どくしょ応援団

本を読もう。何を読もう? 迷ったら「どくしょ応援団」へ。親子で、ひとりで、夢中になれる本との出会いがここに!

第4回どくしょ甲子園Let's 読書会、高校生!!受賞作発表!!

【最優秀賞】

◆大阪市立工芸高校・清水チーム 清水夢月さん、長谷洸輝さん、長谷川春花さん、本郷朱音さん、三上真奈美さん

■とりあげた本 梶井基次郎著『檸檬』(筑摩書房)

〈ルポ 読書会〉

朗読で整理、アートへ爆発

 「この話は檸檬が爆発するらしい」。それが私たちの檸檬を選ぶ決定的な言葉になった。 檸檬が爆発するという聞きなれない響きに、私たちはとても興味を持った。先生の勧めもあり、この檸檬を題材にして、私達の読書ボード制作が始まった。

 檸檬の内容は皆で朗読しあって読んだり聞いたりした。最初は理解しづらい、感情移入できないといった意見が飛び交い、行き詰まりを感じた。そこで録音をしながらのミーティングを行った。一度出した意見でも、なんども考察しなおし、理解を深める必要があると判断したからだ。録音を元に考察を重ね、次第に思ってもみなかった発想や表現が飛び交うようになり、議論の場が活性化していった。いつもは自分一人だけの意見になってしまうが、みんなで共有できたことがすごく刺激的だった。そして録音を元に意見を拾い集め、会話文の様にまとめることで、雑誌風のデザインにすることも決まったのである。

 一番揉めたのが絵だった。ただ檸檬を描くだけはつまらない、そう思った末、写真にしようということになった。場面は、積み上げた本の上に檸檬を置くシーンを再現することに決定。この作品を選ぶきっかけにもなり、メンバー全員が印象的だと感じた重要なシーンだ。図書室の本を引っ張り出して積む、崩れる、立たない、それの繰り返しだった。それは放課後遅くまで続いた。そしてやっとバランスもよく最上に北斎の本を乗せて完成した、積み方も全員納得のいくモノだった。あとは撮影だけだったがそれが一段と苦労を強いた。光の角度はどうか、色見は大丈夫か、人に光を当てるために携帯の灯を使って友人を照らしたりした。檸檬は作品のレモンイエロウを表現するために石粉粘土で形を作り、アクリルガッシュで色を塗った。明日までに本を片付けなければならなくて、絵の具の乾かないままの手作り檸檬を無理に手に持った。苦心の末、撮れた何百枚ものうちの一枚がこの写真だった。これが一番大変だったのを覚えている。

 ボード自体のレイアウトも相当悩んだ。相手の感性と自分の感性とがぶつかって揉めることも多々あった。それでも写真を生かす為に数えきれないほどアイデアを出し合い作った。檸檬と言う作品は暗い、でも作中にある檸檬には色があって一概にそうとは言えない。その世界観を出すのが難しく、檸檬の黄色以外は悩んだ。目立たないけどはっきりするような色を考え、黒地に白文字の形にしてみたり、赤茶色にしてみたりもした。

 私達のチームは同じクラスで3年間過ごしてきたものの、専攻コースもバラバラで、こういった共同の作品作りは初めてだった。それが同じ授業を選択していたことがきっかけになり、貴重な意見交換もできた。この檸檬という作品を通して、私達はとても充実した時間を過ごせたと思う。

〈チームの横顔〉

 「積み上げた本の上でレモンが爆発するってなんかスゴイね」。そんなノリでこの本を選んだ。だが、相手は手ごわかった。美術の選択授業で集った5人。慣れない旧仮名遣い、難しい漢字や単語……。「読めないよ」と泣きも入った。

 知らない言葉に出くわすたび、ケータイで意味を調べた。朗読して録音し、みんなで聞いた。「一人一人が読むのは大変だから」。話し合いも録音して聞き直し、考えを整理した。

 「レモンって作者にとって何だろう」「なぜ爆発するのだろう」。一つ一つ疑問点を話し合った。

 「『私』が作者本人だとしたら、レモンは彼の作品か希望」「じゃ、積み上げた本は世間や文壇?」「で、レモンが爆発してアッと言わせる……」。イメージが形になってきた。それをボードにぶつけた。

 さすが美術専攻、次々にアイデアが浮かぶ。一番印象的なシーンを写真で再現する。それは「私」の思いを追体験することだった。

 図書室に2メートル近く本を積み上げた。本物のレモンを置いたら小さくてバランスが悪い。紙粘土で大きな模型を作った。ケータイのライトで照明を調整した。キャッチコピーや文字のレイアウトもこだわり抜いた。

 「楽しかった」と声をそろえた5人。学校にほど近い、『檸檬』の作者のお墓に参って受賞を報告した。