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【戦争、100年前と未来と】 佐藤優

佐藤優

 人間によってなされる最も悲惨で残酷な行為が戦争です。19世紀に科学技術が飛躍的に発展した結果、大量殺戮(さつりく)、大量破壊が可能になったことを100年前に勃発した第1次世界大戦が示しました。

 1914年6月28日、オーストリア・ハンガリー帝国の皇太子夫妻がセルビア人青年のグループによって暗殺されました。当初、この事件が大戦争に発展するとは考えられていませんでしたが、国際関係の複雑な絡み合いが同年8月から18年11月までの大規模戦争の原因になったことを別宮暖朗氏は『第一次世界大戦はなぜ始まったのか』(文春新書)で詳しく説明しています。「機関銃の組織的運用、毒ガスや戦車などの新兵器によって戦場は酸鼻をきわめた。(中略)負傷者は二一〇〇万人に達し、多くの若い命が失われた。そしてルネサンス以来、世界文明を主導してきたと自負するヨーロッパ文明の啓蒙(けいもう)精神、ヒューマニズムにたいする疑念が生じた。その疑念のなかから独裁者ヒトラーが生まれる」。このヒトラーが第2次世界大戦を引き起こすのです。

 第2次世界大戦については多くの本が出ています。米軍のIntelligence Bulletin(情報公報)を分析した一ノ瀬俊也『日本軍と日本兵』(講談社現代新書)では「日本兵たちの多くは『ファナティック』な『超人』などではなく、アメリカ文化が好きで、中には怠け者もいて、宣伝の工夫次第では投降させることもできるごく平凡な人々である」という見方が記されています。「ごく普通の人々」が良心の呵責(かしゃく)を覚えずに殺戮と破壊に従事するのが戦争の恐ろしさです。

 未来の戦争では、インターネットを使ったサイバー兵器が重要な役割を果たします。自衛隊でサイバー戦の専門家だった伊東寛氏は『「第5の戦場」サイバー戦の脅威』(祥伝社新書)で「サイバー戦の時代は、誰もが自分の意思で勝手に戦争に参加できる――。(中略)個人であっても国家に戦いを挑める時代がやってきた」と強調します。個人が仕掛ける「戦争」をどう阻止するかを真面目に考えなくてはなりません。

(作家・元外務省主任分析官)


第一次世界大戦はなぜ始まったのか

第一次世界大戦はなぜ始まったのか   ■
別宮 暖朗【著】
[出版社]文春新書
[価 格]842円

日本軍と日本兵―米軍報告書は語る

日本軍と日本兵―米軍報告書は語る
一ノ瀬 俊也【著】
[出版社]講談社現代新書
[価 格]864円


身体巡礼「ドイツ・オーストリア・チェコ編」

「第5の戦場」サイバー戦の脅威
伊東 寛【著】
[出版社]祥伝社新書
[価 格]842円


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