民は何の罪もない無辜(むこ)の民だ、という構図から抜け出さない限り、この国から原発がなくなることはないのかもしれない。

 だまされているのは原発の安全性ばかりではない。中村仁一・近藤誠『どうせ死ぬなら「がん」がいい』(宝島社新書)を読めば、死への恐怖で患者を不安な状態にしてきたがん治療の実態に戦慄(せんりつ)を覚えるはずだ。中村さんは老人ホーム付属の診療所長、近藤さんはがんの放射線治療のスペシャリスト。この2人が自分たちの経験とデータに基づき、がんは特殊なもの以外、放置するのが最善であることを説いている。がん検診は有害であり、がんは治療してもさして延命には役立たず、治療しなければ痛みも少ない、という話は一般の人にとっては衝撃的だろう。

 では政府やマスコミの流している情報をうのみにせずに、自分の頭で判断するにはどうしたらいいのだろうか。『現代社会再考』(たばこ総合研究センター編、水曜社)は鷲田清一ほか22人の論者がそれぞれの立場から、考えるヒントを述べている。植島啓司さんの文章中の「井の中の蛙(かわず)大海を知らず、天の深さを知る」というコトバはいいね。大切なのは自由な精神なのだ。

 (早稲田大学教授〈生物学〉)

『原発と日本人』
著者:
小出裕章、佐高信
出版社:
角川oneテーマ21
価格:
¥820(税込)
この商品を購入するヘルプ
Amazon.co.jp

『どうせ死ぬなら「がん」がいい』
著者:
中村仁一、近藤誠
出版社:
宝島社新書
価格:
¥770(税込)
この商品を購入するヘルプ
Amazon.co.jp

『現代社会再考』
編:
公益財団法人たばこ総合研究センター
出版社:
水曜社
価格:
¥1,890(税込)
この商品を購入するヘルプ
Amazon.co.jp