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10代、こんな本に出会った 時代を読む この3冊 キャンパス発 気になる新刊 読書クラブ通信 ひとりごと

 

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時代を読むこの3冊

【憎悪の連鎖、絶つために】 津田大介

津田大介

 イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)による日本人人質事件は捕らえられていた2人が殺害される最悪の結末を迎えました。ISは人質をためらいなく殺害するだけでなく、その様子を映像に収めてネットで全世界に発信する残忍なテロリスト集団です。しかし、世界各国で彼らの主張に同調し、参加する若者が後を絶ちません。ニュース番組を見ていてもISのえたいの知れなさを理解することは不可能でしょう。理解するにはまず彼らの行動原理や、彼らが台頭してきた背景を知る必要があります。

 『池上彰が読む「イスラム」世界』(角川マガジンズ)は、イスラム教の成り立ちから、中東の歴史的な混乱の経緯や現在のイスラム社会が置かれている状況まで網羅的に解説した入門書です。現代のイスラム世界を語る上で必須となるキーワードを学ぶことができます。

 一通り同書に目を通した後に読み進めたいのが池内恵さんの『イスラーム国の衝撃』(文春新書)です。ISが急速に勢力を拡大した背景にある思想的要因(ジハード主義思想の世界的拡大)と、政治的要因(アラブの春による政変と選挙による宗教政党の伸長)を丁寧に解きほぐしたこの本は、現在進行形のイスラム問題を知る応用編とも言える内容。この2冊をじっくり読めば「テロに屈しない」などと勇ましく言うだけでは全く解決しない、ややこしい「現実」が見えてきます。

 両書とセットで読みたいのが紛争解決の専門家・伊勢﨑賢治さんの『日本人は人を殺しに行くのか』(朝日新書)です。本書もまた紛争地の一筋縄ではいかない現実を教えてくれる本です。伊勢﨑さんは核兵器を超える真の「大量破壊兵器」とは政治的意図を持った宣伝――プロパガンダによって作られる人々の「熱狂」であると指摘します。

 現代の世界は皆さんが想像している以上に複雑です。そして私たちが真に戦わなければいけない敵は虐殺を誘発する「プロパガンダ」や「熱狂」なのです。憎悪の連鎖を断ち切るためにできることは何か。まずは厄介な「現実」を知ることから始めませんか。

(ジャーナリスト)

池上彰が読む「イスラム」世界

池上彰が読む「イスラム」世界      
池上 彰【著】
[出版社] KADOKAWA
[価 格] 1,609円

イスラーム国の衝撃

イスラーム国の衝撃
池内 恵【著】
[出版社] 文春新書
[価 格] 842円

日本人は人を殺しに行くのか

日本人は人を殺しに行くのか
伊勢崎 賢治【著】
[出版社] 朝日新書
[価 格] 842円

 
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