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朝日新聞社 どくしょ甲子園 読書会を開いて、仲間と一緒に本を読み、みんなで語り合おう!その成果を1枚の作品「どくしょボード」で表現する高校生のコンクールです。

どくしょ甲子園 伝える深まる、本の世界 - let's 読書会、高校生!

第5回どくしょ甲子園 受賞作品

受賞作一覧 ※クリックすると作品をご覧いただけます


【最 優 秀 賞】   明治大学付属明治高校(東京都) 古和田チーム 伊藤計劃著 『ハーモニー』
【優 秀 賞】   東京成徳大学高校(東京都) 松岡チーム M・エンデ著 『モモ』

          滝川第二高校(兵庫県) 山本チーム O・ヘンリー著 『賢者の贈り物』
【奨 励 賞】   東京都立工芸高校 汲田チーム いしいしんじ著 『トリツカレ男』
          湘南白百合学園高校(神奈川県) 折橋チーム 芥川龍之介著 『蜜柑』
          石川県立金沢錦丘高校 南野チーム 本谷有希子著 『嵐のピクニック』
学校賞は、応募点数、作品のできばえ、取り上げた本の多様さなどを基に、主催者で選考しました。今回は次の2校に贈ります。
【学 校 賞】   相模女子大高等部(神奈川県) 大阪市立工芸高校



優秀賞: 東京成徳大学高校 松岡チーム
松岡武さん(2年)、杉山志穂さん、前田萌依季さん(1年)

 取り上げた本:M・エンデ著『モモ』(岩波少年文庫)

    ▼ どくしょボード 第5回どくしょ甲子園優秀賞: 東京成徳大学高校・松岡チームの作品


▼ ルポ 読書会
束縛の中でも楽しく自由に

第5回どくしょ甲子園優秀賞: 東京成徳大学高校・松岡チーム

 私たち文芸部は、「時間泥棒って何だろう」という興味から、「モモ」を選んだ。

 読書会では、この作品のテーマとなっている「時間」について話し合った。しかし、今回は作品の奥深くまで読み解きたいとも思っていた。「時間」というテーマ以外にも、この作品における、もう一つ別のテーマは存在するのだろうか? その疑問が、もうひとつのテーマ探しのきっかけだった。

 次に私たちは、大人と子供の違いについて着目した。物語の中で子供たちは自由に遊んでいるが、大人たちは時間泥棒に時間を盗まれ、時間に追われた生活を送っている。ここに、「自由」と「束縛」というテーマが浮かんできた。そして話し合う中で浮かんだ、一つの問い。

 自由とはなんだろう? この答えの一つを私たちは「時間による束縛からの解放」とした。

 だが、突き詰めていくと、「自由」と「束縛」という対比は「時間による束縛」という観点において、成立しなくなってしまうことに気付いた。なぜなら、子供にも時間の束縛があったからだ。子供も朝から晩まで遊び続けることなどできないし、決まった時間に学校に行ったりもする。

 そう考えると、全ての人に「時間による束縛」が成立してしまう。つまり、テーマとしてきた「自由」と「束縛」の対立に矛盾が生じてしまうのだ。この事実に直面し、私たちは困惑した。なんとか「自由」と「束縛」を対立させることはできないのか――。再び私たちはこのテーマについて、身近な学校の授業や部活に始まり、歴史的観点や教育的観点にも踏み込んで徹底的に話し合った。その末に辿(たど)り着いたのは、「楽しみのある束縛」と「楽しみのない束縛」だった。私たちは、あえて「自由」という言葉を使わずに、「束縛」という概念を種類分けして表してみたのだ。すると、メンバーの一人が「この楽しい束縛って、スポーツも当てはまるよね」と呟(つぶや)いた。今までにない発想だった。確かにスポーツは、ルールやコート(場所)などによって縛られているが、楽しいものである。多少の縛りがあることによってこそ成立し、楽しさを生み出しているのではないだろうか。ルールもコートも全て無くなった時、それはもはやスポーツではないだろう。つまり、自由とは束縛があってこそ存在し、完全な自由など存在しえないのではないか。

 また、読み深めて話し合う中で、「人間らしさ」「自分らしさ」というものを感じた。

 自分にしかない、光るモノ。私たちも物語の中の子供たちのように、束縛の中でも楽しく自由であろうとすることで、生き生きと充実した日々を送ることができるのではないか。

 大空を自由自在に翔(かけ)る鳥の如(ごと)く。

 今回の読書会では、テーマ決めが錯綜(さくそう)し、行き詰まることも多かったが、「同じ本について話し合う」という縛りの中で私たちは楽しく充実した読書会を行うことができたと思う。

 私たちは、束縛の多い社会の中にあっても輝いていきたい。
 モモと子供たちのように――。


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優秀賞: 滝川第二高校 山本チーム
山本悠太朗さん、森田愛理さん(以上3年)、近岡日南子さん(2年)
木下瑠衣さん、藤沢舞さん、山崎さくらさん(以上1年)

 取り上げた本:O・ヘンリー著『賢者の贈り物』(IBCパブリッシング)

    ▼ どくしょボード 第5回どくしょ甲子園優秀賞: 滝川第二高校 山本チームの作品


▼ ルポ 読書会
原文から迫った作者の思い

第5回どくしょ甲子園優秀賞: 滝川第二高校 山本チーム

 「どの本を選ぶか―」普段読んでいる本が違う人々が、学年・クラスの垣根を越えて集ったため、本を決定するまでに長く時間がかかった。とりあえず短編を中心に何冊か持ち寄り、各自読んでから決定した。

 この作品が決まった理由として、「自己を犠牲にしてまで相手を思いやる夫婦」の物語に胸が打たれたことや、「売ってしまった物をまた取り戻そうと努力できる」という、これから先の希望が見える作品であることがあげられる。

 印象的な文を各自抜き出し発表したところ、多かったのは「髪を切ったからといって、ぼくの君への愛はいささかも傷つくことはない」であった。しかし、各自異なる本を読んでいたため、訳に微妙な違いがあり、読み手の印象が大きく異なっていた。そこで、改めて原文を読んでみることになった。

 すると、本によってかなり意訳が加えられていることが分かった。特に児童向けの本では、終盤の辺りが簡訳されていた。「これでは作者の本当に伝えたかったことは分からないのではないか」と思い、対訳の本を元に読書会を進めることにした。

 原文を読んで特に気になったのは、タイトルの「賢者」に「magi」(キリスト誕生時に贈り物をもってきた東方の三賢者)という単語が使われていたことであった。最後の一文も「They are the magi」(デラとジムこそ賢者である)と言い切っている。作者はどんな思いを込めたのであろうか?

 伝記を調べていると、オー・ヘンリーは刑務所に入っていたことが分かった。「人権を無視した暮らしを経験し、より大切なものに気がついたのでは」「自ら賢者になろうとしたのではないか」などの意見が出された。

 また、デラは妻をモデルにしているのではないか、との意見があった。逮捕されると分かっていながらも、危篤の妻を看取るために家に戻ってきたオー・ヘンリー。デラが言った「髪は数えることができるかもしれないけど」とは、新約聖書マタイ伝からの言葉で、伝記には、妻はキリスト教徒で祈りの言葉をよく口にしていたと記述がある。回想文のような文体や書かれた年代も合致しており、この作品は亡き妻への愛が綴られた手紙ではないだろうか、と考えた。

 キャッチコピーの案としては最初、「永遠の恋文(ラブレター)」というものが候補にあがった。しかし本を読み返すと、手紙というより楽曲の調べが耳を掠めはじめた。そこで"男性が恋人に贈る愛の歌"という意味の「セレナーデ」が最適ではないかと考えた。作者がこだわった「賢者」は必要不可欠であると思われたので、「賢者が~するセレナーデ」とし、動詞の部分は「紡ぐ」「奏でる」「綴る」などの案が出たが、最終的に「賢者が綴るセレナーデ」とした。

 イラストは、デラとジムのオルゴールを描き、愛の歌を表現した。古い手紙に見立てたアンティークペーパーに「この本の魅力」を書き、バラ、ユリ、アネモネなど、愛にまつわる花言葉の花をあしらい、イラストボードを完成させた。


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