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10代の読書 ブックサーフィン
10代、こんな本に出会った 時代を読む この3冊 キャンパス発 気になる新刊 読書クラブ通信 ひとりごと

 

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10代こんな本に出会った

 

『大草原の小さな家』 料理研究家・行正り香さん

料理研究家・行正り香さん

異国料理に導かれた留学

 県立高校に通う私の成績が下から数えたほうが早いことを知った父は、「手に職をつけるのもいいぞ」。身の回り半径5キロ以内で一番の腕になれば、食べていけると。

 電子オルガンの先生をしていた母も同じような考えでしたから、私も卒業したら自立するつもりでした。

 ただ、その前に一度、米国へ行ってみたかった。というのも子どものころ読んだ『大草原の小さな家』シリーズ(L・I・ワイルダー著、こだまともこ・渡辺南都子訳、講談社青い鳥文庫など)が大好き。中でもパイとかスコーンとか、出てくるお料理がすごくおいしそうだった。食いしん坊の私は、絶対に食べてやると思いました。

 大学に行かないかわりに1年間、カリフォルニアの高校に留学させてもらいました。私、英語だけは好きで、小学生のころからNHKラジオの「基礎英語」を続けていたので、ホームステイ先も自分で探して決めたのですが……。

 そこでの私は体のいいお掃除係。食事も期待外れでした。そんな時、遊びに行った先の家の人が、むさぼるようにお菓子を頬張る私を見て「うちにおいで」と言ってくれた。しかも「日本で高校を卒業したら、こっちのコミュニティーカレッジ(2年制の市民大学)に入らないか。週5日家族の夕食を作ってくれれば部屋をただで貸す」と。

19歳のころ(本人提供)

19歳のころ(本人提供)

 19歳で再び渡米。料理の腕はここで磨かれました。そして、カレッジの宿題に『存在の耐えられない軽さ』(M・クンデラ著、千野栄一訳、集英社文庫)が出た時、勉強が好きになった。

 この本はチェコスロバキアの民主化運動「プラハの春」を背景にした恋愛小説です。東欧の歴史ひとつ学ぶにも、そんなふうに本や映像で興味をかきたてて授業に入る。これが私には合っていました。

 すっかり勉強に目覚めた私はカリフォルニア大学バークリー校の3年生に編入。大学院に進む学費を稼ごうと帰国し就職しましたが、留学時代に覚えた料理を同僚や友人にふるまっていたことが、今の仕事につながっています。

 人生、何がチャンスかわかりません。だから素直に流れに乗ってみる。そう思って自分の変化を楽しんでいます。

(ライター・安里麻理子 写真家・吉永考宏)


大草原の小さな家―大草原の小さな家シリーズ (新装版)

大草原の小さな家―         ■
大草原の小さな家シリーズ (新装版)

ワイルダー,ローラ・インガルス【作】
こだま ともこ 渡辺 南都子【訳】
丹地 陽子【絵】
[出版社] 講談社青い鳥文庫
[価 格] 777円

存在の耐えられない軽さ

存在の耐えられない軽さ         ■
M・クンデラ【著】
千野栄一【訳】
[出版社] 集英社文庫
[価 格] 885円


おすすめは

 女帝・西太后の逸話が数々残る中国最後の王朝、清の末期を描いた歴史小説『蒼穹(そうきゅう)の昴(すばる)』(浅田次郎著、全4巻、講談社文庫・各679円)。女性三代の壮絶な人生を通して、中華人民共和国建国の歴史をつづったノンフィクション『ワイルド・スワン』(ユン・チアン著、土屋京子訳、全3巻、講談社文庫・上885円、中下823円)。この2作を読むと、教科書では知りえないアジアの近現代史が見えてきます。

 私は社会人になって中国の人と仕事をする時、参考に読みました。その国の人が背負っているものを少しでも知ると、コミュニケーションが深まりますよ。


蒼穹の昴〈1〉

蒼穹の昴〈1〉            ■
浅田 次郎【著】
[出版社] 講談社文庫
[価 格] 679円

ワイルド・スワン〈上〉

ワイルド・スワン〈上〉
ユン チアン【著】
土屋 京子【訳】
[出版社] 講談社文庫
[価 格] 885円


 ▼プロフィール
 ゆきまさ・りか 1966年、福岡県生まれ。米国留学後、広告会社勤務を経て独立。
 著書に『はじめよう!ひとりごはん生活』(朝日新聞出版)など。


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