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朝日新聞社 どくしょ甲子園 読書会を開いて、仲間と一緒に本を読み、みんなで語り合おう!その成果を1枚の作品「    ▼ どくしょボード」で表現する高校生のコンクールです。

どくしょ甲子園 伝える深まる、本の世界 - let's 読書会、高校生!

第3回どくしょ甲子園 受賞作品

受賞作一覧 ※クリックすると作品をご覧いただけます

【最 優 秀 賞】   滋賀県立膳所高 城山チーム アゴタ・クリストフ『悪童日記』
【優 秀 賞】   福井県立科学技術高 山崎チーム
          毎日小学生新聞編+森達也『「僕のお父さんは東電の社員です」』
          菊川憲司訳『わたしたちの涙で雪だるまが溶けた』 
          山口県立厚狭高 柴川チーム 深沢七郎『楢山節考』
【奨 励 賞】   北海道旭川東高 堀下チーム 井伏鱒二『山椒魚』
          栃木県立大田原高 岩本チーム 大江健三郎『飼育』
          山口県立青嶺高 野原チーム 大江健三郎『「自分の木」の下で』

■ 3校に学校賞

学校賞は、応募点数、作品のできばえ、取り上げた本の多様さなどを基に、主催者で選考しました。今回は次の3校に贈ります。
【学 校 賞】   福島県立安積黎明高 広島大学付属高 相模女子大学高等部

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最優秀賞: 滋賀県立膳所(ぜぜ)高 城山チーム 
城山賢人さん、下川真実さん、白坂彩乃さん、鈴井真麗さん、高橋花帆さん

 取り上げた本: アゴタ・クリストフ『悪童日記』

    ▼ どくしょボード 第3回どくしょ甲子園最優秀賞の滋賀県立膳所(ぜぜ)高 城山チーム の作品


▼ ルポ 読書会
想像力で迫った双子の感情

最優秀賞: 滋賀県立膳所(ぜぜ)高 城山チーム

 最初の読書会では課題図書として選んだアゴタ・クリストフ作の『悪童日記』を何度も読み直して内容を確認するとともに、いくつかの場面を主人公である双子の「喜」「怒」「哀」「望(希望ないし絶望)」という描かれる登場人物の「感情」に従い分類しました。なぜなら、この作品には、双子の兄弟の感情が全く描かれていなかったからです。そのため私たちは彼らの感情を自分たちの想像力で補わなければならず、兄弟たちを取り巻く多彩な登場人物の心理や、兄弟の行動そのものを分析することで、間接的に兄弟の「心の中」を読み取る以外方法がありません。その結果、読書会は大変難航しました。時折、意見が分かれることばかりで、その度にそれぞれがしっかりと「自分の読み」を主張し、論じあいました。

 さて私たちの間で一番問題になったのは「怒」の場面についてです。女中が強制連行されていく人々にパンを与えるふりをする場面を詳しく話し合いました。ある1人は「双子は怒っている」と言い、残り4人がそれに賛同しません。しかしそれぞれの見解をぶつけあった結果、その場面は「怒」に含まれるという結論になりました。また作中の登場人物である将校のゆがんだ性癖についても議論しました。将校の行動について否定する意見を誰もが持つ中、1人だけが、その性癖を培ったのは、将校自身の嗜好ではなく、戦争という悲惨な状況が彼をそういった異常さへ追い込んだのだ……という見解を述べたのです。こんなふうに複数の視点で一つの作品を読み進めるということが、今回の読書会の最大の魅力と言ってよいでしょう。このように議論をすることで、漠然としか捉えていなかった本文の理解が深まったり、疑問が解消されたり、解釈が一変したりしました。

  第2、3回読書会では、マニュアルに「脱線大歓迎」と書いてあるのを発見した為か、四方山話の占める割合が増えました。順調に、とは言えませんが作業を進め、どくしょボードのレイアウトも考え始めました。グループ内に、美術部員が1名居たので、彼女を中心にみんなの案を取り入れながらボードを制作しました。何よりも一番力を入れたのは、ボードの背景です。戦時中の恐怖、圧迫感、不安感が伝わるように、おどろおどろしい配色にしました。そしてレイアウトを考えていくうちに、「喜怒哀望」ではなく、「希望」と「絶望」に分けた方が良いのではないかというアイデアも生まれ、今回の作品が仕上がりました。戦塵に塗れつつも生き抜いた双子の希望と絶望、そして彼らを取り巻く人々の心の闇、「戦争」という現実がもつ悲惨な実相が少しでも伝われば良いな、と願っています。


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▼ チームの横顔

分析し解読する面白さ

 読書会に向けて、3冊の翻訳小説を読んだ。他の2冊はガルシア・マルケス『百年の孤独』と、ベルンハルト・シュリンク『朗読者』。その中から『悪童日記』を選んだのは、「文体がシンプルなのに奥が深かった」からだ。「淡々と語られる分、戦争の悲惨さが一層リアルに伝わってきた」

 読書会は10回にも及んだ。東欧らしき地の戦時下の物語。地理的にも時代的にも自分たちの日常とは遠い。図書館で地図帳や資料を探し、イメージを引きつけ、何度も本を読み返した。最初はストーリーを追っていたが、次第に細部の描写や、登場人物の行動の背景が気になりだした。

 主人公の双子らの行動を「喜」「怒」「哀」「(希・絶)望」に分類し、周囲の状況との関係を探った。時に激しさも交えた議論の中で、単に「変態っぽい」で片付けていた「将校」の性癖は「自分を痛めつけることで状況から逃げようとしている」に、「女中」の偽善は「戦争が生んだ集団的興奮状態による心のゆがみ」に解読されていった。

 感情の4分類よりも「希望」「絶望」に分けた方がスッキリするというアイデアも、土壇場で採用。「みんなで分析する面白さを知った」どくしょボードができあがった。


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【どくしょ甲子園 過去の受賞作品】

【どくしょ甲子園 応募要項】

【→ 読書会へのアドバイス】

【→ どくしょボードのつくりかた】

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