朝日新聞社 どくしょ応援団朝日新聞社 どくしょ応援団
朝日新聞社: カジュアル読書~10代から20代向けの本や、著者によるイベントを紹介します。
作家LIVE エンタメ for around20 キャンパス発 気になる新刊 ブックマーク

 

バックナンバーはこちら
作家LIVE

 

逢坂剛さん キャラクター作り、決め手

 人気の「百舌(もず)」シリーズの13年ぶり、7作目にあたる新作『墓標なき街』を刊行した逢坂剛さんを招いてのトークイベントが朝日新聞東京本社の読者ホールで開催された。シリーズを続けるコツ、テーマの作り方、映像化についてなど縦横無尽に語った。

逢坂剛さん=関田航撮影

逢坂剛さん=関田航撮影

 「13年間、助走していたようなもの。ペースを取り戻すために、旧作を最初から読み直してみたら、自分で言うのもなんですが、面白くてねぇ。はっと気がつくと読みふけってるんですよ」

 新作に臨んだ感想を聞かれ、冒頭から参加者を笑いに誘う。再開のきっかけは、映像化だったという。2014年にドラマ化され、また昨年秋には映画「劇場版 MOZU」が公開された。時制が行き来するなどの理由で、映像化不可能と言われていて、「またダメではと思っていたら、あれよあれよと映像化が実現。出版社に、これを機会に新作をと言われて」

 シリーズの前日譚にあたる1981年の『裏切りの日々』(集英社文庫・583円)は初めて公安警察を取り入れた作品。「警察小説と本格ミステリーを融合」したい意図があった。ミステリーのトリックで、ハードボイルドのキャラクターを描く、そういう小説を書きたかった。「キャラクターが決まれば70%出来たようなもの」。「百舌」シリーズでは殺し屋・百舌と警視庁公安部警部・倉木尚武、津城(つき)警視正などの主要登場人物ができたとき、「ああ、もうこれで書ける」と思ったそうだ。

 「禿鷹(はげたか)」「御茶ノ水警察」などシリーズをいくつも持つが、シリーズには楽な面とたいへんな面があるという。「キャラクターに沿って話を作っていけばいい。しかし4、5作とボルテージが落ちてきて、それが読者にもわかる」。この百舌シリーズでは半ばで主人公の倉木があっけなく死んでしまう。「読者に、これで終わりとメッセージを送ったつもりだったが、なぜ殺したという抗議の声が来て」続けることに。「経験と技術で書けてしまうけど、作家には常に課題が必要。でないと緊張感が続かない」とシリーズを続ける苦労と姿勢を語る。今作『墓標なき街』では、レトロな雰囲気、江戸川乱歩的世界とハードボイルドを合わせてみたいと考えた。

『墓標なき街』(集英社 1,944 円)

『墓標なき街』
[出版社] 集英社
[価 格] 1,944 円

 各作品にはその時々の社会的事件が反映されている。88年の『幻の翼』(同・734円)は北朝鮮からスパイが入国してくる設定で、92年の『砕かれた鍵』(同・810円)には新興宗教団体が登場する。小説のネタで一番多いのは新聞記事だが、もう一つ、外せないのが古本屋だ。神田神保町にある逢坂さんの事務所では「ただいま古本屋を巡回中です」という留守電メッセージが流れるという。情報は自分の足で集めなければダメと、古本屋の書棚を毎日巡り、資料を見つける。「神保町は情報の宝庫。情報に作家的創造を付け加えて書くので、ちょうど現実のタイミングが得られる」。タイミングは「1歩くらい先に行くのがいい。あまり新しいとだめ」と元広告マンらしいコツも披露する。

 映像化の際はシナリオを見ない。「活字と映像ははっきり違うんだと身体でわかっている」。映画好きならではの確信だ。「結末を知っていると楽しめないですからね」とも。原作にはない、長谷川博己、吉田鋼太郎の両俳優が演じた悪役キャラクターを絶賛。「脚本家と俳優さんにお礼を言いたいくらい。よく原作を読み込んでくれたなと。小説に出てきても不思議ではない。創作意欲が刺激されましたね」。ちなみにシリーズ中の悪役で一番愛着があるのは『鵟の巣』(同・907円)に出てくる超美人悪徳警官・洲走(すばしり)かりほ。「書いていてホレ」たそうだ。小説中には警察の悪があふれているが、警察そのものより、「警察の中に、今の管理化された社会構造を見、それへの抵抗を描いている」と言う。次回作については確言を避け、「楽しみにしてくれる読者が一人でもいれば書いていてうれしい」と結んだ。

(聞き手・星野学、文・岡恵里)


裏切りの日々

裏切りの日々
[出版社] 集英社文庫
[価 格] 583円

百舌の叫ぶ夜

百舌の叫ぶ夜
[出版社] 集英社文庫
[価 格] 778円

幻の翼

幻の翼
[出版社] 集英社文庫
[価 格] 734円

砕かれた鍵

砕かれた鍵
[出版社] 集英社文庫
[価 格] 810円

鵟の巣

鵟の巣
[出版社] 集英社文庫
[価 格] 907円

新装版 カディスの赤い星(上)

新装版 カディスの赤い星(上)
[出版社] 講談社文庫
[価 格] 788円

新装版 カディスの赤い星(下)

新装版 カディスの赤い星(下)
[出版社] 講談社文庫
[価 格] 864円

 

 ▼プロフィール
 おうさか・ごう
 43年東京生まれ。80年、「暗殺者グラナダに死す」でオール読物推理小説新人賞受賞、87年『カディスの赤い星』で直木賞。
 主な作品に『禿鷹狩り』『大迷走』『重蔵始末』など。「百舌」シリーズは映像化もされ、累計240万部を突破。


▲このページのTOPへ

 

朝日新聞 インフォメーション 通常版 ベルマーク版