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池田清彦

TPP考えるために 池田清彦

 日本がTPP(環太平洋経済連携協定)に参加するかどうかは国論を二分する大問題だが、その当否は日本のエネルギー戦略と食料戦略を深く考えることなしには判断できない。何と言っても、日本の食料自給率はカロリーベースで39%、エネルギー自給率に至ってはたったの4%なのだから。

 少し前まで、原油はもうすぐ枯渇するというピークオイル論が唱えられていたが、アメリカ発のシェールガス、オイル革命により事情は一変した。中原圭介『シェール革命後の世界勢力図』(ダイヤモンド社)は、アメリカが、世界一の産油国になり、天然ガスの供給量と価格が安定した後の世界の政治、経済の変動を具体的に描いた好著である。著者はロシア、中東などの現在の資源大国の凋落(ちょうらく)を予測し、日本は安いシェールガス、オイルを使って復活できるとの希望を述べている。そのためにTPPに参加してシェール革命の恩恵にあずかるべきだと主張する。またシェール革命によるデフレと低賃金化は不可避との立場からアベノミクスを批判しており、これは正鵠(せいこく)を射ているだろう。懸念はアメリカの好意を当てにしすぎている点だ。

 中野剛志『反・自由貿易論』(新潮新書)は『TPP亡国論』で名を馳(は)せた著者が、あらためてTPPの問題点を列挙した本だ。著者はまずTPPに参加したオーストラリアの例を引いて、TPPは超大国アメリカだけが有利になる不平等条約だと説く。アメリカは国内法によりTPPに従わないことも可能だが、日本は憲法第98条第2項で、国際条約は国内法に優先するとされているので、酷(ひど)いことになりかねないとの指摘は重要である。

 最後に食料問題についての最新の知見を網羅した『世界の農業と食料問題のすべてがわかる本』(八木宏典監修、ナツメ社)を紹介しよう。グラフと表を多用して、世界と日本の最新の食料事情を解説したもので、TPP参加のメリット、デメリットから、世界の食料の需給動向、遺伝子組み換え、水産資源の枯渇問題まで、食料関連の知識が詰まったお買い得の本だ。

 (早稲田大学教授〈生物学〉)

『シェール革命後の世界勢力図』
著者:
中原 圭介
出版社:
ダイヤモンド社
価格:
¥1,575(税込)

『反・自由貿易論』
著者:
中野 剛志
出版社:
新潮新書
価格:
¥735(税込)

『世界の農業と食料問題のすべてがわかる本 』
監修:
八木 宏典
出版社:
ナツメ社
価格:
¥1,680(税込)