どくしょ応援団

本を読もう。何を読もう? 迷ったら「どくしょ応援団」へ。親子で、ひとりで、夢中になれる本との出会いがここに!

第2回どくしょ甲子園Let's 読書会、高校生!!

【特別インタビュー】

今こそ本に集おう 姜尚中さん

 あの大きな震災から1カ月余り。終わらない脅威の中で、君たちは何を考えていますか。

 なぜこんなひどいことが起きてしまったのか、なぜこんなにも自分は無力なのか……なぜ、なぜ、と問わずにはいられない。やり場のない感情が、胸に渦を巻いているのではないでしょうか。

 今回、2回目の「どくしょ甲子園」を開催すると聞いて、本当にうれしかった。今こそ君たちに、もっと本を読んでほしいと思っていたからです。

 在日として生まれた私は10代のころ、「自分は何者か」と悩んでいました。そんなもやもやとした気持ちを救ってくれたのが読書でした。

 一冊、また一冊と読むうちに、なぜ生きるのか、なぜ死は突然訪れるのか……考えても答えのない問いを問い続ける、それが読書なのだと気づいたのです。

 たとえば、ゲーテの「若きウェルテルの悩み」や夏目漱石の「三四郎」を読めばわかる。答えの出ない問いに悩むのは、いつの時代も同じ。自分だけじゃない、と。

 そう、本を読むことで自分と対話し、気づき、もうひとりの自分を発見する。読書は「私」として生きていくための力や知恵を与えてくれます。だから、悩み多き青春を送っている君たちに、たくさんの本にふれてほしいと願うのです。

 そして、本を読むときに仲間がいれば、もっといい。

 何人かで一冊の本を読む読書会の素晴らしいところは、本から感じたことを語り合うことで、相手の意外な人柄が見え、心を通わすことができること。

 意見が対立したときの驚きも、貴重な体験になります。「他人と違う」ことから「私」をより深く理解できるようになるのです。

 今、私は「新・君たちはどう生きるか」という小説を書いています。

 平たく言えば、かつて吉野源三郎さんが書かれた『君たちはどう生きるか』(岩波文庫)のようなストーリーです。年長者(私)が、友の死に苦しむ一人の若者とのメール交換を通じて悩みに答えるメルヘンですが、作中に読書会を登場させました。

 実は、サルトルがはやっていた学生時代、私もよく読書会に参加しました。告白すると、女子学生と親しくなれるかもしれないという期待もありました。

 学生運動の季節が終わり、軽みの時代へと変わろうとしている社会のうねりを感じながら、「こんなに浮かれてばかりでいいのか」と、どこか私は冷めていた。そんなときに読書会で本にふれ、多くの人と心がつながる喜びを知り、前向きになれたことを覚えています。

 だから、小説の「悩める主人公」にも読書会を通じて、大切な人との出会い、自分を知るきっかけを与えたかった。ラストはまだ考えていませんが、作中で私自身も悩み、成長していきたいと思っています。

 さあ、迷うことはありません。どんどん読書会にチャレンジしてほしい。そして、素直な気持ちをぶつけてください。君たちがどんな本に手を伸ばし、どんな言葉を紡ぐのか。とても楽しみにしています。

(構成=吉岡秀子、写真=首藤幹夫)
(2011年4月30日 朝日新聞から)