どくしょ応援団

本を読もう。何を読もう? 迷ったら「どくしょ応援団」へ。親子で、ひとりで、夢中になれる本との出会いがここに!

どくしょ甲子園Let's 読書会、高校生!!

シンポ「グループ読書のすすめ」

 2010年にスタートした「どくしょ甲子園」。その第1回の成果を踏まえたシンポジウム「グループ読書のすすめ」(朝日新聞社、文字・活字文化推進機構主催、全国学校図書館協議会協力)が、東京・築地の朝日新聞東京本社で開かれた。研究者、作家、教師らが、それぞれの立場から、「みんなで読み合うこと」の魅力や可能性を語り合った。(文・角田奈穂子、写真・馬場磨貴)

基調講演「出会い、読み合うことの可能性」秋田喜代美さん(東大教授)

秋田喜代美(東京大大学院教授)

 読書というと、一人で黙読の印象が強いのですが、今あちこちで注目されているのは、読書会をはじめとする、協働で読むグループ読書です。

 児童文学作家の椋鳩十は、今から半世紀以上も前に「母と子の20分間読書」を提唱。家族ぐるみで読書を、と呼びかけました。

 今、幼稚園や保育園で、お母さんたち自身が絵本の読者になって感想を語り合う試みをしているところがあります。親子が同じ絵本を読むことが、親子のつながりを深めます。

 一緒に読むことを学校で実践しているのが、朝の10分間読書。違う本を読みながらも同じ場所、同じ時間の共有が、一人読みとは違う読む連帯感を生んでいると思います。「夏休みに何か1冊読む」という宿題を先生にも出して、読書会を行っている学校もあります。

 学校から書店、職員研修まで、グループ読書は、選ぶ本、参加者の年代や人数、やりとりも目的もさまざまです。しかし、共通するのは、様々な人と出会うことで本への興味関心を広げ、一冊の本を読む視点や考えの違いに気付き、そのわけを深く語り合い、互いを尊重する読みを作ることです。そこに新しい可能性を感じます。

語りあいが広げる共感の輪 トークセッション「高校生に読書会のすすめ」

【秋田】 この場では、高校生の場合を中心にお話をうかがいます。読書会には、いろいろな意味や効果があると思うんですが。

岩崎夏海(作家)

【岩崎】 子どもの時、絵を習っていたんですが、同じ風景を前にしても、上手な人は、僕が気がつかなかったようなポイントをとらえて描いている。とても勉強になりました。読書も同じで、読み上手に読みを学ぶ場として、読書会は有効だと思います。

【秋田】 古賀さんの学校は、第1回どくしょ甲子園で、最優秀賞と優秀賞の受賞チームを出しました。

【古賀】 私立中高一貫校で生徒の「自ら学ぶ力」を育てることを教育目標としています。そのために読書はもっとも大事なことだと思っています。当校の場合、長い間保護者や先生、地域の人たちによる「生き方読書会」というものを開き、お互いがよい刺激を与え合ってきました。そこで生徒たちにも勧めるようになりました。

【長尾】 山口県内の高校で積極的に読書会に取り組んでいます。ここ10年ほどは、夏休みには近隣の十数校に声をかけ、そこに先生や卒業生、市民も参加する「合同読書会」を開いています。生徒たちは、一人で読んでいるときよりも新しい発見があると言っています。読書の質が上がっていきますね。本の価値も高まる感じです。

【秋田】 読書会では、本の内容を深め合いますが、唯一の正しい答えを割り出すのではない。そこが通常の授業と違います。

古賀正一(学校法人市川学園理事長)

【古賀】 読書会はディベートするところではない、ということが大事ですね。相手をやりこめて、自分の意見を押し通すのが目的じゃない。違った意見を発見することの驚き、喜び。それによって、参加者にある種のシンパシーが出てくる。

【秋田】 インターネット上のおしゃべりは、対話の形をとっていても本質的にはモノローグだと思います。読書会では「生身の語りあい」を体験することになる。それが共感を生むのでしょうか。受け入れ合う雰囲気のなかで、自分の考えを言う力を身につけると同時に、他者の言っていることを聴く姿勢も養えそうです。

【古賀】 本について語り合う場を作るのは、読書習慣は一生の宝だと思うからですが、それを身につけてもらうには、仕掛けが必要です。私の学校ではひとつの試みとして、中高生それぞれ向けに教師が選んだ、独自のお薦めの100冊の本の冊子を配布しています。

【秋田】 読書会には、一人読みと違って表現力やコミュニケーション力を磨く効果もありますが、基本はいろいろ読んでほしい、ということですよね。

【岩崎】 そのためにはある程度の強制も必要かもしれない。とくに古典は学校のカリキュラムに組み込み、読み方の模範を示すことで、後の読書体験がより豊かになると思います。

長尾幸子(山口県立厚狭高校司書教諭)

【長尾】 心の成長ということを考えると、ときには課題読書のような形で、ある程度無理やり読ませるのも大事です。それを読書会でみんなで読むと、一人で読むより抵抗が少ないのではないかなと思います。

【岩崎】 もっとも、面白いことを体験したいという人間の気持ちはゆるぎないから、面白い本をポンと置いておけば、黙っていても読む、ということもある。

【古賀】 岩崎さんが書かれた「もしドラ」(『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』)は、中学生が読んでいますよ。『マネジメント』そのものも読んでいると言っていた。

【長尾】 面白いのは大事だと思います。だから読書のきっかけはケータイ小説でもいいんです。

【岩崎】 お笑い芸人養成の専門学校で教える中で読書会を1年くらいやっています。読書がうまくなりたい、と思ってほしいから。全員に読んだ感想を言ってもらいますが、ときにはあえて「その読み方じゃダメ」と言っています。

【秋田】 その場に立ち会う大人がどう関わるかが、読書会のポイントですね。

【長尾】 私たちの合同読書会では、教師も一参加者です。教師がリーダーシップをとることはありません。生徒と先生がムキになって論じ合うこともありますよ。ただ、大人が示す「読み」は、生徒たちにはいい刺激だと思う。そこを狙ってもいます。

【古賀】 当校では選書も運営も生徒に任せていますが、スムーズに進まないこともあります。図書館の司書は、どこでどれくらい「介入」したらいいか悩ましいと言っています。基本は、黙ってるようですが。

【秋田】 先生とやり合えるのは、生徒の中に自分を語る言葉が生まれてきているからですね。読書会はそれを育てる格好の場だと思います。


◆トークセッション参加者(50音順)
 岩崎夏海さん(作家)
 古賀正一さん(学校法人市川学園理事長)
 長尾幸子さん(山口県立厚狭高校司書教諭)
 司会・秋田喜代美さん(東京大大学院教授)

企業トップが学ぶ「大人の読書会」 インタビュー 村上陽一郎さん

村上陽一郎さん

 大手企業の幹部たちが泊まりがけで参加する「大人の読書会」がある。「アスペンセミナー」。そのねらいを東洋英和女学院大学長で、日本アスペン研究所副理事長の村上陽一郎さんに語ってもらった。

     ◇

 アスペンセミナーは、1950年代にアメリカで始まりました。政財界のトップがコロラド州のアスペンに集まって、古典を読んで議論する。つまり読書会ですね。そこでもたらされるさまざまな知的刺激が、遠回りにだけれど、リーダーとしてより良い社会を実現するのに役立つ。そういう考え方で続けられています。

 これに参加した富士ゼロックス元会長の小林陽太郎さんが共感して、日本でも98年に日本アスペン研究所が誕生しました。

 今の若い人が、国際社会の中でよい仕事をするためには、狭い専門性の中に閉じこもっていてはいけない。知的レベルを上げること、人間としての理解力を高めることが大事です。それには、ビジネス書を読むだけでは足りません。

 日本アスペンには、企業の役員クラスを対象としたもの、幹部候補生が参加するもの、そして高校生対象と、三つのセミナーがあります。どれも十数人で古典を読み、それについてみっちりと話し合います。

 大人のセミナーは泊まりがけで、分厚い課題図書を読ませられます。参加者の半分くらいは、会社の指示でいやいや参加した人たちだと思いますが、終わってみると好評で、会社も続けて人を送ってくるし、本人もはっきりと手応えを感じているようです。古典の力でしょう。

 教養という言葉は、今や揶揄の対象になっていますが、セミナーが提唱しているのは広い視野で物事を考える教養の重視。ビジネスだけでなく、私生活でも知的であることが求められるのが、現代の市民社会です。大学を卒業したら本を読むのはおしまい、ではダメなのです。

(聞き手・秋田喜代美)
(2011年4月30日 朝日新聞から)