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十代、こんな本に出会った

『風と共に去りぬ』 脚本家・大石静さん

大石静さん=吉永考宏氏撮影

「いい子」から解放され別世界へ

 私が10代だったころは、携帯電話もなければテレビは茶の間に1台で自由に見られない、そんな時代でした。夕食の後は読書くらいしか、やることがなかったんです。

 中学生のころ、時代劇ファンだった父の影響で手にした『徳川家康』(山岡荘八著、講談社)は、家康の75年にわたる生涯を物語にした文庫本にして全26巻の歴史小説です。幼くして人質となった家康は11歳の時、年上の鶴姫に押し倒されたとか、ちょっぴりエッチな展開もあってドキドキで。ページをめくるのが楽しみでした。

 『風と共に去りぬ』(M・ミッチェル著、大久保康雄・竹内道之助訳、新潮文庫)は、母に薦められた長編です。「耐える女」が美徳とされた時代にあって、主人公のスカーレット・オハラは「欲望に忠実な女」。自分が学校でも家でも「いい子」を演じていたからでしょうか。スカーレットの奔放さ、たくましさがうらやましかった。

 実は、私が育った家は御茶ノ水にあった「駿台荘」という旅館で、両親は隣の家に住んでいました。私は女将(おかみ)の養女として大切に育てられ、そのためかどうかわかりませんが、周囲の期待に応えることが自分の使命だと思い込んでいました。読書に没頭したのは、その時だけは「いい子」から解放されて、別の世界に浸れたからかもしれません。

19歳、軽井沢で

 その「駿台荘」には、作家や学者の先生がよくカンヅメにされていました。松本清張先生や開高健先生、評論家の平野謙先生、劇作家の北條秀司先生などなど、そうそうたる顔ぶれで、高校時代に読んだ『人間の條件』(五味川純平著、岩波現代文庫)は、五味川先生がここで執筆して大ベストセラーになった長編です。

 第2次世界大戦の開戦に懐疑的でありながら、時代の奔流にのみ込まれていった主人公・梶。五味川先生は風貌(ふうぼう)も雰囲気も梶そのもので「実体験を書かれたそうよ」と母から聞いたことがあります。

 読み出すと止まらなくて、いよいよ最後の1巻になると「終わらないで〜!」とページをめくるのが惜しくなる。それが長編小説の魅力です。「長編を楽しむ習慣がなくなったなあ」という自戒も込めて、10代を振り返りました。 。

 (ライター・安里麻理子)

◆おすすめは

 若さゆえの傲慢(ごうまん)さ、残酷さを描いた『太陽の季節』(石原慎太郎著、新潮文庫・540円)は、政治家として知られる著者が大学生時代に発表した短編。若い男女のほとばしるような感性は、今でも私の胸に迫ってくるものがあります。

 『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド』(東浩紀編、ゲンロン・1470円)は、進まない被災地復興に歯がゆさを感じていた昨今、「こういう支援もありなんだ!」と、今年最も驚かされた一冊。負の遺産を「観光」することで初めて可能になる、真実の共有と記憶の継承。忌むべきは「情報汚染」であると、この本は訴えます。

おおいし・しずか  東京都生まれ。連続テレビ小説「ふたりっ子」、大河ドラマ「功名が辻」、この秋放映された「ガラスの家」など話題作多数。
徳川家康[1]
著者:
山岡 荘八
出版社:
山岡荘八歴史文庫
価格:
¥777(税込)

風と共に去りぬ
著者:
マーガレット・ミッチェル
出版社:
新潮文庫
価格:
¥780(税込)

人間の条件〈上〉
著者:
五味川純平
出版社:
岩波現代文庫
価格:
¥1,365(税込)

太陽の季節
著者:
石原慎太郎
出版社:
新潮文庫
価格:
¥540

チェルノブイリ ダークツーリズム ガイド
著者:
東 浩紀 (著, 編集)
出版社:
ゲンロン
価格:
¥1,470