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朝日新聞社 どくしょ甲子園 読書会を開いて、仲間と一緒に本を読み、みんなで語り合おう!その成果を1枚の作品「どくしょボード」で表現する高校生のコンクールです。

どくしょ甲子園 伝える深まる、本の世界 - let's 読書会、高校生!

第3回どくしょ甲子園 受賞作品

受賞作一覧 ※クリックすると作品をご覧いただけます

【最 優 秀 賞】   滋賀県立膳所高 城山チーム アゴタ・クリストフ『悪童日記』
【優 秀 賞】   福井県立科学技術高 山崎チーム
          毎日小学生新聞編+森達也『「僕のお父さんは東電の社員です」』
          菊川憲司訳『わたしたちの涙で雪だるまが溶けた』 
          山口県立厚狭高 柴川チーム 深沢七郎『楢山節考』
【奨 励 賞】   北海道旭川東高 堀下チーム 井伏鱒二『山椒魚』
          栃木県立大田原高 岩本チーム 大江健三郎『飼育』
          山口県立青嶺高 野原チーム 大江健三郎『「自分の木」の下で』

■ 3校に学校賞

学校賞は、応募点数、作品のできばえ、取り上げた本の多様さなどを基に、主催者で選考しました。今回は次の3校に贈ります。
【学 校 賞】   福島県立安積黎明高 広島大学付属高 相模女子大学高等部

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優秀賞: 福井県立科学技術高 山崎チーム
山崎裕哉さん、小玉祐さん、青木颯汰さん、三ツ井慎顕さん

 取り上げた本:毎日小学生新聞編+森達也『「僕のお父さんは東電の社員です」』
        菊川憲司訳『わたしたちの涙で雪だるまが溶けた』

    ▼ どくしょボード 第3回どくしょ甲子園優秀賞: 福井県立科学技術高 山崎チームの作品


▼ ルポ 読書会
真実の声の苦しみ共有

優秀賞: 福井県立科学技術高 山崎チーム

 『僕のお父さんは東電の社員です』の読書会はまず、北村氏の記事、ゆうだい君の投稿を読んで考えをまとめた時点で討論し、その後に他の投書などを読む形をとった。

 北村の記事には、会社は消費者の気持ちを考えずには成り立たないという意見が多かったが、小玉はジャーナリストとしての後悔を感じた。安全性の確認、災害時の対応、その後の情報の公開などを東電に要求してこなかった自分に対する後悔だ。

 ゆうだい君の作文には、自分達とは比べようもない文章のうまさに皆が驚いたが、福島原発の事故で避難生活をしている人の恐怖を考慮していないことに温度差を感じた。ゆうだい君を支持するメッセージが多い事にも驚いた。

 確かに原発の導入は国民、いや国全体の経済成長に伴って生まれた要望である。しかし今、必要とされている事は、事故の原因を少しでも明確にする事である。どんな情報でも公表する義務がある。東電の社員として責任を果たすことは、会社を守ることなのか消費者の生活を守ることなのか討論がされた。それだけ福島原発の事故は、世界中に、そして今後の科学技術に影響を与えるのである。

 また父親像についても討論した。皆、会社の顔と家の顔が違うのは当然だが、裏表の顔を持つ人にはなって欲しくない。父親には自分の手本であって欲しいので、社会に背く生き方はして欲しくないという意見だった。

 ただ僕達は討論を続けながら、自分達で話していることが世間知らずの戯言にすぎないのではないかという点が頭から離れなかった。

 討論が行き詰まっていた頃、山崎はたまたま『わたしたちの涙で雪だるまがとけた』の本を開き、拾い読みして驚いた。自分達の探していた答があふれてきたからだ。「人はときに自分をだましたい時がある」という言葉が、山崎の心をつかんで離さなくなった。

 『雪だるま』の本は1986年4月に起きたチェルノブイリ原発事故の被害にあった人達の作文集だ。悲しみや怒り、悔しさなど多くの苦しみがあふれている。そして「2度と繰り返さないで」「自分の様な苦しみを味わって欲しくない」と訴えた人達にとって、福島原発事故の話はどんなに悔しいことだろうかと考えると、これらの言葉をなんとか有効に伝えたいと感じた。

 『東電』の問題に『雪だるま』の作文を引用することに対し、自分の深い傷と向き合って苦しみを書いてくれた人の言葉を汚すようだと消極的な意見が出た。しかし『雪だるま』には被害にあった人達の言葉にしかない重みがある。山崎の説得で『東電』からでている問題を『雪だるま』の言葉から解決しようと、『雪だるま』の本に取り組んだ。

 僕達は『雪だるま』の本を読み、彼等の意見にもっと早く耳を傾けなかったことを悔やんだ。今は残念ながら、「想像の中」ではなく現実に苦しみが共有できる。彼等の声は真実の声だったのだ。

 「罪深い僕たちを許して下さい」と願うのは彼等ではない。僕達の方だ。


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▼ チームの横顔

もやもやな議論に転機

 メンバーの関係は「謎メンツ」。なんでこうなったのか、よくわからないから、そう記した。読書会を始めたものの、本を変更したりメンバーが抜けたり。でも『「僕のお父さんは東電の社員です」』が「心にとどまり忘れがたかった」3年生と1年生2人ずつが8月の終わりに一つのチームになった。

 福井県は原発が集中している。ひとごとではあり得ない。だからこそ『東電』を読んでひっかかりを感じた。なぜ東電は情報を出し惜しむのか? 自分の父親だったらどうあってほしい? 自分たちに批判ができるのか?

 議論がもやもや行き詰まっていたとき、チェルノブイリ事故を経験した中高生世代の作文集『わたしたちの涙で雪だるまが溶けた』に出会う。「ひとはときに自分をだましたい時がある。生きていくために、自分に嘘(うそ)をつく。だがそうすることは、チェルノブイリを再び生み出す可能性があるということなのだ」という言葉が心に響いた。

 だが、描いていた一人がふと思った。「アレックスは熟したオレンジになれるのか?」。再び議論が始まった。それは自分の中のアレックスを探す作業になった。建前を捨て、自分の嫌な部分も見つめ、さらけ出す。痛い時間が続いた。

 もっと早く彼らの声に耳を傾けなかったことを悔やむ。いっときの「うそ」は、未来の命にはつながらないのだ。


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優秀賞: 山口県立厚狭高 柴川チーム 
柴川佳奈子さん、村上舞さん、三隅遥さん、大谷法子さん、内藤由貴さん

 取り上げた本:深沢七郎 『楢山節考』

    ▼ どくしょボード 第3回どくしょ甲子園優秀賞: 山口県立厚狭高 柴川チーム の作品


▼ ルポ 読書会
心にしみた別れのシーン

優秀賞: 山口県立厚狭高 柴川チーム

 「七十になると山にいく」という人道に反する掟について、まず疑問の声があがった。背景は貧しい寒村。自分が辰平だったらと考えてみる。「親を捨てるという選択はできない」という意見とともに、「分からない」「そうするしかない」という意見。辰平は、あんなに苦しみ悲しみ、それでも、掟に従ったのは何故かという疑問には、「貧しい村の中で家族が生活していく上では掟に逆らうことはできない」「おりんに覚悟ができていて、後押しされた」「辰平自身この掟には納得していた」という意見が交わされた。

 その過程で「掟」とは、どのような存在かという疑問が発生。皆で辞書を調べる。その解説のなかで「公の定め」という説明がこの作品では説得力があると話す中で、気になる項目が挙げられた。「心くばり」。掟の持つ厳格な語感の中で、異質の語意にとまどいつつ、話を進めた。

 もし、この村に「楢山まいり」という掟がなかったらと考えてみた。辰平は家長として、家族全員を養うことに大変苦労しただろう。掟がなければ「困る」という意見も出た。この掟がなくても、「親捨て」や「間引き」等悲惨なことは、個々の家庭で行わざるを得なかっただろうという話に発展した。

 そう話し合ったとき、実は、非情に見えたこの掟が、辞書にあった「心くばり」に通じることに気づいた。「親捨て」という、個人では罪悪感や自責の念に苛まれてできないことを、掟によって実行することができる。いや、辛いけれどもせねばならないという心の救済になる。捨てられる側のおりんも、掟がある故に見事な覚悟や準備ができたという意見も出た。私たちは、この掟が思いの外、不条理ではないことを発見した。

 そして、掟のもとに、それぞれの人間性が出てしまうことが、次の話題となった。辰平と銭屋の倅は対照的だけれども、結果は同じという意見。おりんと又やんとの違いも際だったが、どちらも人間の姿。銭屋の親子の姿の方が普通という意見、そしてこの作品は現代社会の人間模様をも象徴しているという意見など人間考察に話がはずんだ。

 私たちが何度も読み返したページは、おりんと辰平の別れのシーン。既に掟は何の意味もなさない。「おっかあ、雪がふってきたよう」「おっかぁ、雪が降って運がいいなあ」と叫ぶ辰平。うんうんと肯きつつ、辰平を気遣って帰れ帰れと手を振るおりん。親子の最期の別れはこの小説の圧巻だというのは皆の共通意見。こんな別れができた二人はむしろ幸せだという意見に皆納得。現代社会でも、こんな別れができる親子は多くはないように思う。

 昨年の東日本大震災で多くの方が経験されたように、私たちは何時の世でも誰でも、この別れだけは避けることができない。そして、私たちも決して例外ではないこと、いつその日が来てもおかしくないことをこの読書会によって、それぞれがはっきり知った形で読書会を終えた。


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▼ チームの横顔

掟の中に見た心くばり

 「親が70歳になると山に捨てにいく」という非情な掟(おきて)について、まず疑問の声があがった。背景は寒村の貧しさだ。「家族が生活する上で、掟には逆らえない」「親は捨てられない」と、相反する意見が交わされた。

 そもそも「掟」とは何なのか。みなで辞書を調べて「公の定め」という説明に納得する。しかし気になる項目を見つけた。「心くばり」。掟という言葉の厳格な語感の中で、異質の語意に戸惑いを覚えて話を進める。

 もし、この村に「楢山まいり」という掟がなかったら……。主人公の辰平は、家長として、家族全員を養うことに苦労しただろう。「親捨て」や「間引き」など、悲惨なことは、個々の家庭で行われたかもしれない。


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【どくしょ甲子園 過去の受賞作品】

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