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【他者との共存を探ろう】 本田由紀

本田由紀

 第2次世界大戦が終わって今年で70年になります。日本は明らかな敗戦国であり、その後、極東に軍事基地を必要としたアメリカの庇護(ひご)によって、自身の戦争責任を自ら厳しく問うことなく、冷戦構造の中で経済成長に邁進(まいしん)してきました。しかしその経済成長もまた頓挫して20年が経過し、この国は迷子のような状態にあります。

 迷子の不安の中で、無理に「強い自分」を装おうとして、負ける前の過去を美化して呼び起こそうとする動きや、再び武力を行使できる国になろうとする動きが、急激に進められています。その姿は「さあ、これで、わたしたちの国は、戦争できる国になりました。政府が戦争すると決めたら、あなたは、国のために命を捨てることができます。……戦争で人を殺すこともできます」(りぼん・ぷろじぇくと『新・戦争のつくりかた』マガジンハウス)といわんばかりです。

 しかし、そうした動きは、周囲の国や広く世界中からの敵意や不信をかき立て、今迷いながらも私たちが立っている場所自体を掘り崩すでしょう。そう感じて、逆の方向にむかって行動している人たちは、この国の中にもたくさんいます。たとえば、室田元美『いま、話したいこと~東アジアの若者たちの歴史対話と交流~』(子どもの未来社)は、近隣国との草の根的な国際交流の営みを、いくつも紹介しています。異なる国から参加した若者たちが、時に意見の不一致を見ながらも、互いの過去と現在を共有してゆく。そうした地味で誠実な営み以外に、私たちの選ぶ道はないのではないか。

 「許す。けれど決して忘れない」。これは、シエラレオネの内紛で、子ども兵士に耳も手足もそぎ落とされた男性が、悲痛の末に発した言葉です(後藤健二『ダイヤモンドより平和がほしい』汐文社)。私たちが、せめて「忘れないが許す」と言ってもらえる国になるには、外に向けても内に向けても、他者と共存するあり方を正してゆく努力がもっともっと必要です。

 この欄は今日で終わりです。これまで読んでくださってありがとうございました。

(東京大学教授〈教育社会学〉)


新・戦争のつくりかた

新・戦争のつくりかた      
りぼん・ぷろじぇくと【文】
井上 ヤスミチ【絵】
りぼん山本【原案・監修】
[出版社] マガジンハウス
[価 格] 1,080円

いま、話したいこと―東アジアの若者たちの歴史対話と交流

いま、話したいこと
―東アジアの若者たちの歴史対話と交流

室田 元美【著】
[出版社] 子どもの未来社
[価 格] 864円

ダイヤモンドより平和がほしい

ダイヤモンドより平和がほしい
後藤 健二【著】
[出版社] 汐文社
[価 格] 1,404円

 

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