どくしょ応援団

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十代、こんな本に出会った

夏目漱石『こころ』 NEWS・加藤シゲアキさん

作風や死生観、初小説に色濃く

 母が履歴書を送ってくれて、ジャニーズ事務所入りしたのは小6の時。「芸能活動ができる学校を」と受験して、青山学院中等部に入学し、高1でCDデビューできた時、「オレの人生、順風満帆だ!」と有頂天でした。

 「学業を優先」という事務所の方針から、芸能活動は放課後の部活みたいな感覚で始めました。撮影やレッスンがない時は、友達と映画や音楽の話をよくしたけれど、読書の習慣はなかった。

 ただ、これを読書といってよければ、国語の教科書が好きでよく読んでいました。

 中でも『こころ』(夏目漱石著、角川文庫ほか)には、「こんな話を高校の教科書に載せていいの?」と驚かされた。何しろ「先生」と慕っていた人物が、過去の三角関係を苦にして命を絶つというストーリーですから。

 主人公は「先生」なのか、それとも「私」なのか、どちらとも受け取れる作風も新鮮だった。実は、僕が初めて書いた小説『ピンクとグレー』(角川書店)は、物語の構造や死生観の描き方で、多分に影響を受けています。

 『ダ・ヴィンチ・コード』(D・ブラウン著、越前敏弥訳、角川文庫ほか)は、初めて読破した単行本です。「モナ・リザ」などの名画に託された暗号、謎解き、手に汗握る逃亡劇。友達の間でも大ブームで、学校がプロテスタントで聖書が身近にあったことも、流行に拍車をかけていた。

 一方、芸能活動は次第に行き詰まっていきました。華やかなデビューの裏で、僕の立ち位置はいつも誰かの後ろ。前に出ようと手を上げれば、「お前が?」といじられる。

 決定的だったのは23歳の時です。NEWSとしての活動が減り「もっと仕事を」と事務所にプッシュしたら、逆に「君は何ができるの?」と問われて即答できなかった。

 でも、書くことならできるかもしれない。ブログやエッセーを連載した経験があったし、国語の創作授業で褒められた記憶もある。それで1カ月半で書き上げたのが『ピンクとグレー』でした。

 小説も書きたい、NEWSも盛り上げたい、履ける草鞋(わらじ)は全部履いてやろう。そう思っている25歳です。

 (ライター・安里麻理子)

◆おすすめは

 本を読まない人にこそ読んでほしい、読書への扉を開けてくれそうな作品を2冊。まず『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(J・D・サリンジャー著、村上春樹訳、白水社・924円)は、自分の立ち位置がわからなくなった時に読んで、肩の荷を下ろしてもらった感じ。イノセントな少年の心がしみます。

 親友と恋人に裏切られた主人公が「冷凍睡眠」という装置でタイムスリップする『夏への扉』(R・A・ハインライン著、福島正実訳、ハヤカワ文庫、777円)は、ジョークありラブストーリーありのSFです。本を読みなれていない人でも楽しめますよ。

かとう・しげあき  1987年生まれ、大阪府出身。アイドルグループNEWSのメンバー。昨年1月、作家デビュー。2作目『閃光(せんこう)スクランブル』が話題。
『キャッチャー・イン・ザ・ライ』
著者:
J・D・サリンジャー
翻訳:
村上 春樹
出版社:
白水社
価格:
¥924(税込)

『夏への扉』
著者:
ロバート・A・ハインライン
翻訳:
福島 正実
出版社:
ハヤカワ文庫SF
価格:
¥777(税込)

『こころ』
著者:
夏目 漱石
出版社:
角川文庫
価格:
¥340(税込)

『ダ・ヴィンチ・コード』
著者:
ダン・ブラウン
翻訳:
越前 敏弥
出版社:
角川文庫ほか
価格:
¥580