ともに考え、ともにつくる インタビュー(コニカミノルタ 山名昌衛社長)
はじめに

 さまざまな分野で活躍する方を渡辺雅隆社長が訪ねる連載「ともに考え、ともにつくる インタビュー」の第17回は、コニカミノルタの山名昌衛社長にご登場いただきます。コニカミノルタは情報機器事業やヘルスケア事業などを展開し、朝日新聞社が進めるがんとの共生社会を目指す取り組み「ネクストリボン」事業でもご支援いただいています。


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【ともに考え、ともにつくる インタビュー】
技術で課題解決、商品を通じて働きがいを提供
( コニカミノルタ・山名昌衛社長×朝日新聞社・渡辺雅隆社長 )


▼ コニカミノルタ・山名昌衛社長 のプロフィールはこちら

 

業務の本質を見抜いて、賢く働き方を変えていくことが大切

コニカミノルタ・山名昌衛社長

渡辺雅隆社長(以下、渡辺)  コロナの感染拡大の影響で、働き方もだいぶ変わりました。コニカミノルタは在宅勤務に積極的に取り組んできています。


山名昌衛社長(以下、山名)  オフィスに複合機などの情報機器を提供しているのですが、単に機器を提供するだけではなく、働く方へのスマートワーク環境の提供を進めていかなければならないという思いがありました。そのために、まずは社内で実践をしっかりとやらなくてはならないということで、以前からリモートワークの環境整備に取り組んでいました。ですから、4月に緊急事態宣言が出てからも、在宅勤務への移行はスムーズでした。ただ、大切なことは在宅率やテレワークのIT化ではなく、業務そのものが、本当に必要なものかを考えることです。コロナ禍を経て、業務面での無駄というものが見えてきた。リモートワークは無駄を排除し、業務の生産性を徹底的に上げて、新しい価値をつくるように振り向けていくことが大事です。


渡辺  実際に在宅勤務をしてみて、思っていた以上にできると感じる一方、雑談の時間はやはり少なくなる。新人記者のころ、「目的の取材後、数分の雑談してこい」と言われた。確かにその雑談の時間に刺激的な何かがある。その辺りについてはどのようにお考えですか。


山名  人間の五感を刺激しあって、現場の感覚や意見をぶつけ合う。イノベーションを作るには、多様な人材が対面で情感を持つことが大切です。テレワークを活用する一方、テレビ会議が向かないような業務の場合には出社するなど、業務の本質を見抜いて、賢く、働き方を変えていくことが大切だと捉えています。


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いまこそ、思い切った仕事のデジタル化や業務変革が必要

朝日新聞社・渡辺雅隆社長

渡辺  コロナ禍の中、早い段階で、顧客企業への支援に取り組まれましたね。


山名  中小企業や中堅企業は、テレワークやクラウドなどお困りのことが多い。うれしいことに、無償であってもデジタル支援を寄り添ってやろうという活動が現場から起こりました。
 地方自治体からも、多くのコロナ対策のニーズがありました。神戸市や札幌市などと連携協定を結び、開発エンジニアが、自治体に入って全部の業務のフロー解析をしています。行政の中で、市民と最も近いのは、地方自治体です。デジタルで支援しながら、市民の生活を支えるというのが大切だと思います。行政に携わっている人たちは普段から忙しい上に、いまはコロナがある。こういう時こそ、思い切って仕事のデジタル化や業務変革が必要です。


渡辺  市民に向かい合って仕事することは大切ですね。


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医療、介護従事者へのデジタル支援に注力

山名  ほかに力を入れているのは、医療、介護の従事者へのデジタル支援です。介護のケースでは、延べ50人の技術者が3カ月間、泊まり込んで、何の業務に何分かかっているか業務解析をしました。行動分析センサーなどを使ったケアサポートソリューションを使うと、介護の業務が3割以上も削減できます。


渡辺  地方自治体へのアプローチと同じく、業務を解析して課題を解決することで、生活をより豊かにしようということですね。


山名  弊社は技術者が非常に多いメーカーです。技術者には「ものを作りたい」という考えが定着しています。介護や高齢者の問題となると、高齢者にたくさんセンサーを付けるという仕事をしたがります。しかし、施設に入りたい高齢者の方がたくさんいて、施設などの箱ができても、働く人がもたない。日本では3年も経ったら、約34万人の介護士不足になると言われています。そちらを解決しないといけない。机上ではなくて、現場に入り込んで考える。結果的に、夜間巡回等に充てていた時間が短くなれば、その時間で高齢者に寄り添った介護ができる。高齢者の行動解析もデータベースでできるので、自立支援をして在宅に戻るという本来の目的に沿った技を使う。行政も同じです。クオリティーサービスをしたいと思っている職員のために仕事をする。何のために事業をするのかが共通した考えだと思います。


社内案内抜粋


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バリューにしてイノベーションを起こす

渡辺  御社は140年以上、技術によって、ものを作り売ってきました。技術を使って課題解決していくという考え方に切り替えていくには、働いている人たちの意識が変わらないと進みません。課題の本質を見極める力を付けることは難しいですよね。どのように培っていますか。


山名  アッセンブルして商品化するというプロセスをしていては、スペックの競争になる。「ものを買いたい」というのではなくて、「ものを通じて、新たにやりたいサービス」に変えていく。10年、年、20年先、新興国の企業の技術が追いついてくると、「もの」としての商品にこだわっていては駄目です。商品を通じた働きがいを提供することに貢献したいと思います。
  カメラ・写真事業からは撤退しましたが、材料や光学などの技術はあります。技術を磨き続けてシステムをつくることが、継続になると思います。技術者がテクノロジーでイノベーションを起こすのではなくて、バリューにしてイノベーションを起こす。バリューにしなかったら、意味がありません。


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高齢者の睡眠状況をスマホで確認、排泄(はいせつ)のタイミングまでわかる

渡辺  がんとの共生社会を目指す取り組み「ネクストリボン」事業でご支援いただいています。職場での健康診断について、山名社長は「社員の方が再検査になっても行かない、検診が必要なんだけど行かない」とおっしゃっていました。


ネクストリボンロゴ

朝日新聞の「ネクストリボン」のロゴ。「ネクストリボン」はがんとともに生きる社会づくりに取り組む段階にきたということと、がんになっても次の人生があるという思いで名付けました。互いに支え合い、みんなが幸せになれる一つの社会に、という願いを込めて、それぞれ色の違うリボンで、四つ葉のクローバーのマークを作りました。


山名  予防、早期発見、早期診断は社員に対しても大切ですが、事業としても大切です。当社は大型の診断装置や薬はつくっていません。かかりつけ医療や地方の中核の病院で早期診断の機能を高度化していく事業を手がけています。大きい病院に行く手前のところで、技術をいかしていきたいと思います。
 例えば、乳がんでも、遺伝子でその属性を調べる。そうすれば、その人に合った投薬をすることができ、投薬で副作用に苦しんだり、医療費が高騰したりすることを防げます。早期に高度な診断をして、個人にあった治療法や生活のあり方を提言する。ヘルスケアにもいろんな社会課題があります。どういう課題を解決する会社になるのかを考えていかなければなりません。


渡辺  エッセンシャルワーカーは「価値ある仕事」と言いつつ、実態は大変。働く人たちの我慢で成り立っているのであれば、あまりにも酷です。そういう仕事をする人は少なくなっている。そこをどうやって埋めていくかが課題です。


山名  高齢者の睡眠の状況をスマホで見て、わかるようなシステムを作りました。ドップラーセンサーで呼吸の動きを把握できます。データや映像を活用すれば、効率よく介護ができるようになります。画像やデータから、関節の動きで転倒しそうだというのが、リアルタイムでスマホでわかります。排泄のタイミングもわかるんです。データを活用して介護に生かす「ケアディレクター」の育成に取り組んでいます。「介護福祉士の資格を取って一緒にやります」と手を挙げてくれる社員もいます。SDGsなどで会社とともに成長したい、社会の課題に取り組みたいという人たちが世代とともに増えていると感じています。真剣度もあがっていると思います。


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「ひとごと」と捉えずに事業を回していくために

渡辺  若い人たちは社会の課題に対して、一生懸命です。やりがいや、何を実現するのかに関心がある。若い人たちの力を社内で発揮することが大事です。


山名  7年前に、ビジネスイノベーションセンターを設立しました。世界のマーケットに近いところで、5カ所のセンターを作りました。弊社の経験がない従業員全員が、顧客の課題は何か、どんな問題があるかを考え、良いものを組み合わせて素早く動く。技術を温めながら、事業計画を作り、いくら投資して、いくら稼ぐのかという議論が続く日本の製造業の典型をやっていると、世界のペースに間に合わない。外部の人たちの力と、どのようにコラボするのか。自分たちが力をつけなければ、コニカミノルタの本体が沈んでしまいます。若い社員もどんどん、海外に行き、どのように事業化するのかを考えて持ち帰ってもらうようにしています。


渡辺  外の人たちが来て、事業を回していくということを「ひとごと」と捉えず、本体にどのように組み込むかということですね。


山名  抵抗勢力となる人たちもいます。そういう人たちを教育しても間に合いません。だから、30代に経験させて、「ボトムアップでやっていいよ」と背中を押す。若い世代が躍起になって動くようにならないといけません。若手が動いて事業を進めるにあたっては、ベテランに「君たちの時代は終わった」と言ったところで、物事は進みません。ベテランにコーチングの役割をお願いし「経験から来る気づきが大切だ」と、そんなふうに進めています。


コロナ感染防止のためマスクを着用したまま、インタビューが進められた

コロナ感染防止のためマスクを着用したまま、インタビューが進められた


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「チーム力を大切にして働けるアスリートになれ」

渡辺  世界に根を張った企業です。ダイバーシティーも意識していますね。


山名  社員4万人のうち、日本人は1万人ちょっとで、グローバル社員が3万人を超えます。海外では性別はあまり関係ありませんし、多様な国籍の人が働いています。価値観が違う人間が戦略を議論して、現場を知って、初めて価値になると思っています。また、個人が輝いている必要があります。女性の管理職が何%というのを目指すだけではなく、「個を輝かせてほしい。最終的に、自分が何をしたいかですよ」と言っています。
 当社に「ビジネスアスリート」という概念があります。世界で通用する仕事をするということです。そして、「チーム力を大切にして働けるアスリートになれ」と言っています。課題解決は一社だけではできず、ほかの企業とともに取り組む時代。他との違いを指摘していても仕方ない。違いを認め合って事業を進めていく必要があります。


渡辺  会社が一方的にテーマを与えると、社員は、その答えばかりを求めがちです。そうするとイノベーションは生まれません。言われたことをそつなくやるのではなく、自分で動き回っていくような人を育成したいし、そのような潜在的な力を持っている人材を採用したいと思っています。どのようにしていますか。


山名  会社がテーマを与えるというやり方は違うと感じています。「どういう課題を解決したいか」と社員に問うと、その思いを言葉にできない人もいる。大きな企業に入って、5年、10年と歯車的に仕事をしていると、社会に対する関心や、不条理に対する憤りが少なくなります。結局、自分で考えてもらうしかないと思っています。
 Transform Award(トランスフォームアワード)という取り組みを4年くらい続けています。自分で考えて課題を挙げて行動し、結果を出してもらいます。世界各国から280のテーマが出てきます。外部の人や役員らが審査し、ファイナルステージまで残った約10チームを東京に呼んで、1日かけてプレゼンをしてもらいます。そのようなことを繰り返していけば、仕事が自分事化します。


渡辺  繰り返すことによって、会社が求める人材がどういう人なのかが伝わるんですね。


山名  もう一つ、力を入れているのがデザインシンキングで、専門部署を作っています。技術系が多いのでロジカルには考えるが、人間起点に考えるのが弱い部分があります。介護も、専門部署が入ってブランディングをしました。当初、「ケアサポートソリューション」だったのを「HitomeQ(ひとめく)」にしました。Qはクオリティー・オブ・ライフを意識させるものです。


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プラネタリウムで8K画像やコンピューターグラフィックに取り組む

渡辺  有楽町マリオンにプラネタリウムがありますね。面白い仕掛けだと思います。最新の技術を活用し、お客さんの顔を見ることもできます。


コニカミノルタが運営するプラネタリウム=コニカミノルタ提供

コニカミノルタが運営するプラネタリウム=コニカミノルタ提供


山名  ミノルタの創業から「子どもたちのためにプラネタリウムをやりたい」との思いで、光学プロジェクターやドーム設計をしてきました。けれど、科学振興でのプラネタリウムでは事業が成長しない。コニカとミノルタ両社が統合する際に、プラネタリウムを続けるのであれば、どのように意義づけするかという議論がありました。プラネタリウムは技術が変わると、星空だけではない新しい癒やしになりました。変化があるのなら運営していこうと続けてきました。地方のプラネタリウムにコンテンツを配信したり、8K画像やLEDで新しいコンピューターグラフィックにも取り組んだりしています。アロマも出るんですよ。地方の子どもたちが、臨場感あふれる画像をリアルタイムで楽しむことが技術的に可能です。


プラネタリウムでは臨場感あふれる画像を楽しむことができる=コニカミノルタ提供

プラネタリウムでは臨場感あふれる画像を楽しむことができる=コニカミノルタ提供


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情報をインテリジェンス化するのがメディアの使命

渡辺  最後に、メディア業界に対して、ご意見があれば伺いたいと思います。


山名  ジャーナリズムは国民の知識の成熟度に関わると思います。情報を知恵化、インテリジェンス化するのがメディアの使命です。ニュースを俯瞰できるのは、やはり紙の新聞です。読者は自分の関心やテーマがありますが、そのテーマを引きずりながら、ちょっと違う情報を読む。そこに価値があると思います。
 一方で、発信側の根底にあるテーマを大切にしてほしいと思います。それぞれの新聞社の個性や特徴をいかしていってほしい。人間の豊かさを起点に発信していくという新聞の特徴が際立てば、国民それぞれの関心の枠を超えて、成熟していくことへの貢献が大きくなると思います。


コニカミノルタ・山名昌衛社長×朝日新聞社・渡辺雅隆社長


渡辺  関心がある記事の脇にある記事にも、自然と目に入る。散歩をしていたら、ふと良いお店を見つけるのと同じ発見があります。社会課題の解決に役に立ちたいと思って発信していますが、何を記事として選ぶのかという力を磨いていかなければならないと思います。コロナ禍で改めてさまざまな課題が顕在化しました。それを解決していかないと豊かになりません。それぞれの企業が持っている力を発揮していく必要がありますね。

(このインタビューは2020年9月3日に行われました)


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プロフィール

山名昌衛(やまな・しょうえい)氏 山名昌衛(やまな・しょうえい)氏 プロフィール
 やまな・しょうえい
 1954年生まれ。77年ミノルタカメラ(のちのミノルタ)に入社。2002年、企画本部経営企画部長と情報機器事業統括本部副本部長を兼任し、コニカとミノルタの経営統合推進の一翼を担った。03年の経営統合以降は、常務執行役として経営戦略を担当、06年には取締役兼務常務執行役には取締役兼務常務執行役。13年、取締役兼務専務執行役、14年、代表執行役社長に就任。



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コニカミノルタ

 1873年、「小西屋六兵衛店」で写真、石版材料の取り扱いを開始(のちのコニカ株式会社の創業)。1928年、「日独写真機商店」(のちのミノルタ株式会社)が創業し、国産カメラの製造に着手。2003年、経営統合し、「コニカミノルタホールディングス株式会社」が誕生。ITサービスを含めた情報機器事業やヘルスケア事業などを手がける一方、業容転換加速に向け画像IoT/AI活用で新たな事業の柱を作る。13年、社名を「コニカミノルタ株式会社」に変更。グループ会社拠点は50カ国、連結従業員数は約4万4千人(20年3月現在)。


 

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