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朝日新聞社: 10代の読書会 オーサービジット校外編
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「モヤモヤ」を味わおう 柚木麻子さん


 10代のための読書会「オーサー・ビジット校外編」(主催・朝日新聞社、出版文化産業振興財団)の第23回が、作家の柚木麻子さんを迎え、大阪・ハービスPLAZAで開かれました。柚木さんの作品『本屋さんのダイアナ』を読んできた小5~大学2年の参加者は、世代別の班に分かれ、読書会に臨みました。


参加者と話す柚木さん

参加者と話す柚木さん

 水商売の母と暮らし、自分の名前が大嫌いな大穴(ダイアナ)と、編集者の父と自宅で料理教室を開く母を持つ甘えん坊の彩子。『本屋さんのダイアナ』は、互いの正反対の境遇に憧れ、本を通じて親友になった2人の少女の友情とすれ違い、そして苦悩が、10余年にわたって描かれる。

 大学生と高校生が同席した班。高3の女子は、お嬢様学校から共学の大学に進んだ彩子が「何を学び、どこまで深めるかは個人の裁量に任されている。迷える人間にとって、ここはただの巨大な箱でしかない」と悩むくだりに触れ、「大学がそんな場所だったら怖いな」と不安を口にする。すると目の前に座る大学生が「私、彩子と同じことを感じた」。大学は勉強するところだと思っていたが、彩子の姿を通じ、自分が動かなければ何も与えられないことに気づいたという。「自分でつかみ取っていかないと、本当にただの巨大な箱で終わっちゃうんだと思う」

 読書会が盛り上がる中、柚木さんがマイクを握った。「台風が近づいています。台風前の湿度、空気を表現してみて」。参加者は突然の課題に戸惑いながらも原稿用紙に向かう。

 休憩を挟みトークコーナーに。ダイアナが自分の名前が嫌いなことから、読書会に先駆け「自分の名前が嫌いな人はその理由を書く」という事前課題が出ていた。柚木さんはその意図を「環境になじめない、自由が少ないと感じがちな思春期に、努力ではどうにもできない自分の名前をどう思っているのかを知りたくて」。参加者からは「自分の名前は好き」が多数を占めた。さらに「親がくれた宝物だから大事にしたい」という意見も。以前は嫌いだったという人も、親から理由を聞いて好きになったという話に、柚木さんは「親の気持ち、言葉や名前の重さを理解している。みんな大人!」。

 サプライズ課題も力作が出そろった。「空気が重い」「ツンとした雨の香り」「エスカレーターから急に降りたときの体のだるさ」などの感覚的なものや、「歩く人の足が速くなる」といった周囲の様子から空気感を描いたものも。「視点がいろいろでおもしろい!」と柚木さん。そして、作品や小説を書く上でこんなアドバイスが。「運動会の日と普通の日では、校庭の空気が違って感じない? 空気感をちょっと入れるだけで、読んでいる人には情景が鮮明に浮かぶはず」

 最後は質疑応答。「学生時代はどんな女の子でしたか?」の問いに、「中高は女子校で、クオリティーの低いモノマネやギャグでもウケた。妙な自信がつき、小説でも何でも人前で何かを披露するハードルが下がって、物おじしなくなりました」。軽妙なトークに会場からは笑い声が起こる。共学の大学で女の子らしさを求められたことには今でも違和感があると明かした上で、こんなエールを送った。

 「『モヤモヤ』みたいな中間の感情も切り捨てずに味わって。なんか乗れないな、と感じるのも青春。色々な経験や感情のバリエーションが心を豊かにしてくれるから」

(ライター・中津海麻子 写真家・桑原英文)


読書会を終えて

 堤詩歩さん(中2)
 「同じ本、同い年なのに、心に残っているシーンがみんな違って驚きました」

 杉原名織さん(高3)
 「好きな作家さんと話せて感激。本好き同士の会話もすごく新鮮でした」

 柚木さん
 「10代の貴重な意見を聞くことができ、楽しめました。若い子にはやりたいことをやって、言いたいことを言ってほしい! その思いを作品に込めて行きます」


柚木麻子さんの本

本屋さんのダイアナ

『本屋さんのダイアナ』   
[出版社] 新潮文庫
[価 格] 680円

ナイルパーチの女子会

『ナイルパーチの女子会』
[出版社] 文芸春秋
[価 格] 1,620円

王妃の帰還

『王妃の帰還』
[出版社] 実業之日本社文庫
[価 格] 600円

ランチのアッコちゃん

『ランチのアッコちゃん』
[出版社] 双葉文庫
[価 格] 580円

幹事のアッコちゃん

『幹事のアッコちゃん』
[出版社] 双葉社
[価 格] 1,296円

 

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