どくしょ応援団

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どくしょ甲子園Let's 読書会、高校生!!

「合同読書会」山口の高校で10年

 「私ならためらわずに、親に臓器をあげられる」「知らない人への提供は、ちょっと考える……」

 山口県山陽小野田市で昨夏に開かれた「合同読書会」。六つの高校の生徒、教員や卒業生ら約50人が、率直に語り合った。取り上げた本は、伊集院静の短編「2ポンドの贈りもの」(講談社文庫『駅までの道をおしえて』所収)。臓器提供を受ける父、提供する母、その娘の物語だ。

昨年夏、山口県三葉小野田市で開かれた合同読書会。県内の10の高校の生徒や卒業生、先生、さらには一般からも参加して盛り上がった=山口県山陽小野田市読書会の様子は毎年、班ごとに冊子にまとめられている

 テーブルにはペットボトルのお茶、キャンディーやクッキー。重いテーマでも参加者が堅苦しく感じないように、四つに分かれた各班の高校生の司会者が気を配る。

 親から子へ、子から親への臓器提供。「ためらわない」という意見もあれば、2人の子がいる人からは「親に対しては戸惑いがあるが、子どもに対しては何の戸惑いもない」との発言も。「若い世代は子どもがいないから、親にためらいなく差し出せるのでは?」など、様々な意見が交わされた。

 参加した県立厚狭(あさ)高校の村上貴広さん(3年)は「普段話さないような内容でも、ちゃかされずに受け止めてもらえる雰囲気で、安心して話せた」。森川亜弥香さん(3年)は「命を生み出した母親の感じ方は違う」と振り返った。

 「合同読書会」は、厚狭高を中心に、周辺校が参加して夏休みに開催されている。この夏で10回目となる。とりまとめ役は、同校の長尾幸子司書教諭(58)。前任の高校で校内向けの読書会を開いていたが、図書委員長の「いつも同じメンバーなので、たまには他校の人も交えてやってみたい」という発案で、他校との読書会を2000年から2回実施した。

 その後、参加校の一つだった厚狭高へ異動。担当の図書委員会で合同読書会の話をしたところ、ここでも「挑戦してみたい」の声があがった。近隣校の図書館担当者に参加を持ちかけ、複数の学校が集まりやすい夏休みの行事として03年に、再スタート。参加校は次第に増え、卒業生や、評判をきいた地域の本好きの大人も集うようになった。

 取り上げる本は、同校の図書委員が選ぶ。現代性や普遍性のあるテーマで、高校生の心を引きつける作品であることが条件。これまで金城一紀『GO』、村上龍『69 sixty nine』、さだまさし『解夏』、石田衣良『夕日へ続く道』などが選ばれた。

 議論の手がかりとなるキーワードも図書委員が用意する。昨夏の読書会では「臓器移植」に加えて「娘の進路」「親の気持ち、子の気持ち」など、共通の話題で盛り上がった。

 長尾教諭は振り返る。「感動を共有することで、先生と教え子という立場を超えた人間関係を作りたい、と続けてきた。生き方、誇りなど、ふだんはちょっと照れくさくて口にしないことも言い合える豊かな時間で、私自身が楽しんで参加している」

◇参加者の声

 ■松田浩実さん(厚狭高2年)「ほかの人の意見を聞くことで、自分の意見が変わっていった。改めて本を読んだ時、別の読み方ができることに気づいた。他人の気持ちを知ることは大事。自分勝手な人間になりたくないから」

 ■縄田藍さん(サビエル高3年)「みんなの意見を聞くことで、自分の心がほぐれていくような感覚があった。自分自身への理解が深まった」

 ■中島慶子さん(サビエル高3年)「臓器移植のように深いテーマについて若いうちから考えを深めていくと、いざという時に冷静な判断ができそうな気がする」

 ■迫田祐希さん(大学生)「読書会は、自分の内面をさらけだして『楽しかった』と喜ぶ変人の集まり。でも、『ウケる』『ヤバい』しか言えず何も感じない人生より、感情の引き出しを増やして他人を傷つけないでいられる人生を送りたい」

 ■上田なつのさん(大学生)「今年も広島から参加する予定。4回目だが、ふだん読まないような本にも出会えて、自分の世界を広げることができる」

(2010年6月17日 朝日新聞から)