どくしょ応援団

本を読もう。何を読もう? 迷ったら「どくしょ応援団」へ。親子で、ひとりで、夢中になれる本との出会いがここに!

第2回どくしょ甲子園Let's 読書会、高校生!!受賞作発表!!

【奨励賞】

◆豊島岡女子学園高(東京都)・西村チーム 西村ほのかさん、平石綾子さん、森山真帆さん、山口玲さん

■とりあげた本 高野悦子著「二十歳の原点」

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〈ルポ 読書会〉

「問い」には答えられなかったけれど

 メンバーのAがこの本で「作者の日記の中に書いてある投げかけをみんなで考えてみたい」と、この本を提示した。メンバーのBはすでに読んでいて、作者の性格が自分に似ていて読み進めるのが怖いと言った。しかし、他のメンバーの意見を聞いてみるのもいいかと同意してくれた。こうして、私たちのどくしょ甲子園がプレイボールした。

 まず、作者の日記を日ごとに整理し一覧表にした。そして作者の学生闘争時代を理解する必要があると思い、学校の先生に話を聞いた。自分の考え方、主張を明確にし、その考え方を同じくする人と行動をともにすることが主流だとわかった。「安保」「学生闘争」に関する複数の書物に目を通した。初めて耳にする言葉も多かったので、気負わないようにお茶をしながら話し合った。

 「何のために生きるのか」「他人を認められないって何だろう」「自分を演じるってあるけど、みんなはどう?」「共感できる、できないところ、自分に似ているところ」「どうして死を選んだのか」「太宰治になぜ魅かれたか」など……。そしてメンバーの気持ちは以下のとおりだった。

◆自分の中にある優越感を恥ずかしいと思うが変えることはできない一方で、どうしようもなく劣っている自分がいる
◆周りの空気を意識して自分の本質と異なる自分を演じている
◆死にたいとは思わない。生に未練があるから
◆欠点だらけの私だから成長できる。作者は向上心がないと思う
◆自殺は負けること、弱い人間だと思う
◆日記を使い反省し、完全さを求めることが生きる意味ではないか
◆勉強に励まなければいけないがもっと人間のいろいろな感情・情熱を理解する必要がある
◆私は、我が強くない作者に共感する
◆私はやっぱり共感できない

 次に太宰治に魅かれた作者について考えた。文学を専攻していた先生は、太宰治はあまり深く読まない方がいいかもとおっしゃっていた。「今の君たちでは本の方が強すぎて引きこまれてしまう」。本のダークな部分を見た。この本も同じような毒があり、私たちを行き詰まらせていると感じた。少し時間を置き、話し合った。

◆やはり作者とはすべて私と違い、共感できない
◆生きる理由はわからないが、考えている過程で自分や周りを見直せた
◆私は日記を書くときに心の中をわかってくれる人がほしかった。作者は自分に向き合おうと努力したが私はそれを放棄した。それはそれでいいと思う
◆周りを排除し、独りで完結する姿が際だち、淋しく思う。私は17歳から19歳までの日記も読んでいるが、この頃はすごく共感できた。
◆大人になる壁を乗り越えられるか不安になったが、私のやり方で生きたい

 結局、作者の投げかけには答えが出なかった。しかも、作者の一言一言は重く、私たちの胸にへばりついた。時には胸やけしそうなくらいに。

 ただ、言えることは、メンバー全員、自分がいろんなものを仕方ないと諦めるのではなく、起きたことを受け入れ、しっかり生きようと決めた。

〈参考文献〉

◆「二十歳の原点ノート I」(カンゼン)
◆「二十歳の原点序章 II」(カンゼン)
◆「日本文学史」(文英堂)
◆「戦後日本スタディーズ(2)60・70年代」の中の「六〇年安保闘争とは何だったのか」(紀伊国屋書店)
◆「60年安保闘争の時代」(毎日新聞社)
◆「新訂 国語総覧」(京都書房)


違う考えを通して深い出会い

 たまたま出合った、40年以上も前の女子大生が残した日記。「人間とは何か、生きるとは何か」と問い続けた果てに、20歳で自殺している。彼女のこの問いにどう答えるかを語りあった。劣等感が強くて言行不一致で、でもとてもまじめで熱い彼女にとまどったり共感したり。結局問いかけへの答えは見つけられなかった。でも、お互いの死についての考えの違いに驚くなど、この本によって深い出会いを体験することになった。


【奨励賞】

◆東京成徳大学高(同)・下木チーム 下木僚太さん、小俣和輝さん、飯塚千優さん、浅古愛実さん、赤平賢人さん

■とりあげた本 湯本香樹実著「夏の庭」

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〈ルポ 読書会〉

震災をきっかけに考えた「死」

 「死ぬってどういうこと?」。東日本大震災が起こった今年、たくさんの尊い命が奪われた。残された人々は「死」について考えたり、疑問を持ったりしたのではないだろうか。私たちが読むことに決めたのは「夏の庭」だ。この本は私たちに死について考える機会を与えてくれた、大切な一冊となった。

 最初の読書会は、恥ずかしさや緊張からか、話し合いに火がつくまで時間がかかった。しかし、心に残ったフレーズを言いあっているうちに、だんだん盛り上がってきた。「果物の描写がすごい」と感動しているのは小俣。確かに文字を読んでいるのに、絵を見ているような気持ちになるほど、描写が鮮やかに描かれていて、すいこまれてしまう。しばらく夢中で話しあっているうちにこんな疑問がでる。「3人はなぜ死んだ人を見たかったのか」これに対し「知らないことがあるのは怖いからだよ」と浅古。

 確かに私たちが幽霊を怖がるのは、幽霊の名前や性格を知らないからであって、知ってしまったら怖くないのかもしれない。最後に意見がまとまった。「結局3人は好奇心と恐怖の両方から、死んだ人を見たかったんだろうね」

 読書会2日目になると、みんなの距離も近くなり、話し合いはさらに白熱した。「人は死んだらどうなるんだろう」という疑問については、私たちは次々と思ったことを言葉に変え、みんな夢中になっていた。

 「体は死んでも心はまだ体の中に残っていたら、火葬の時に苦しいよね」という飯塚の言葉に、赤平は「非科学的だ!」と叫ぶ。「死んだらすべて終わり。心も死ぬし、『無』になるの」。みんなの頭の中で「無」がイメージされる。小俣はこう言う。「でも思い出は生き続けるよね。人が完全に死ぬのは周りの人の記憶から完全に忘れ去られた時だって聞いたことある」。これには浅古と下木も「聞いたことある!」と同意。赤平もうなずく。ここでやっと「人は死んだあと、体や心は『無』になるが、思い出は生き続ける」という私たちなりの答えにたどり着いた。他にも、「脳だけ生きていれば生きていると言えるのか」、「魂は死んだらどこにいくのか」などテーマを決めて夢中で話し合っていた。時間がたつのがとても早く感じた。

 クラスメートとして、同じ時間を過ごすことも多い5人だが、それぞれ別の考えを持っていることに気付かされ、お互いの考えを尊重できるようになった。

 教室では、個々の考えを知る機会は少ないので、とても貴重な体験だったと思うし、読書会を終えたあと5人の間に何か特別なものを感じた。

 震災が起こり、たくさんの死と向き合った被災者の方々もいる一方で、私たちはまだ死にかかわったことが少ないのだろう。今、「生と死」について考えることができて本当に良かったと思う。


死後も生き続ける思い出

 東日本大震災が起こった今年、たくさんの尊い命が奪われた。残された人々にとって死は、どんな意味を持つのか。私たちなりに考えたい、と選んだ一冊だった。この本は、死に関心がある小学6年生3人と、おじいさんの奇妙な交流を描いている。白熱した読書会で気づいたのは「人は死んだ後、体や心は無になるが、思い出は生き続ける」ということ。「生と死」を考えさせてくれる大切な一冊となった。


【奨励賞】

◆九州学院高(熊本県)・西田チーム 西田茜さん、谷川由真さん、西浦穂緒美さん、甲斐美咲さん

■とりあげた本 山田詠美著「彼女の等式」

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〈ルポ 読書会〉

「与える―受けとる」は等式?不等式?

 9月上旬。文芸部で定期的に行われている「読書会」を行うため、3年生の部員は特別教室に集まった。

 メンバーは谷川、西田、西浦、甲斐の4人。今回は西田の推薦した、山田詠美の「120%COOOL」に収録されている短編小説のひとつ、「彼女の等式」に関する意見を交換することになっていた。

 「彼女の等式」では、与えることと受けとることが主題になっている。主人公の春美は目に見える「与えるもの=受けとるもの」という等式を頭の中で成り立たせているのだが、あるきっかけで知り合うことになった雑誌編集者の男、内藤はそうでないという。内藤曰(いわ)く、受けとることには確信と実感が伴うが、与えることは目に見えないということだった。そしてこの価値観についての意見交換で、私たちは完全に二つに分裂してしまった。

 春美派の谷川、西田と内藤派の西浦、甲斐。

 まず、春美派は「与えた分はきちんとした形で返ってこないと割に合わない」と主張した。これに対して内藤派は、目に見えないものにも大切な価値があるし、それを得ただけで十分満足できると反論した。そうしてしばらく討論するうち、西田のある意見に私たちは深く考えさせられた。

 「思うんだけど、例えばものが大事な人がそうでない人にものを与えたとしたらさ、そこで問題が出るよね。与えた人としては、当然ものが返ってくることを期待しているわけでしょう。でも受けとった側はそうじゃないじゃん。相手が好意でくれたんだから、受けとった自分が喜べば、相手も満足するだろうって考えるんでしょ。それで与えた方は何も返ってこないことに怒る。でも受けとった方に悪気はないんだよね。これって小さいことだけど、ものすごく大きな問題なような気がする」

 そして私たちは、人の価値観は各々違うのだから、相手のことも考慮し、自分の価値観を押し付けすぎないようにしようという結論に至った。そしてこの読書会をしたことで、本の中の話がぐっと自分たちに近付いたような気がした。本から得たものを実生活に生かすこともまた、読書の楽しみのひとつなのである。

 こうして今回の読書会は幕を閉じた。


価値観巡って意見真っ二つ

 主人公・春美の価値観をめぐって、私たちは真っ二つに対立した。「与えた分はきちんとした形で返ってこないと割に合わない」と、主人公を支持するのは春美派。春美が出会った雑誌編集長・内藤を支持する内藤派は「目に見えないものにも大切な価値があるし」と反論。議論の末、「春美も内藤の言うことは理解できたよね」と一致したが、ではこの後、彼女の考え方は変わるか?ということでは、またも真っ二つだった。