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10代、こんな本に出会った 時代を読む この3冊 キャンパス発 気になる新刊 読書クラブ通信 ひとりごと

 

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時代を読むこの3冊

【ヒトと生物、切れぬ関係】 池田清彦

池田清彦

 人間は他の生物たちと切っても切れない関係の中で生きている。人間の食べ物はほとんど生物であることから考えても、その恩恵は計り知れないが、一方で害をなすものも多い。さらには人間の文化に生物は大きな関わりを持っている。

 北元憲利『のぞいてみようウイルス・細菌・真菌図鑑(1)小さくてふしぎなウイルスのひみつ』(ミネルヴァ書房)は昨今、ちまたを騒がせているエボラ出血熱やデング熱の病原体であるウイルスについて解説したイラスト満載の図鑑である。

 ウイルスの構造から宿主への取り付き方、人類とウイルスの戦いの歴史、人体がウイルスを撃退する方法まで丁寧に説明してあって、児童・生徒のみならず大人でも十分読み応えがある。ウイルスにはDNAタイプばかりでなくRNAタイプもあって、ヒトを殺すウイルスの大半はRNAウイルスであることがわかる。

 根田仁『きのこミュージアム 森と菌との関係から文化史・食毒まで』(八坂書房)は、単にきのこの種類の解説にとどまらず、きのこにまつわるさまざまな話題を網羅した、きのこエンサイクロペディア(百科事典)とでも呼べそうな本である。オニフスベや冬虫夏草といった珍しいきのこの話から、森ときのこの共生関係、野生のきのこの食毒は実は複雑で、素人はむやみに食べない方がよいといった生死に関わる話まで、これ一冊読めばいっぱしのきのこ通になれる。特に面白かったのはきのこの名前の話で、きのこに情熱を傾けた先人たちの研究史とも読める。

 最後に紹介するのは三橋淳・小西正泰編『文化昆虫学事始め』(創森社)。文化昆虫学とはまた聞き慣れないコトバだが、虫にまつわる民俗誌、食文化、美術工芸品、文学、切手、音楽、アニメなど、およそ虫と人間のかかわりのすべてで、本書を読めば虫がいかに深く人々の生活に根付いているかがわかる。口絵には世界各地の昆虫食の写真と共に、カマキリのオブジェの写真が載っていて実にかわいい。虫嫌いな人が増えている日本だが、本書を読んで身近な虫たちを見通してみたらどうかしら。

 (早稲田大学教授〈生物学〉)


ウイルス・細菌・真菌図鑑〈1〉小さくてふしぎなウイルスのひみつ

ウイルス・細菌・真菌図鑑〈1〉
小さくてふしぎなウイルスのひみつ   ■

北元 憲利【著】
[出版社] ミネルヴァ書房
[価 格] 3,024円

きのこミュージアム―森と菌との関係から文化史・食毒まで

きのこミュージアム
―森と菌との関係から文化史・食毒まで

根田 仁【著】
[出版社] 八坂書房房
[価 格] 1,944円


文化昆虫学事始め

文化昆虫学事始め
三橋 淳 小西 正泰【編】
[出版社] 創森社
[価 格] 1,944円


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