どくしょ応援団

本を読もう。何を読もう? 迷ったら「どくしょ応援団」へ。親子で、ひとりで、夢中になれる本との出会いがここに!

ブックサーフィン

読むぞ! ホップ ステップ ジャンプ

佐藤 優

食の偽装、対抗策は 佐藤優

 一流ホテルのレストランなどでの食の偽装が問題になりました。マルクスの『資本論』(岩波文庫)を読むとその理由がわかります。『資本論』によると、どの商品にも価値と使用価値があります。価値は、ジュース120円、ボールペン70円のように価格で表すことができます。使用価値は、ジュースならば飲む、ボールペンならば書くというような商品の有用性です。マルクスは、商品生産では、「他の人々にたいする使用価値」を作り出すと言います。商品として売られる食事は、他の人々であるお客さんが食べるために作られます。資本主義経済では、価値を増やすこと、すなわちお金もうけは肯定されますが、そこで倫理観が欠如し、他の人々のことを考えず、売り上げだけに目を向けていると食の偽装のようなことが起きます。

 他方、お金もうけとは別の原理で食を提供している例もあります。食事をとる児童を自分の身内の延長で考えている人々が作る北海道置戸町の置戸小学校の給食はおいしいことで有名です。この町の給食センターの栄養士を長年つとめた佐々木十美さんは『日本一の給食』(学研)で、「子どもたちのために、おいしくて安全な給食を作る」技法を紹介しています。「『国産』『添加物なし』『重さ、大きさ』などの規格を作り、あらかじめ業者にお知らせして入札しました。入札の前の月に栄養士が集まって、取り寄せた全分析表とサンプルをつき合わせ、使われているものを全部調べます」と強調します。カレーの味もフランス料理のシェフから勉強し、おいしさを追求します。心のこもった給食に接した児童は、感受性も豊かになると思います。

 作家の米原万里さんは、『魔女の1ダース』(新潮文庫)で、中国、フランス、イタリアと並び日本は「美味美食が盛んな国、一般国民が料理に多大な関心をはらい、膨大なエネルギーを費やす」伝統があると言います。私も米原さんの意見に賛成です。私たちがブランド名ではなく、ほんとうにおいしいものを見分ける舌を育てていくことが食の偽装に対する有効な対策と思います。

  (作家・元外務省主任分析官)

資本論1
著者:
カルル・ハインリヒ・マルクス/フリードリヒ・エンゲルス
出版社:
岩波文庫
価格:
¥882円(税込)

日本一の給食
著者:
佐々木 十美
出版社:
NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」制作班【協力】
価格:
¥1,470円(税込)

魔女の1ダース
著者:
米原 万里
出版社:
新潮社
価格:
¥514(税込)