どくしょ応援団

本を読もう。何を読もう? 迷ったら「どくしょ応援団」へ。親子で、ひとりで、夢中になれる本との出会いがここに!

読みきかせ応援団

細谷亮太さん+紺野美沙子さんの絵本トーク

 秋の夜長。親子一緒に本を読む楽しさを満喫しましょう。小児科医として長年、病気の子やその家族と深くかかわってきた細谷亮太さんと、子育てをつづったエッセー集もある女優の紺野美沙子さんが、絵本を仲立ちにしてはぐくむ子どもとの関係を語り合います。(司会=大平佐知子)

紺野美沙子さん細谷亮太さん

親と子、絵本とともに育ついい関係

紺野美沙子さん 「同じ本でもいやがらず」

細谷亮太さん 「絵本の力は時を超える」


――0歳の子に地方自治体が絵本を贈る「ブックスタート」の本の選考委員ですね。

細谷 お母さんになりたては、赤ちゃんに何を話しかけたらいいか戸惑ったりします。そんなとき絵本はありがたい存在になる。『くだもの』はスイカを丸ごと描いた次のページに、ほら、皿に盛ったおいしそうな一切れと「さあ、どうぞ」の文字。次々果物が登場して15秒で読めちゃうのを、「スイカって重いのよ」「甘そうね」と語りかけ、20分かけられるようになったら、親として一人前です。

紺野 そういえば、いま中学1年の息子に絵本を読んだのは生後3カ月のときからでした。

細谷 赤ちゃんの目はあまり見えてなくて、小学校に入る頃やっと大人と同じになる。でも耳は、生まれた瞬間がいちばん聴力が優れている。話しかけ、本を読めば、微妙な音の違いまで聞き分けているんですよ。

紺野 生まれた瞬間から、ですか。実は、勝手に「おっぱい飲み飲みソング」をつくって息子に歌っていたんですけど、それで音感が鈍くなることは……

細谷 いやいや、それはありません。日本語のつながりが音として入るのが大事なんです。そうして日本語ができあがっていくんでしょう。テレビでは目が忙しすぎて、耳から言葉が入りにくいかもしれませんね。

紺野 個人差があるでしょうが、息子は2歳ごろから言葉が泉のごとくわき出した。「この言葉は何?」と聞いたり、初めての言葉を使ってみたり。幼稚園は3年間、一緒に歩いて通いまして、クモの巣に水滴がきらきら輝くのを見て、「きれいだね」「レース編みみたいね」とか、いろんな話をしました。

細谷 お母さんと同じものを見ながら子どもは育つ。絵本を読むのも同じですね。

紺野 虫大好きの息子は、絵本にあまり興味がなくて。先輩ママに「子どもの好きなものが出てくる本から始めたら」と助言され、いわむらかずおさんの「14匹」シリーズ(童心社)を読んだら、ネズミやテントウムシやチョウ、森の生き物がたくさん出てくるので大喜び。「ここにカエルさんがいるね」「鳥さんは何をしてるのかな?」って何度も何度も楽しみました。

細谷 赤ちゃんも、「これ」って本のなかの絵を指さし、お母さんの顔を振り返るようになる。「ほんとうね、てんとうむしさんね」って答えてもらうのがうれしいんです。

紺野 でも、いつも同じ本をせがまれると閉口します。忙しいときに限ってだし。「たまには違うのを持ってきなさい!」って言いたくなりました。

細谷 子どもは何回読んでも同じ本の同じところで、笑ったり喜んだりする。楽しい、悲しいといった感情をすごく敏感に感じるアンテナが子どもにはあって、あまりにデリケートだから、それを片づけてひとは大人になるが、子どもは、大好きな絵本を大好きなお母さんに読んでもらううれしさを、繰り返し味わって幸せなのでしょう。

紺野 育児真っ最中のお母さんには、私も「子どもと絵本を読める時期は短い。同じ本でもいやな顔をせず読んであげて」って話してます(笑)。

――細谷さんは、病気の子やその家族と話すとき、絵本を読むことがあるとか。

対談の様子

細谷 いよいよ、となった子の幼いきょうだいに、「戻れないところに行ってしまうこと」を話さなくちゃいけないとき、『わすれられないおくりもの』を読みます。年老いたアナグマが亡くなったあと、森の仲間にのこしてくれたものがあったという深いお話ですが、子どもの心にいちばん響くのは意外にも、天国へと続くトンネルを、アナグマがつえを捨て、若い頃のように駆け抜けていく場面。

紺野 あら。

細谷 亡くなるときは苦しくない、天国では元気いっぱいに過ごせるというメッセージが、あの子たちの心をどれほど救ったことかと気づいて、驚きました。優れた絵本、優れた芸術作品は、いちばんのテーマとは別の、時には作者のもくろみさえ超えたところで、ものすごい力を発揮することがある。作者が創作の過程で、考えに考え抜いているからだと思いますが。

紺野 どのページでも立ち止まれる絵本だからこそ、アナグマさんはどうしたのかな、と親子で話し合えますね。こういう想像力って、大人にも必要。役者としていろんな人を表現するときも、いろんな国、時代でどんなふうだったのか想像する。人生も、豊かに生きるには想像力が大切だと思うんです。

細谷 何かを伝えるために絵本を使うというと不純に聞こえるかもしれませんが、絵本の力はこちらよりずっと強い。『くだもの』のスイカは本物よりおいしそうだし、『しろくまちゃんのほっとけーき』には、親子で一緒にホットケーキを焼く幸せ感が満ちている。

対談の様子

紺野 うちでも子どもが小さい頃、「ぴちぴちぴち」「まあだまだ」と『しろくまちゃん』の言葉を一緒に口ずさみながら、ホットケーキを焼きました。思い出の一冊です。

細谷 絵本の力は時間を超えます。子どもにお気に入りの絵本をつくってあげられたら、何年たっても、お気に入りのフレーズがふと口をついて出てくる。わが子が幼かった日の感覚がいっぺんに戻ってくる。親にとっても大切な本になります。

――小学生になっても、親子一緒に本を読めるといいですね。

紺野 息子が小学生の頃、落語にちょっと関心を持った時期があって、「きみにもなれる落語の達人」を読んだら、「落語のおもしろさを伝えたい」という思いがあふれていた。この本を親子で読んで、一緒に寄席に行くのはどうでしょう。ほんとうは、子どもには外に出て遊んでほしいのですが、雨の日や夜寝る前に親子で本を読み、そこから体験を広げるのは楽しいんじゃないかな。『ダンゴムシ』を読んで「明日、探しに行こうか」とか。

細谷 自然の音しかないところで人と人が触れあう大切さは、U・シュルヴィッツ『よあけ』(福音館書店)を読んでも感じます。思い切ってテレビを消し、本を読む日を、ぜひ作ってください。

(構成・中津海麻子 写真・吉永考宏)

ほそや・りょうた 小児科医 48年山形県生まれ。聖路加国際病院副院長・小児科部長。病気の子やその周りの子の気持ちを描いた絵本『おにいちゃんがいてよかった』、訳書『チャーリー・ブラウン なぜなんだい?』(いずれも岩崎書店)などがある。
こんの・みさこ 女優 東京都生まれ。80年、NHK連続テレビ小説「虹を織る」に主演。テレビ・映画・舞台などで活躍する傍ら、98年から国連開発計画親善大使。アジアやアフリカでの経験をつづった『ラララ親善大使』(小学館)が好評。
■細谷亮太さんおすすめの本
『くだもの』
著者:
若山憲
出版社:
こぐま社
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『しろくまちゃんのほっとけーき』
著者:
若山憲
出版社:
こぐま社
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『はいいろねずみのフレイシェ』
作:
A・デ・フリース
絵:
W・ミン
訳:
野坂悦子
出版社:
文渓堂
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『てん』
作:
P・レイノルズ
訳:
谷川俊太郎
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あすなろ書房
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『わすれられないおくりもの』
作:
S・バーレイ
訳:
小川仁央
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評論社
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■紺野美沙子さんおすすめの本
『ダンゴムシ』
著者:
今森光彦
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「きみにもなれる 落語の達人」シリーズ全5巻
著者:
桂文我
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「ピーマン村の絵本たち」シリーズ全12巻
文:
中川ひろたか
絵:
村上康成
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童心社
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『ぞうのエルマー』
著者:
D・マッキー
訳:
きたむらさとし
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BL出版
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『しろくまちゃんのほっとけーき』
著者:
若山憲
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