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朝日新聞社: 10代の読書会 オーサービジット校外編
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「お仕事小説、私も創造」 辻村深月さん


 10代のための読書会「オーサー・ビジット校外編」(朝日新聞社・出版文化産業振興財団主催、三省堂書店協力)の第20回が、作家の辻村深月さんを迎え、東京・神田神保町の三省堂書店で開かれました。辻村さんの作品『ハケンアニメ!』を読んできた中1~大学2年までの参加者49人は、世代別の班に分かれ、読書会に臨みました。


あいさつする辻村さん

あいさつする辻村さん

 『ハケンアニメ!』は、アニメーション業界で働く人々がそのシーズンの放映作品の頂点(=覇権)を目指す"お仕事小説"。天才アニメ監督・王子千晴とプロデューサー・有科香屋子、ライバルになるアニメ監督・斎藤瞳、アニメーター・並澤和奈など、自分の仕事に誇りを持つ登場人物の人間模様をリアルに描く。「仕事って一人ではできない。10代のみなさんに働く意味を考えてもらえたら」、そんな思いで辻村さんは課題本に選んだという。  参加者は初対面、でも一冊の本が仲をつないでしまうから不思議だ。10に分かれたテーブルで『ハケンアニメ!』談義が始まった。

 「王子と有科さんって、つきあわないのかな?」。中学生グループが恋の話に盛り上がったのに対し、高校生グループは「不器用だけどスタッフを大事にする王子の責任感がかっこいい」など、仕事に対するひたむきさに引かれたようだ。アルバイト経験のある大学生グループでは「働いていると理不尽なこともあるよね」「好きなことを仕事にできるっていいな」と、より身近な感覚で共感。

 会話が弾んできたころ、辻村さんがサプライズ課題を出した。

 「『ハケンアニメ!』のサイドストーリーを作ってください」

 突然の発表に「えーっ」と会場は騒然となった。

新たなサイドストーリーをグループ全員で発表

新たなサイドストーリーをグループ全員で発表

 課題の伏線は張ってあった。辻村さんは事前に自身が書いたサイドストーリーを配り、さらに「好きな登場人物に手紙を書いてくる」という宿題を出していた。

 舞台を過去や未来に移すなど、作品とは"別の物語"を作る条件として辻村さんが出したのは、「登場人物はふたり以上。事件かハプニングを必ず作ること」。

 創作時間は30分ほど。のんびりムードは一変して、会場は作中のアニメ制作現場のような熱気だ。

 「王子と瞳の出会いはいつだったんだろう?」「和奈はどうしてアニメーターになったのかな」。想像力をフル回転させて、用紙にペンで書いていく。次々に新しい物語が芽を出してきた。

 最後はグループごとに発表。「数年後、王子のプロポーズに気づいた香屋子のドキドキ感」や「9年前、ジュースをこぼしたことがきっかけで出会った王子と瞳」など、キャラクターの新たな一面がのぞく独創的なストーリー展開に大きな拍手が湧き起こる。

 「作中のキャラクターを実在する人物のように捉えてくれてうれしい。今日、一番楽しんでいるのは、絶対に私!」と、辻村さんは大興奮。「みんなのアイデア、全部パクりたいくらい!」と笑いを誘った。

 あっという間の3時間――。「じゃあ、またね」。旧知の友だちに手を振るように、みんな笑顔で家路についた。

(ライター・吉岡秀子 写真家・首藤幹夫)

【→サプライズ課題&みんなで取り組んだ課題発表のようすはこちら】


読書会を終えて

 尾形綾香さん(中1)
 「初対面の人と話せたことは貴重な体験。何より辻村さんと会えてうれしい」

 榎本一樹さん(高2)
 「作者の人柄を知り、新鮮な気持ちで本と向き合えそうです」

 辻村さん
 「今日出会った同世代の人たちとぜひ友だちになってほしいな。『本を読むって楽しい』、こうした気持ちでつながる仲間は一生の宝物だと思います」


辻村深月さんの本

ハケンアニメ!

『ハケンアニメ!』   
[出版社] マガジンハウス
[価 格] 1728円

島はぼくらと

『島はぼくらと』
[出版社] 講談社
[価 格] 1620円

家族シアター

『家族シアター』
[出版社] 講談社
[価 格] 1620円

オーダーメイド殺人クラブ

『オーダーメイド殺人クラブ』
[出版社] 集英社文庫
[価 格] 778円

朝が来る

『朝が来る』
[出版社] 文芸春秋
[価 格] 1620円

 

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