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朝日新聞社 どくしょ甲子園 読書会を開いて、仲間と一緒に本を読み、みんなで語り合おう!その成果を1枚の作品「どくしょボード」で表現する高校生のコンクールです。

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第3回どくしょ甲子園 表彰式・選評

若い感性、重厚作品に挑む

受賞した高校生と選考委員のみなさん

受賞した高校生と選考委員のみなさん

 高校生による読書会コンクール「第3回どくしょ甲子園」(朝日新聞社・全国学校図書館協議会主催、文部科学省後援)の表彰式が1月19日、東京・浜離宮朝日ホールであった。選考委員の姜尚中(政治学者)、秋田喜代美(教育学者)、あさのあつこ(作家)、佐藤江梨子(女優)、道尾秀介(作家)のみなさんから入賞した6チームに表彰状と記念の盾が手渡された。


 応募数は昨年を上回る545点。審査は白熱した。「生と死の重いテーマに取り組んだ作品が多かった。多様な観点から自分の答えを見つけようとした意志が伝わってきた」と、姜さんは選考経過を述べた。

表彰式に出席した選考委員のみなさん

表彰式に出席した選考委員のみなさん

 最優秀賞の滋賀県立膳所(ぜぜ)高・城山チーム(アゴタ・クリストフ著「悪童日記」)は女子4人と男子1人。戦時下を生き抜く双子の思いを、絶望と希望に分けて議論したことが新鮮と評価された。リーダーの城山賢人さんは「多人数での読書も楽しいことが分かり、読書の幅が広がった。女性への接し方も」と笑いを誘うスピーチを披露した。

 

 山口県立厚狭高・柴川チーム(深沢七郎著「楢山節考」)が評価されたのは、「掟(おきて)」という言葉にこだわった点だ。「古典の授業をきっかけに現代版姥捨(うばす)てがあると先生から聞いたことが選んだきっかけ」「親子の強い愛情を感じた」と5人の女子生徒がスピーチした。道尾さんが同書に影響を大きく受けた秘話も披露された。

記念の盾

記念の盾

 奨励賞は3校。北海道旭川東高・堀下チーム(井伏鱒二著「山椒魚〈さんしょううお〉」)は「マイペースの読書会で校内の締め切りを何度も破った」と告白。選考委員の佐藤さんから「山椒魚を演じて気持ちを探ろうとした点が素晴らしい」と絶賛された。

 栃木県立大田原高・岩本チームと山口県立青嶺高・野原チームは、共に大江健三郎の著書を取り上げた。「飼育」を選んだ桜井篤史さん(大田原高)は「表彰式の舞台に立って、すごいことをしたと実感」。「『自分の木』の下で」を選んだ野原啓佑さん(青嶺高)も「野球をしていたので『甲子園』に行く夢がかなった」と笑わせた。

  (ライター・角田奈穂子 写真家・御堂義乗)



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第3回どくしょ甲子園 選考委員の選評

姜尚中さん

■重厚なテーマで正攻法 姜尚中さん

 今年も粒ぞろいの作品が寄せられた。ただ、前年と違うのは、正攻法で、真正面から本と取り組んでいる、そんな印象が強く残ったことだ。それは、取り上げている本が、深沢七郎の『楢山節考』や大江健三郎の『飼育』と『「自分の木」の下で』、さらに森達也らの『「僕のお父さんは東電の社員です」』など、私たち大人が深く考えさせられる重厚なテーマを扱っているからに違いない。

 その中で私はあえてアゴタ・クリストフの『悪童日記』を取り上げた滋賀県立膳所高・城山チームの作品を最優秀賞に推した。絶望と希望の明暗に穿(うが)たれた裂け目を連想させるレイアウトが印象的だが、何よりも、一筋縄ではいかない重いテーマを、登場人物の内面、その心理に深く分け入って読み解こうとする真摯(しんし)な姿勢に感銘を受けた。欲を言えば、読書会の曲折に富んだ過程を赤裸に語って欲しかったが、それでも私にしては珍しく、この作品にこだわったのである。白熱の論議の末、私の一推しが通ってしまった。よかった。

カン・サンジュン 政治学者。東京大大学院情報学環・学際情報学府教授。1950年生まれ。著書に『悩む力』『在日』『母 オモニ』など。メディア出演も多数。

秋田喜代美さん

■重ね読みで課題たぐる 秋田喜代美さん

 チームの力を生かした独創的なボードが増え、審査の目も厳しくなり激戦。

 中で光っていた一つが福井県立科学技術高・山崎チーム。『「僕のお父さんは東電の社員です」』で原発事故の解けえぬ問題を討論の末、チェルノブイリ原発事故被害の子どもたちの作文集『わたしたちの涙で雪だるまが溶けた』に出会う。2冊の重ね読み読書を通して、東電の問題をひとごとでなく、自分たちの未来への課題として引き受けようとする語りに、ノンフィクション読書の魅力が出ていました。

あきた・きよみ 教育学者。東京大大学院教育学研究科教授。1957年生まれ。日本保育学会会長、日本読書学会会長。著書に『読書の発達心理学』『絵本で子育て』など。

あさのあつこさん

■丁寧で自由な討論に感動 あさのあつこさん

 第3回の今回も、仲間と本に対する愛情があふれていてうれしかったです。

  『「自分の木」の下で』を取り上げた山口県立青嶺高・野原チームの作品は、丁寧で自由な討論に感動しました。自分たちの現実の問題を、本をテコにして思考する。その姿勢がすきです。読書会メンバーの「図書室の住人」という関係もいいですね。

あさの・あつこ 作家。1954年生まれ。代表作『バッテリー』は、映画やテレビドラマにも。他に『THE MANZAI』など。青春小説から時代小説まで、幅広く手がける。

佐藤江梨子さん

■本の読み方カッコいい!! 佐藤江梨子さん

 北海道旭川東高・堀下チームの作品を見た時、とびきりロマンチックな感じがしました。言葉が水中に溶け出している。これって、蛙(かえる)目線? 山椒魚(さんしょううお)目線? 蝦(えび)目線?

 「答えのない本をよみたい」と思い、答えを出すために、皆で疑問点を話し合う。その上で、出てくる蛙、蝦、山椒魚になりきって本を理解していったと、どくしょボード裏面の読書会ルポに書いてある。素晴らしい!! 本の読み方カッコいい!! これぞ、読書会の醍醐味(だいごみ)だと思いました!

さとう・えりこ 女優。1981年生まれ。98年、ドラマ「美少女H」でデビュー。映画、CM、舞台でも活躍中。趣味は読書と映画。著書に『気遣い喫茶』他。

道尾秀介さん

■そもそもの疑問に感心 道尾秀介さん

 最終候補に残った作品は優劣つけがたい力作ぞろいで、最初に目を通した段階で頭を抱えてしまった。しかし「全部いいと思います」では選考委員として役に立たず、グッと厳しい目でジャッジさせてもらった。

 山口県立厚狭高・柴川チームのデザインは、和紙を丁寧に貼りつけてあり、小説世界のイメージが非常に美しく立体的に表現されている。ルポを読んで感心したのは、「掟(おきて)」という小学生でも知っている言葉に対し、「そもそも何なのだろう」と疑問を抱いている点。この、「知っているつもりの何か」をじっくり見直すことが、文学作品の読解にはとても重要。

 栃木県立大田原高・岩本チームは去年の最優秀賞校で、今回のチームによるボードもさすがの貫禄。ルポを縦書きにしたのは一つの工夫だし、その内容もライブ感いっぱいで素晴らしい。ただ少々、絵の上手さや文章のリーダビリティ(読みやすさ)といった、技術的な部分に頼りすぎているように思い、最優秀には推しきれなかった。

みちお・しゅうすけ 作家。1975年生まれ。『光媒の花』で山本周五郎賞、『月と蟹』で直木賞。他に『向日葵の咲かない夏』や『月の恋人 Moon Lovers』など。

 

受賞作一覧

【最 優 秀 賞】   滋賀県立膳所高 城山チーム アゴタ・クリストフ『悪童日記』
【優 秀 賞】   福井県立科学技術高 山崎チーム
          毎日小学生新聞編+森達也『「僕のお父さんは東電の社員です」』
          菊川憲司訳『わたしたちの涙で雪だるまが溶けた』 
          山口県立厚狭高 柴川チーム 深沢七郎『楢山節考』
【奨 励 賞】   北海道旭川東高 堀下チーム 井伏鱒二『山椒魚』
          栃木県立大田原高 岩本チーム 大江健三郎『飼育』
          山口県立青嶺高 野原チーム 大江健三郎『「自分の木」の下で』

■ 3校に学校賞

学校賞は、応募点数、作品のできばえ、取り上げた本の多様さなどを基に、主催者で選考しました。今回は次の3校に贈ります。
【学 校 賞】   福島県立安積黎明高 広島大学付属高 相模女子大学高等部

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【どくしょ甲子園 過去の受賞作品】

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