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10代、こんな本に出会った 時代を読む この3冊 キャンパス発 気になる新刊 読書クラブ通信 ひとりごと

 

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10代こんな本に出会った

 

『福翁自伝』 医師・近藤誠さん

医師・近藤誠さん

背伸びして読み、福沢に憧れ

 僕が発信している「がんは切らなくても治る」「抗がん剤はやらない方がいい」といった意見は、専門医から批判を浴び、異端児扱いされることも少なくありません。

 でも「社会を変えよう」とか、そういう風に考えたことはないんです。僕には「あらゆることを知りたい」という欲求があって、国内外の文献に目を通し、気づいたことをみなさんに、知らせたい、と。そういう思いです。

 10代から今にかけて、私を貫いているものは「知識欲」なのかもしれませんね。

 小学校は公立でした。九九も覚えられないような野生児で、父の医院でアルバイトをしていた若い医師が、見かねて家庭教師役をかって出てくれたんです。すると成績が上がって。

 その人が慶応出身で、「慶応に行くと勉強ができてカッコいいぞ」と子ども心に思ったんでしょう。背伸びして読んだのが『福翁自伝』(福沢諭吉著、岩波文庫)でした。

医師・近藤誠さん

 「いい学校だなあ」と憧れて慶応中等部を受験。しかし入学当初は成績不振でコンプレックスの塊でした。

 「人より物を知らない自分」。それが嫌で本を読み始めました。高校時代には専門書から古典文学まで目を通し「もっと知っておかなければ」と、ますます思うようになりました。

 「007」シリーズ(I・フレミング著、井上一夫訳、創元推理文庫)は、医大生のころ見た映画の原作を洋書で読みました。英国の諜報(ちょうほう)部員ジェームズ・ボンドのスパイぶりがカッコよかったし、知らない単語が出てくると僕は「知っておきたい」と思っちゃうんだな。

 今年3月に大学病院を退職しましたが「知りたい」という欲求は変わりません。よくオペラに行くので、イタリア語も覚えたい。海外でベストセラーだと聞けば洋書を取り寄せます。

 1年前からセカンドオピニオン外来を開いており、最新の研究にも通じておきたい。「昨日より知識が増えた」という気分はいいものです。

(ライター・安里麻理子 写真家・吉永考宏)


福翁自伝

新訂 福翁自伝              
福沢 諭吉 (著), 富田 正文 (編さん)
[出版社]岩波文庫
[価 格]1,037円

007/カジノ・ロワイヤル 【新版】

007/カジノ・ロワイヤル 【新版】
イアン・フレミング (著)
[出版社]創元推理文庫
[価 格]756円


おすすめは

 映画を見ると原作を読みたくなるのは昔から。『ミレニアム』(S・ラーソン著、ヘレンハルメ美穂・岩澤雅利・山田美明訳、ハヤカワ・ミステリ文庫・全6巻、864~972円)の主人公はジャーナリストで、タトゥーを入れた女性調査員と組んで、財閥一族の秘密を暴いていく。洋書で読みましたが、組織の不正や性暴力、いろんなテーマが入っていて面白い。

 『かもめのジョナサン』(R・バック著、五木寛之訳、新潮文庫・562円)は、自由でありたい、だけどその実現は難しいと感じた時に。自分らしく生きよう、それが大切だと背中を押してくれます。


ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (上)

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女(上)
スティーグ・ラーソン (著)
[出版社]ハヤカワ・ミステリ文庫
[価 格]864円

かもめのジョナサン

かもめのジョナサン
リチャード・バック (著)
[出版社]新潮文庫
[価 格]562円


 ▼プロフィール
 こんどう・まこと 1948年生まれ。
 専門は放射線治療。乳房温存療法を国内に広めた。『患者よ、がんと闘うな』(文春文庫)ほか著書多数。


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