どくしょ応援団

本を読もう。何を読もう? 迷ったら「どくしょ応援団」へ。親子で、ひとりで、夢中になれる本との出会いがここに!

どくしょ甲子園Let's 読書会、高校生!!受賞作発表!!

【優秀賞】

◆福井県立科学技術高校・後藤チーム 後藤嵩幸さん、田安章さん、森下章朗さん、清水悠馬さん(いずれも2年)

■とりあげた本 岩崎夏海著『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』

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〈ルポ 読書会〉

後藤の顔から笑みがこぼれた!

 後藤は、机を両拳で叩きながら「そういう(フォアボールをわざと出すような)ピッチャーは、いないんだ!」(117p)とよく叫んでいた。僕達は「後藤のじゃれごと」とほとんど気にとめなかったが、ある日、後藤がこんなことを話し始めた。

 後藤の所属する弓道部は、6月のインターハイの県予選で敗退した。その試合後に「後藤がもう少し頑張ってくれていたら」と言われていたのを耳にしてしまったのだ。

 後藤への期待が大きかったんだろうと直感的に思ったが、僕達は後藤を慰めるよりも、逆に自分の本音や悩みを次々と話し始めてしまった。僕達は、長年解決できずにため込んでいた失敗や挫折経験をはき出す場をやっと得たのである。

 そしてその解決のために、僕達は『もしドラ』だけでなく、時にはドラッカーの『マネジメント』も引っ張り出して話し合った。話題の中心は「失敗を乗り越える方法」と「心の絆の構築」だったが、結論はなかなか見えなかった。ただ不思議なことに僕達は自分を飾らず、偽らずに語ることができたのである。

 少しずつ方向性が見え始めた7月中旬、同じ福井市内にある仁愛女子高等学校と合同の読書会が行われた。その席で後藤は例の1件を話し、初対面の女子達を絶句させた。しかし僕達もまた違った意味で驚いていた。後藤の顔からこぼれる笑みは、決して自分をごまかすためのものではなかったからだ。

 「後藤が乗り越えた!」

 思えば2か月前、机に向かい合いお行儀良く始まった読書会は、演じたり歌にしてみたりと次第にアクティブ(?)になっていた。夏休みに入り部活の合間をぬって集まるようになってからは、寝ぼけている者の脇で一生懸命イラストに取り組んでいる者もいて、一気に密度が濃くなった。部長として自分のマネジメントを無形ながら実行し始めている後藤からも、例の「じゃれごと」はほとんど聞けなくなっていた。

 友の成長を目の当たりにするのは頼もしくもあるが寂しくもある。そんな中でうっすらと見えてきたこともある。

 野球部員は苦しみの共有によって、失敗を乗り越え絆を深めた。そのコミュニケーション力は何物にも代えがたいものだ。しかしそれには自分の消し去りたい記憶の中の失敗経験や挫折経験を引っ張り出す勇気も必要なのではないかと。

 そして確信できることもある。

 「みんな、ありがとう。僕達の読書会は最高の精神解放の場だ。」

〈受賞のよろこび〉

運動部仲間が化学変化

 「4人はみんな運動部だけど部もクラスもバラバラ。この読書会で初めて一緒になった。最初は練習の合間を縫って図書館に集まる時間が本当にゆるくて楽しかった。でも次第に主人公の女子マネージャーと同じように、ドラッカーが僕らにとってなくてはならない存在になった。『これで東京に行けたらいいね』なんて冗談で言っていたのが実現したのも『マネジメント』のおかげかな」


【優秀賞】

◆市川高校(千葉県)酒井チーム 酒井菜央さん、武藤碩友さん、佐々木和哉さん、小林俊文さん(以上、1年)、村上祐磨さん、岩比菜さん(以上、3年)

■とりあげた本 桜庭一樹著『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』

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〈ルポ 読書会〉

再現で迫った登場人物の気持ち

 どくしょ甲子園に出ることを決めてから1ヶ月。

 どの本にするかは散々迷ったけれど、最終的には「これしかない」と決まった。

 桜庭一樹の『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』。

 企画していたメンバーは3人だったが、面白そうということでまだ読んでいない友達も1人入り、先輩たちも加わって賑やかなものとなった。

 読書会は、著者である桜庭一樹のファンの猛プッシュで7月26日(桜庭一樹の誕生日)に行われた。

 全員が同じものを読んだのに印象に残った場面、台詞がそれぞれ違うことにみんな驚きを隠せず、他の人の意見を聞くうちに様々な読み方を知ることが出来た。読書会は自由に発言ができるから学校の感想文には書けないことも言えたと思う。

 ・結局主役の子たちは顔が可愛い設定に落ち着く(村上先輩)

 ・映子はクラスにいそうだ(武藤)

 ・小学生のとき飼育係は人気があった(小林) など。

 人魚の歌のメロディーを考えてそれぞれ歌ってみたけど、恥ずかしくてしっくりくるのはできなかった。でもぼんやりとしかつかめないのも本の良さだよね、と無理矢理結論付け、もしも自分が中1のときに藻屑が転入してきたらどうするか話し合った。友達になれそうだと思ったのは岩崎先輩だけで、あとの5人は悩んだ挙句、遠巻きに見ているポジションに落ち着いた。

 話しているうちに盛り上がってきて、本の中のシーンを再現したいと意見が出た。

 藻屑となぎさが一緒に逃げるとこ、友彦から神が抜けてただのお兄ちゃんに戻ってしまうとこ、藻屑が花名島をモップで殴るとこ、兄妹が山を登るとこ、藻屑が海に飛び込むとこ。挿絵がないから好きなように思い浮かべることが出来た。他のシーンは難しそうなので、犯罪だ犯罪だと言われつつも早速放課後の教室を利用し、花名島は佐々木くん、藻屑は岩崎先輩にお願いして、花名島が殴られるところを撮影した。この時の藻屑の気持ち、花名島の気持ち、周りにいたクラスメートたちの気持ちに少しでも近づきたかった。(表にあるのはそのとき撮った写真を加工したもの)

 話は尽きなかった。そのなかで特に深く話したのが「答えられたらヤバイクイズ」と友彦の変化についてだ。そのクイズにいとも簡単に正解した藻屑のお父さんは何を考えているのかよくわからず、主要人物なのに難しかった。ポチと藻屑が殺された理由はわからないけど、理由なんてなかったのかもしれない。友彦は今回の読書会で一番人気が高かった登場人物で、男子から熱烈な支持を受けた。お父さんに似ているようで全く違い、かっこいいのだという。友彦の変化についてはそこがいいという人と残念だという人がいた。

 終わりの時間が近づいてきたとき、「なぎさにとっても、友彦にとっても、好きという感情は絶望だったんじゃないかな。」と岩崎先輩が漏らした言葉が忘れられない。あんなに盛り上がった読書会も、最後はしんみりと幕を閉じた。

〈受賞のよろこび〉

重ねて実感、胸に迫る言葉

 「先生から勧められ、面白そうだと思って気軽に応募したら、優秀賞! だめだったら図書館にでも張り出そうと思ってたくらいだったのに。でも、発見も多かった。グロテスクな描写に女子は魅力を感じ、男子は腰が引けた。登場人物への感情移入も男女でくっきり分かれて、驚きだった。感想文を書くのと違って、先生の目を気にせず、言葉に整理される前のイメージをぶつけ合えたのが良かったかも……と思っている」