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松岡圭祐さん 「本当の探偵」追求し描く

 人気シリーズ「万能鑑定士Q」「探偵の探偵」が「合流」した『探偵の鑑定(Ⅰ・Ⅱ)』を刊行した作家・松岡圭祐さんのトークイベントが東京・新宿のブックカフェ「STORY STORY」で開かれた。声優・俳優の松井茜さんが聞き手となって、創作の舞台裏を語った。

松岡圭祐さん=東京都新宿区、飯塚悟撮影

松岡圭祐さん
=東京都新宿区、飯塚悟撮影

 「千里眼」「万能鑑定士Q」「探偵の探偵」「水鏡推理」、いずれも若い女性の主人公が謎ときするシリーズは、累計1千万部をはるかに超える。松岡さんはミステリーでの新しい探偵像を創ってきた。

 「人が死んでいるという状況って、現実にそうはない。殺人事件で110番通報したら、黄色いテープが張られて、もう現場には入れない。探偵役が殺人の謎ときの音頭をとるのは、じつは不自然なんです」

 警察が担当しない部分を解決するのが、松岡さんの考える探偵。鑑定士が主人公の「万能鑑定士Q」シリーズは、普段の仕事がそのまま謎ときになるような、探偵役の若い女性にふさわしい職業はなにかと考えて設定した。

 一方、本当の探偵とはなにか。探偵業法で法律の枠組みを調べ、実際に取材をして書いたのが「探偵の探偵」シリーズ。主人公は、指名手配されているストーカーに依頼を受けた探偵が所在を伝えたせいで、妹を殺されたという過去を持つ。違法な行為に利用する依頼は探偵業法では受けてはいけない業務。そのような悪徳探偵に、探偵となった主人公がストイックに立ち向かうという設定だ。

 その2人が出会ったのが新作の『探偵の鑑定』だ。「探偵」の紗崎玲奈は過酷な場面も暴力も辞さずに自分の力で解決していく、いわば北風。一方、「万能」の凜田莉子は詐欺師にも優しく、自ら罪を認めさせようとする太陽のような女性だ。イソップ物語でも北風と太陽は一緒に登場する。人間不信に陥っている北風が、太陽のように人を受け入れられるか。過酷な状況に追い込まれても、太陽は太陽のままでいられるか。「『万能』と『探偵』を合わせるような浅知恵は絶対にやりません!」と宣言していたにもかかわらず、やることにしたのは、それぞれのシリーズを完結するには、北風と太陽の2人が乗り越えなければならない局面が、必ず来るからだ。

 ミステリーを書く時に心がけているのは、謎ときのポイントはわかるようにということ。「病院で長時間待っている時、通勤電車で押し合いながら乗っている時、集中力が必要なものは、読み物としては過酷。病院で複雑なものが全部理解できたら、それは『健康』というものです」に会場が沸く。


『探偵の鑑定Ⅰ』(講談社文庫 670 円)

『探偵の鑑定Ⅰ』
[出版社] 講談社文庫
[価 格] 670 円

 影響を受けたのは「セバスチャン・ジャプリゾの『シンデレラの罠』、フランスのミステリーは変化とウィットが効いている」。シャーロック・ホームズの1編「赤毛連盟」は「人が死なないミステリー」で、背後に大きな犯罪も冒険もあって楽しめる。

 トークショーに先立ち、参加者から松岡さんへの質問を募った。「読むスピードが作品の発表に追いつけない。どんな執筆生活?」には、「普通に週に5日、8時間労働。4時間書いて4時間推敲(すいこう)、それで1章終わります」。計画的に執筆するコツは入念なプロットを準備すること。100ページ分くらい、自分だけがわかればいいから、名古屋弁が混じることも。細部まで用意しておけば、執筆時は表現部分などに力を注げる。

 「特等添乗員α」シリーズの「主人公の家を横浜市鴨居にした理由は?」という地元ファンからの質問には、「候補地は、最寄り駅がキャビンアテンダントの姉が羽田に行きやすく、近くに住宅地が広がって新築分譲住宅がローンで買えそうな場所。鴨居は町並みもきれいなので、車でも回って、絞りこんで決めました」と明快に答えが。質問により、創作の舞台裏がつぎつぎ披露される。今後は男性が主人公のものも考えているそうだ。

(岡恵里)



【→関連サイト:朝日新聞デジタル 動画ページ 「本当の探偵」追求し描く 松岡圭祐さん、舞台裏語る(2016/04/24)」】



万能鑑定士Qの事件簿 I

万能鑑定士Qの事件簿 I
[出版社] 角川文庫
[価 格] 562円

探偵の探偵

探偵の探偵
[出版社] 講談社文庫
[価 格] 637円

水鏡推理

水鏡推理
[出版社] 講談社文庫
[価 格] 670円

催眠 完全版

催眠 完全版
[出版社] 角川文庫
[価 格] 691円

特等添乗員αの難事件Ⅰ

特等添乗員αの難事件Ⅰ
[出版社] 角川文庫
[価 格] 555円

 


 ▼プロフィール
 まつおか・けいすけ
 1968年、愛知県生まれ。デビュー作「催眠」(1997年)がベストセラーに。
 「万能鑑定士Q」シリーズはブックウォーカー大賞2014文芸賞受賞。映像化も多数。


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