どくしょ応援団

本を読もう。何を読もう? 迷ったら「どくしょ応援団」へ。親子で、ひとりで、夢中になれる本との出会いがここに!

第4回どくしょ甲子園Let's 読書会、高校生!!

【特別インタビュー】

「知の蓄積」を吸収して 資生堂名誉会長の福原義春さん

 本は世界を広げます。読書会はそれを深めます。そんな本との出会いは、高校生のみなさんの将来にどう関わってくるのでしょう? 無類の本好き経済人として知られる、資生堂名誉会長の福原義春さんに、「読書と読書会のススメ」を聞きました。


 読書は、「受験勉強」でも「仕事のためのもの」でもありません。先人たちがどう生きてきたか、どんな体験をしたか、それによっていかに多様な思想を持つにいたったのかといった「知の蓄積」を吸収する、いわば“人生を深める糧”です。だから本を読まないのは、自らの成長に必要な栄養を取らないでいるようなもの。「忙しいから」などと言い訳していては、もったいない話です。

 高校生のみなさんには、ピンとこないかもしれませんが、社会人になれば読書で得た素養がものを言います。

 以前、仕事でよくフランスに行きましたが、フランスでは相手と食事をしないとビジネスが始まりません。食事をしながら会話をすることで、手を組む相手か、さらに、生涯の友となれるかを見るのです。

 ところが日本人は、2度目の食事に誘ってもらえないケースが多いらしい。理由は「仕事以外の話ができないから」のようです。例えば、フランス人が「ジョルジュ・ルオーをどう思うか」と聞いたとしましょう。そこで、相手の国を代表するこの芸術家を「知らない」と答えるようでは、話になりません。「日本人はゴルフの話になると元気になる」と言われる始末です。

 私は昔から「読書で人としての素地ができ、いい人生を歩んでこそ、いい仕事ができる」と思ってきました。それを世界のビジネスマンは心得ていて、若いころから本と向き合い、基礎的な教養を習得する努力をしています。みなさんが社会で出会うのは、こうした強敵ばかりなのです。

 だからといって、おじけづくことはありません。これから多くの本を読み、吸収した栄養を人生に役立てていけばいいのです。身につく読み方として、「読書会」はお薦めです。

 本は著者と対話するように一人で読むのが原点ですが、仲間と同じ本を読み、意見を交わす読書会からは、「こんなとらえ方があったとは」「解釈が違うのはなぜだろう」などと、たくさんの「気づき」が得られ、自分の思考を深めることにつながります。

 まず、本を選ぶところからおもしろい。自分が読みたい本が友だちと違った場合、なぜ?と興味がわきます。相手の意見をしっかり聞き、自分の考えを端的に伝えるコミュニケーションの訓練にもなる。読書会には、思いのほかいろんなメリットがあるのです。

 私が副理事長を務める「日本アスペン研究所」では社会人を中心に、東西の「古典」の読書会をしています。人間の普遍的な価値観を説く古典をめぐる対話からは、本当に得るものが多い。私は若いころに読書会に参加した体験がなく、もっとしておけばよかったと悔やむほどです。

 読書会に興味がわきましたか? スポーツだってやってみなくては、醍醐味(だい・ご・み)はわかりません。意外とおもしろかったり、友だちが増えたり。出会いと発見に心躍ることでしょう。みんなで一冊の本のページをめくってみる。そこから新しい人生が始まるのです。

 (ライター・吉岡秀子 写真家・吉永考宏)
(2013年4月28日 朝日新聞から)


 ふくはら・よしはる 1931年生まれ。文化・芸術に造詣(ぞうけい)が深く、東京都写真美術館長、企業メセナ協議会会長などを務める。近著に『本よむ幸せ』。