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十代、こんな本に出会った

太宰治『斜陽』 DeNA創業者・南場智子さん

南場智子さん=吉永考宏氏撮影

◇反抗期、息苦しさと優越感と

 10代のころの私にとって読書とは「これくらいの本は読んでおかなくちゃ」と自分に課した義務であり、正直なところ「読んでおけば人より優位に立てるかも」みたいなところがありました。

 だから、森?外、夏目漱石、川端康成などの「文学作品」は端から攻略しましたが、動機が不純なだけにいつも息苦しさを感じていた。

 中でも息苦しかったのが太宰治の『斜陽』(新潮文庫ほか)です。日本の民主主義の夜明けといわれる昭和20年代、没落していく貴族階級の姿を主人公「かず子」を通して描いた作品で、生活力のない中で母が死に弟が自殺、自分は妻子ある人の子を産む。

 志賀直哉の『暗夜行路』(新潮文庫ほか)も暗かった。親に疎まれて育った主人公は実は不義の子で、思いを寄せる相手が祖父の愛人だったり、妻が不貞を働いたり。

 でも、読み出すと結構はまっていたんですよ、当時の世相が目に浮かんできて。「暗い人」と思われるのがいやで、こんな本を読んでいることは、友達には秘密でしたけれど。

大学に入学したころ(本人提供)

 というのも私は小学生のころから"活発"で、親が呼び出しされるほどだったので。授業中、消しゴムのカスを丸めて先生にぶつける、勝手に教室を出ていく。中学では宿題を一切せず、座席表に担任の悪口を書いて激怒させる。なぜか試験はできて、母はずいぶん嫌みを言われたようです。

 一方、父といえば、酌をしろ、腰を揉(も)め、女は勉強するな、が決まり文句。一挙一動に家中がびくびくしていました。私が学校で反抗し、家では母を見下し、社会人になると傍若無人な振る舞いをするようになった背景には、傲岸不遜(ごうがんふそん)な父の影響があったかもしれません。

 楽しんで本を読むようになったのは、30代後半で会社を立ち上げてから。息抜きする必要性に迫られたこともありますが、いろんなしがらみから自由になったのかな。

 「もう少しこの本と付き合いたい」と惜しみながらページをめくる、これは子ども時代の「戦略的な読書」にはなかった醍醐味(だいごみ)です。生き方によって本の読み方も変わるのだとしたら、面白いですね。

 (ライター・安里麻理子 写真家・吉永考宏)

◆おすすめは

 『風の中のマリア』(百田尚樹著、講談社文庫・580円)の主人公はオオスズメバチ。人間は出てきません。それなのに私たちの生き方に当てはめて読んでしまう。知られざる昆虫の生態が物語になるのも驚きだし、人知を超えたものの存在を信じたくなります。

 日本はなぜ戦争に向かったのか。『昭和史1926―1945』(半藤一利著、平凡社ライブラリー・945円)を読むと、集団のダイナミクスに巻き込まれる危険性がよくわかります。教訓が自国にある私たちは、もっと史実から学ぶべきじゃないかな。『昭和史 戦後篇』(同)も合わせて読んでみてください。

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 なんば・ともこ 新潟県生まれ。津田塾大卒。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て起業。現取締役。著書に『不格好経営』(日本経済新聞出版社)。
斜陽
著者:
太宰 治
出版社:
新潮社文庫
価格:
¥357(税込)

暗夜行路
著者:
志賀 直哉
出版社:
新潮文庫
価格:
¥925(税 込)

風の中のマリア
著者:
百田 尚樹
出版社:
講談社文庫
価格:
¥579(税込)

昭和史
著者:
半藤 一利
出版社:
平凡社
価格:
¥945