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本田 由紀

過去を直視すること 本田由紀

 「〈くに〉に、政府や国会にいいたい。〈くに〉を守らせたために、どれだけ国民をひどい目にあわせたか、それを、忘れないでほしい。」

 この言葉は、花森安治という人が残したものです(『灯(ひ)をともす言葉』河出書房新社)。花森は、第2次世界大戦中に戦時意識を鼓舞する仕事に就いていましたが、その反省から敗戦後は一貫して戦争やそれを行う国家を批判し、庶民の暮らしをよりよいものにする雑誌作りと活動を続けていました。

 この言葉にあるように、日本という国にとって第2次世界大戦は、国内外のいずれに対しても、この上なく禍々(まがまが)しい過去であることは否定しようもありません。無理な戦いをアジアにもアメリカにも挑んで負けた後に、アメリカの極東基地として庇護(ひご)されてきたためにアジアとの間に今なおしこりを残すという道を、この国は、それを動かす政治家たちは、たどってきました。

 そのすべてを、いわばごまかしてきたのは、戦後の著しい経済成長と、冷戦構造と呼ばれる国際関係でした。でも、それらが終わりを迎えて20年以上が経ち、アジア諸国も経済発展を遂げてきたために、日本が置かれている位置はきわめて微妙な状態です。そうした複雑な経緯を、中学生にも理解できる文体で説いている本として、小熊英二『増補改訂 日本という国』(イースト・プレス)があげられます。

 中学や高校で日本史や世界史を学んでも、明治以後、特に敗戦後の現代に近い時期は、授業の時間が足りず、消化不良で終わることも珍しくないでしょう。でも、今を生きる私たちが最も知らなければならないのは、そうした近い過去の、時には直視したくないような歴史なのです。

 戦前にさかのぼった理解のためには、北岡伸一『日本政治史――外交と権力』(有斐閣)の、目配りの利いた記述が役立つはずです。からまり、もつれる過去と現在を踏まえぬまま、政治家や国民が軽率に行動することは、自滅しかもたらしません。敬意に値する振る舞いとは何かについてじっくりと考えることを、私たちは必要としています。

  (東京大学教授〈教育社会学〉)

灯(ひ)をともす言葉
著者:
花森 安治
出版社:
河出書房新社
価格:
¥1,365円(税込)

日本政治史−外交と権力
著者:
北岡 伸一
出版社:
有斐閣
価格:
¥1,995円(税込)

日本という国
著者:
小熊 英二
出版社:
イースト・プレス
価格:
¥1,260(税込)