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朝日新聞社: 10代の読書会 オーサービジット校外編
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「私も作家 即興の物語」 あさのあつこさん


 10代のための読書会「オーサー・ビジット校外編」(朝日新聞社・出版文化産業振興財団主催、紀伊国屋書店協力)の19回目が、作家・あさのあつこさんを迎え、東京の紀伊国屋書店新宿本店で開かれました。あさのさんの人気作『バッテリー』か『The MANZAI』を読んだ小4~大学1年の43人が、世代別の班に分かれて読書会に臨みました。


 

参加者に笑顔であいさつする、あさのあつこさん

 臆病な転校生の瀬田歩と人懐こいサッカー部の秋本貴史。『The MANZAI』は、体格も性格も対照的な中学生の友情と葛藤やクラスメートとの交流を描く物語だ。文化祭で「ロミオとジュリエット」を漫才仕立てでやろうと言い出す秋本。校長らは良い顔をせず練習を偵察に来る。その顔を見て秋本は「口だけで笑ってる。目は全然、笑うてないんやな」。

 主人公と同世代がそろう班では、一人がこの場面に触れて「先生のうそ笑い、私も感じたことある」。すると周りからも「あるある!」。中学生の微妙な感情や大人に抱く疑問を、参加者たちは1冊の本を通して共感し合う。

 読書会が盛り上がる中、あさのさんがマイクを握った。「『The MANZAI』と『バッテリー』の登場人物たちが、今朝東京駅に着いて、ハプニングに遭いながら新宿の紀伊国屋書店までやってくる物語を作ってみて」。参加者たちは突然の課題に戸惑いつつも、班の仲間とアイデアを出し合い即興でお話を生み出していく。

 30分後、発表だ。中学入学を前に岡山の地方都市に越してきた天才ピッチャーの家族との摩擦、新しい仲間との友情を描いた『バッテリー』。その主人公・原田巧が、『The MANZAI』に出てくる姉御肌の森口京美と新宿を目指すなど、作品を超えた「夢の共演」も飛び出した。

 「作者の私が気づかなかった登場人物たちの一面が見えた」とあさのさん。参加者の挙手で優秀賞に選ばれたのは、京美と、京美に思いを寄せるマジメでちょっと気弱な高原有一が文化祭のための本を買いに行くお話。人ごみで京美を見失った高原が何とか紀伊国屋にたどりつくと、京美は何事もなかったようにあさのさんとさわやかに会話していた。突然あさのさんが登場するというオチに会場は笑いと拍手に包まれた。

 最後は質問タイム。小説を書くきっかけを問われたあさのさんは、自らの思春期を振り返る。「田舎の何のとりえもない中学生で、ここで一生枯れていくんだろうかと思うと息苦しかった」。それが海外のミステリー小説に出あい、世界は広く自分の知らない人生があると知った。「私を閉じ込めていると思っていた壁は、世界につながるドアだった。開けるとまぶしい光やさわやかな風が流れ込んできた。書く人になりたい――。そう思ったんです」

 真剣に聴き入る参加者たち。あさのさんの言葉や作品もまた、10代の読者の中にある未知なる世界へのドアを開けたに違いない。

(ライター・中津海麻子 写真家・御堂義乗)


読書会を終えて

 金子綾子さん(高3)
 「みんなの『読み』の深さに驚き、作品世界への新鮮な発見がありました」

 宮本楓南(かなみ)さん(中1)
 「課題は登場人物をだれにするかで迷ったけれど、決まってからは色んな意見が出て盛り上がりました」


あさのあつこさんの本

バッテリー

『バッテリー』 全6巻  
[出版社] 角川文庫
[価 格] 514~596円

The MANZAI

『The MANZAI』 全6巻
[出版社] ポプラ文庫ピュアフル
[価 格] 各583円

NO.6

『NO.6』 全9巻
[出版社] 講談社文庫
[価 格] 514~529円

桜舞う

『桜舞う』
[出版社] PHP文芸文庫
[価 格] 810円

花宴

『花宴』
[出版社] 朝日文庫
[価 格] 583円

 

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