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朝日新聞社: 10代の読書会 オーサービジット校外編
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イライラの先に物語 朝井リョウさん


 10代のための読書会「オーサー・ビジット校外編」(主催・朝日新聞社、出版文化産業振興財団)の第22回が、作家の朝井リョウさんを迎え、福岡市・博多バスターミナル大ホールで開かれました。朝井さんの作品『世にも奇妙な君物語』を読んできた中1~大学2年までの参加者54人は、世代別の班に分かれ、読書会に臨みました。


参加者と話す朝井リョウさん

参加者と話す朝井リョウさん

 「今、イライラしたり違和感を覚えたりするものは何ですか?」

 朝井リョウさんが事前にそんな質問を投げかけたら、リア充、女子力、幼児虐待、LINEの情報流出、ガラケーで何が悪い……、当日提出された回答用紙にはいろんな思いが書き込まれていた。

 読書会は10グループに分かれた中で始まり、回答用紙を手に朝井さんがディスカッションに参加する形で進行した。「女子力、いい視点だよね」「ガラケー使い続ける気持ち、わかる~」「課題本はどうでしたか?」など、テーブルを回りながらイライラ話や本の話に花を咲かせる。

 「イライラは大事」と朝井さん。「本を書くとき、しゃくにさわること、違和感があるものを題材にすることが多い。今の10代は何にイラついているのか、知りたくて」。課題本『世にも奇妙な君物語』でも「シェアハウス」「コミュニケーション能力」など、自身が引っかかりを覚えた最近の風潮を取り上げている。

 そんな朝井さんをして「知らなかった。やっぱり10代は違うな!」と言わしめたのが、「インスタグラムの勉強アカウント」という、受験生向け画像投稿サイトへの違和感だ。「明らかに勉強より写真の加工に時間をかけた投稿がある」がその理由。「モスキート音といって、大人には聞き取れない音があるという。この回答にはまさに私にはもう、聞こえない音があるのだと指摘された感じ」と朝井さん。

 みんなのイライラで盛り上がったところで、「グループごとにネタを一つ選んで、物語を作ってみようか」。朝井さんから出されたサプライズ課題に一同どよめく。

 「運動部から下に見られてムカついている文化部が下克上する、っていう話はどう?」「生徒に厳しく自分に甘い先生の末路、みたいなのは?」。次第にイライラや違和感を引き起こしている人々の言動や社会の構図が見えてくる。あっという間に40分が過ぎた。

サプライズ課題の発表

 発表では「左利き」をテーマにしたグループに驚嘆の声が。世の中は右利き優先社会、左利きが淘汰(とうた)され、主人公はいつしか最後の1人に。そんな展開に「面白い! 意表をつく切り口でゾッとさせられたし、こんなふうに突拍子もないことを書けるのが、小説のいいところ」と朝井さん。

 質疑応答では、作家になった動機から「朝井さんにとって愛とは?」のような難問までたくさんの手があがった。「うーん、難しい」と考え込みながらも真剣に答えてくれるから質問は尽きない。

 朝井さんが高校時代の日常を描いた小説で、文芸誌の公募新人賞を受賞したのは20歳の時。「10代だけに聞こえる音がある。だからこそ今のうち、たくさん聞いておこう」。参加者に少し前の自分を重ねるかのように語った。

(ライター・安里麻理子 写真家・白谷達也)


読書会を終えて

  轟真秀さん(高1)
 「朝井さんの話を聞きに来たはずが、まさかのサプライズ課題。でも作家さん気分が味わえて楽しかったです」

 佐藤希さん(高2)
 「住んでいる県も部活も違うグループの人たちと初めから意気投合。盛り上がったし、朝井さんのお話から行動することが大事だと思いました」

 朝井さん
 「自分の中のイライラや違和感を突き詰めると、今の社会に足りない何かに行きつく。それを物語にくるんで投げると、思いのほかいろんな人に届く。小説にしてみること、お勧めします」


森見登美彦さんの本

世にも奇妙な君物語

『世にも奇妙な君物語』   
[出版社] 講談社
[価 格] 1,512円

武道館

『武道館』
[出版社] 文芸春秋
[価 格] 1,404円

桐島、部活やめるってよ

『桐島、部活やめるってよ』
[出版社] 集英社文庫
[価 格] 518円

何者

『何者』
[出版社] 新潮文庫
[価 格] 637円

チア男子!!

『チア男子!!』
[出版社] 角川文庫
[価 格] 821円

 

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