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10代、こんな本に出会った 時代を読む この3冊 キャンパス発 気になる新刊 読書クラブ通信 ひとりごと

 

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10代こんな本に出会った

 

『たけし! オレの毒ガス半生記』 お笑い芸人・水道橋博士さん

お笑い芸人・水道橋博士さん

弟子入りを決意した「啓示」

 僕には「人間音痴」なところがあって、10代のころは集団になじめない、かといって特別な才能もない、そんな自分に悶々(もんもん)としていました。

 高校1年の時、体調を崩して留年したのも落ちこぼれ感に拍車をかけた。体がよくなっても学校に行かず、映画館に入り浸り、本や雑誌を読みあさって現実逃避。おやじが読書家で、家に本があふれかえっていたから、太宰治やドストエフスキーの毒にやられたっていうのもある。とにかく人を近づけないように、バリアーを張っていましたね。

 ただ、書くことは好きで、小学生のころから日記をつけていたんですよ。映画や本、当時熱中していたプロレスの感想、人間観察なんかを。

 そういうのを雑誌に投稿すると採用されたもんだから、高3のころ『決定版 ルポライター事始』(竹中労著、ちくま文庫・重版未定)を読んで、「俺もルポライターになろう」って思った。「ペンの日雇い労働者」を名乗り、「人は群れるから無力なのだ」と筆一本で社会と闘う竹中さんもカッコよかった。

中学生のころ(本人提供)

中学生のころ(本人提供)

 でも考えてみたら、留年生のひがみで年下の同級生とすら打ち解けられなかった僕に、取材で人と渡り合う仕事なんて無理。再び青春の悶々にのたうちまわっていたある晩、ラジオから『ビートたけしのオールナイトニッポン』が聞こえてきたわけです。

 『たけし! オレの毒ガス半生記』(ビートたけし著、講談社・重版未定)にも書かれているように、たけしさんの姿勢は一貫して「人生に期待するな!」。これは啓示だった。行動しろ、失敗したらネタにして笑えばいいって。

 本や映画は人生の予行演習をさせてくれるけれど、人を行動にまで駆り立てる作品はなかなかない。この本を読んだ僕は、たけしさんを人生の師匠と勝手に仰いで上京。当てもツテもないから、追っかけして弟子入りをもくろんだ。ラジオが終わる明け方、局の出口でひたすら待ったっけ。まともに口をきいてもらえるまで7年かかったかな。

 僕は偉大な師匠を得た半面、自分には芸人としてあそこまでの適性ないなって、苦笑している。その代わりいつか『天才たけし』みたいな本を書けたら本望です。

(ライター・安里麻理子 写真家・吉永考宏)


決定版ルポライター事始

決定版ルポライター事始            ■
竹中 労【著】
[出版社]筑摩書房
[価 格]重版未定

たけし! オレの毒ガス半生記

たけし! オレの毒ガス半生記
ビートたけし
[出版社]講談社
[価 格]重版未定


おすすめは

 時代劇「座頭市」で知られる名優・勝新太郎。『天才 勝新太郎』(春日太一著、文春新書・1015円)は、生前の勝さんに面識がない若い著者が関係者への取材だけでルポルタージュに仕上げた手腕が見事。自ら脚本・監督に手をつけずにいられなかった役者魂のすさまじさが目に浮かぶ。

 世の中のタブーをあらわにする作品で支持される映画監督・園子温(そのしおん)の自伝的エッセー『非道に生きる』(朝日出版社・1015円)には、人生何度でも立ち上がれると教えられた。

 僕も園監督と同じ50代、丸くなっている場合じゃないな!


天才 勝新太郎

天才 勝新太郎              ■
春日 太一【著】
[出版社]文春新書
[価 格]1,015円

非道に生きる

非道に生きる
園子温
[出版社]朝日出版社
[価 格]1,015円


 ▼プロフィール
 すいどうばし・はかせ 1962年、岡山県生まれ。漫才コンビ「浅草キッド」結成後、コメンテーター、文筆業でも活躍。
 著書に『藝人(げいにん)春秋』(文芸春秋)他。


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