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玉岡かおるさん、西山厚さん 女帝と僧侶、真の関係は?

 作家の玉岡かおるさんと帝塚山大学教授の西山厚さんを迎え、第16回「関西スクエア 中之島どくしょ会」(朝日新聞社主催)が5月中旬、大阪市北区の中之島フェスティバルタワーで開かれた。奈良・東大寺の大仏を造営した聖武天皇の娘で、2度天皇に就いた孝謙・称徳天皇と僧侶の道鏡の関係について、女性と男性の視点から激論を交わした。

玉岡かおるさん=大阪市北区、滝沢美穂子撮影

玉岡かおるさん
=大阪市北区、滝沢美穂子撮影

 西山さん「孝謙天皇と道鏡は肉体関係があった」
 玉岡さん「絶対にない。それは女を知りませんよ」
 西山さん「あるんです」
 玉岡さん「ないですってば」

 2人のやり取りに約80人が聴き入った。玉岡さんは小説『天平の女帝 孝謙称徳』(新潮社・1944円)の著者。西山さんはエッセー『語りだす奈良 118の物語』(ウェッジ・1620円)を書いた。2人はともに孝謙・称徳天皇の生涯に深く関心を寄せている。

 もともと孝謙天皇の弟が天皇になるはずだったが、1歳になる前に死去し、彼女が皇太子に。女性で皇太子になったのは孝謙天皇だけ。32歳で天皇に即位した。

 玉岡さんは「待ち望んだ男の子を亡くした光明皇后(孝謙天皇の母)の悲しみは大きかったと思う。孝謙天皇は『自分が男に生まれていたら、母が泣くことはなかった』と悔い、光明皇后のためにいばらの道を選んだ」とみる。西山さんは「皇太子になったとき、『女であってはいけない、男の道を行け』と両親(聖武天皇と光明皇后)から言われたわけです」と解説した。

 孝謙天皇が一度皇位を退いたのは、母の看病のためという。父も母も亡くなり、自らも患う。病を治したのが道鏡だった。その後、称徳天皇として再び即位した。「これほど孤独な女性がいたでしょうか」と玉岡さんは聴衆に問いかけ、「父も母も死に、誰もいない。心に空洞ができた。病を治してくれた道鏡はすぐれたお坊さんです」と西山さんは話した。

 2人の見方が重なったのは、ここまでだった。


西山厚さん=大阪市北区、滝沢美穂子撮影

西山厚さん
=大阪市北区、滝沢美穂子撮影

 西山さんは「生きているということは抱き合うことです。男と女が抱き合って、どこが悪いんですか」。玉岡さんは、孝謙天皇が高僧の鑑真から戒を授かった点を挙げて反論した。「女にとって黒髪は命。それを剃(そ)ってツルツルにするのは女を捨てたということ。やすやすと戒律を破れるでしょうか」

 さらに玉岡さんは、後世の男性の歴史家らがスキャンダラスに書き、孝謙天皇は歴史の闇に葬られたと指摘した。「私は夢で、恥辱を晴らしてほしいという彼女の声を聴いた。色に迷うことなく、この国の平和と民の幸せを祈った女帝でした」と言い切った。

 話題はお互いの著書にも及んだ。西山さんによると、奈良時代は男性の寺の国分寺と女性のための国分尼寺がセットでつくられ、男女平等だった。平安時代、女性は極楽へ往生できないと男性僧侶が言い出し、男尊女卑になる。「でも女性は意外と平気だった。あほな男の言うことを真に受ける女性は少なかった」

 そして玉岡さんの小説について、「男はあほや」と伝える本と分析した。「女性は困難な状況の中で一生懸命に人生を送っているが、男性は自分のこと、一族のこと、政権のことしか考えていない。男と女の決定的な違いが全編を通じて記されています」

 一方玉岡さんは、西山さんのエッセーにつづられている釈迦の母、摩耶夫人に関するくだりを紹介した。釈迦を生んで7日目に亡くなった摩耶夫人は母乳をあげられたのだろうか、と気にかけている文章だ。「やさしさにあふれているエッセーです。女性は子どもを産み、おっぱいを与え、大きくなるのを見たい。決して戦で命を落とさせたくない。母から娘へ、娘から孫へ、命は女がつないでいます」と話した。

(司会・野波健祐、文・岡田匠)



天平の女帝 孝謙称徳

『天平の女帝 孝謙称徳』
[著 者] 玉岡かおる
[出版社] 新潮社
[価 格] 1,944 円

語りだす奈良 118の物語

『語りだす奈良 118の物語』
[著 者] 西山厚
[出版社] ウェッジ
[価 格] 1,620 円


 ▼プロフィール
 たまおか・かおる
 1956年、兵庫県生まれ。87年、『夢食い魚のブルー・グッドバイ』でデビュー。
 2009年に織田作之助賞を受賞した『お家さん』は舞台やテレビドラマになった。


 にしやま・あつし
 1953年、徳島県生まれ。奈良国立博物館の学芸部長として数々の特別展を企画し、2014年から帝塚山大教授。
 著書に『仏教発見!』など。


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