朝日新聞社 どくしょ応援団朝日新聞社 どくしょ応援団
朝日新聞社 どくしょ甲子園 読書会を開いて、仲間と一緒に本を読み、みんなで語り合おう!その成果を1枚の作品「どくしょボード」で表現する高校生のコンクールです。

どくしょ甲子園 伝える深まる、本の世界 - let's 読書会、高校生!

第4回どくしょ甲子園 表彰式・選評

友の刺激、広がる世界

受賞した高校生と選考委員のみなさん

受賞した高校生と選考委員のみなさん

 高校生による読書会コンクール「第4回どくしょ甲子園」(朝日新聞社・全国学校図書館協議会主催、文部科学省後援)の表彰式が1月25日、東京・浜離宮朝日ホールであった。選考委員の姜尚中(聖学院大全学教授 )、秋田喜代美(教育学者)、あさのあつこ(作家)、道尾秀介(作家)のみなさんから、奨励賞、優秀賞、最優秀賞の順で、受賞した全6チームに表彰状と記念の盾が手渡された。後半の高校生たちと選考委員とのトークセッションでは、作品の制作秘話などに花が咲いた。


受賞者「心と体、鍛える目的」 選考委員「難解な作品に挑む」

 「秀作ばかりで審査は楽しかった」と、選考委員が口をそろえた今回のコンクールには、631点の力作が集まった。

 「文明と自然、善と悪など難解なテーマの作品に挑んだことに感激しました。仲間と読むからこそ理解が深まったのでは」と、姜さんが選考経過を述べた。

 
高校生たちに拍手を贈る選考委員のみなさん

高校生たちに拍手を贈る選考委員のみなさん

 選考委員の道尾さんは「一冊の本をこんなに深く読んでくれるとは」と、絶賛した。

 優秀賞は2校で、東京成徳大学高・味田チーム(村上春樹著『海辺のカフカ』)は文芸部の3人組だ。主人公が導かれたのは「逃げ場」なのか「居場所」なのか、と考えた独特の世界観が評価された。リーダーの味田将裕さんが「5人で始めたが、上級生と意見が対立して分かれ、3人チームになった」と内幕を披露。行きつ戻りつ作品への理解を深めていくプロセスの面白さに、他校生もうなずく。

 同じく優秀賞の福井県立科学技術高・楠チーム(アントニイ・バージェス著『時計じかけのオレンジ』)は、人間の中に潜む悪の部分に迫ろうとした心意気が評価された。受賞した男子3人は喜びをショートコントで表現、会場をわかせた。

 最優秀賞に選ばれたのは、大阪市立工芸高・清水チーム(梶井基次郎著『檸檬』)。作品の中に漂う不安と緊張を、撮り下ろしの写真で表したインパクトが支持を集めた。

 学校の近くにある、梶井の墓にも、受賞を報告した。リーダーの清水夢月さんは「よくぶつかったが、大勢だからこそ他人の考えに刺激され、自分の中に新しい世界が開けた」と、達成感を語った。

 (ライター・吉岡秀子 写真家・御堂義乗)



▲TOPへ戻る




第4回どくしょ甲子園 選考委員の選評

聖学院大全学教授・姜尚中

■粒ぞろいの作品がそろう 聖学院大全学教授・姜尚中

 今年ほど粒ぞろいの候補作品がそろった年はないのではないか。そう思うのは、人生の機微や生と死の深淵(しんえん)をテーマにした、大人でも敬遠しそうな物語に挑み、しかも大人顔負けの深い読みに達している作品が多かったからである。さらに好感が持てるのは、ニューフェースの候補作品が多く、読書会の初々しさが文面から伝わって来たことだ。

  なかでも最優秀賞に輝いた大阪市立工芸高・清水チームの『檸檬(れもん)』が群を抜いていた。暗がりの中で今にも崩れ落ちそうに積み上げられた本に手を添えながら、その頂にレモンを置こうとする女学生。危うい中の不安と緊張、そして達成感の瞬間を切り取った写真は秀逸だった。さらに秀作ぞろいの中で、奨励賞に推したのは、山形県立山形北高・海谷チームの『西の魔女が死んだ』である。技巧に走らない、素直で率直な感想と、それをそのまま描いたようなイラストがほのぼのとして味わい深い。審査員冥利(みょうり)の年だった。

教育学者・秋田喜代美

■読み深めた楽しさ伝わる 教育学者・秋田喜代美

 今年はボードのデザインだけではなく読書会でなければ読まないだろう作品や読み方へ迫る力作が多かった。 渋谷教育学園渋谷高・林チームの作品は、双子キサとトアの物語を、実の双子の姉妹を含む息の合った語りあいで読んだ楽しさが伝わるボードだ。広い視野や細かい表現など、視点を変えて繰り返し読むことで、初めは漠としていた本の魅力を言葉として紡ぎだす過程をつづったルポ、自然とともに、の思想を表すイラストが、やさしく語りかけてくる。

作家・あさのあつこ

■見た目の美しさも印象的 作家・あさのあつこ

 4年目ともなると、常連校、初参加校とさまざまな顏がそろい、選考会に臨む楽しさが増しました。福井県立科学技術高は常連校の一つ、甲子園風にいうなら古豪、強豪校といったところでしょうか。今回の楠チームの作品も、『時計じかけのオレンジ』を選び、人間の根源にあるものに迫ろうとした心意気と力量に感服しました。時計からオレンジに変化するビジュアルも美しく印象的で、一目で心に刻みつけられました。高校生らしい斬新で深い読書会だったと思います。

女優・佐藤江梨子

■一味も二味も違う世界観 女優・佐藤江梨子

 私は去年『海辺のカフカ』の舞台に出演して、大げさでなく80回くらいは原作を読み返しました。すっかり作品世界に浸った気になっていました。

 でも、東京成徳大学高・味田チームの読書会の世界観、私とは一味も二味もどこまでも違っていました。

 私の理解は誤解? あれ?そうだったっけ? そんな思いが次々浮かんできて、またこの小説を読みたくなりました。高校生にしては、エロい描写の部分に触れていなかったのも、なかなかステキでした。

作家・道尾秀介

■素直で好ましい議論展開 作家・道尾秀介

 今年も候補作品のレベルが高く、一冊の本をこんなに深く読んでくれるものか、と心強い限りでした。『死者の奢(おご)り』で挑戦した山村学園高・菊池チームはメンバー全員が1年生。ボードの見た目は少々インパクトに欠けるかもしれないけれど、ルポを読むと、議論の展開がとても素直で好ましく、反省点もきちんと把握していて、今後に期待させてくれます。「奢り」と「驕(おご)り」という字義を巡る議論は、作家の立場から非常にうれしく思いました。



受賞作一覧

【最 優 秀 賞】   大阪市立工芸高 清水チーム 梶井基次郎『檸檬(れもん)』
【優 秀 賞】   東京成徳大学高(東京都) 味田チーム 村上春樹『海辺のカフカ』

          福井県立科学技術高 楠チーム アントニイ・バージェス『時計じかけのオレンジ』
【奨 励 賞】   山形県立山形北高 海谷チーム 梨木香歩『西の魔女が死んだ』
          山村学園高(埼玉県) 菊池チーム 大江健三郎『死者の奢(おご)り』
          渋谷教育学園渋谷高(東京都) 林チーム 小路幸也『キサトア』
学校賞は、応募点数、作品のできばえ、取り上げた本の多様さなどを基に、主催者で選考しました。今回は次の2校に贈ります。
【学 校 賞】   愛媛県立伊予高 富山県立砺波高

▲TOPへ戻る



【どくしょ甲子園 過去の受賞作品】

【どくしょ甲子園 応募要項】

【→ 読書会へのアドバイス】

【→ どくしょボードのつくりかた】

【どくしょ甲子園 関連記事】