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JSEC2014 優等賞


【動物科学】

 直径が0.1mm程の大きさで、わずかな衝撃でも変形するトビムシの卵を用いて発生の観察を行いました。標本を作る際に封入液としてミシン油を用いたところ、長時間にわたって卵が変形せずに発生の過程が観察できました。試料に用いた卵(folsomia candida)は8細胞期までは等割、64細胞期までは不等割をした後に表割へ移行し、早期に触角・脚部・跳躍器等の原基完成に至ります。その後、活発な胚運動により頭部と尾部が接近し、背側が閉鎖して一般的な虫の形態となります。また、爪・PAO等が遅れて形成され、特に口器の形成には長い時間を要することが分かりました。以上の過程を経て産卵後約192時間で孵化し、途中、卵の体積は31〜50時間後で最も顕著な増加が見られました。


【化学】

 燃料電池の反応を起こすためには現在、白金がどうしても必要です。しかし白金はとても希少で高価です。私たちはこれにパラジウムを混ぜることによって、白金の量を1/50に減らせる効果があることを発見しました。またパラジウム・白金の混合物は燃料電池だけでなく、ほかの多くの化学反応を促進する働きがあることも発見しました。なぜそんな働きがあるのかを調べるために、表面の電手の状態を調べたところ、混合によって白金の電子のエネルギーが混合前より大きくなっていること、また電子顕微鏡観察により、混合した方が表面積も大きくなることが分かりました。
 これらの発見は燃料電池の実用化と、これからの化学反応の研究に貢献する可能性があると私たちは考えています。


【化学】

 普段飲む緑茶の茶葉を使って布を緑色に染める研究を行いました。様々な条件を変えることで茶やオレンジなどの黄・赤系の色から黄緑や深緑まで幅広い色調に染めることができます。どのような条件下でどんな色に染まるのかを調べてまとめました。
 研究当初は黄・茶系の地味な色ばかりでしたが、だんだん傾向がつかめてきて、ほぼ思い通りの色に染まってきました。染色の面では色々と分かってきましたが、抽出の段階において調べきっていないため、抽出時にどれだけクロロフィルを多く、カテキン類を少なく抽出できるかに今後挑戦していきたいと思っています。


 【化学】

 陽極に白金電極を用いて硝酸銀水溶液の電気分解を行うと、針状結晶の陽極析出物が得られます。この析出物は、X線回折から銀過酸化物 Ag 23 の結晶構造であることが先行研究で分かっていますが、本研究ではその生成メカニズムの解明を目指しました。マイクロスケール電気分解装置を自作し、硝酸銀水溶液で定量的な実験を行った結果、 Ag 23 を主成分とする針状結晶は硝酸銀水溶液の高濃度下で多く得られ、低濃度下ではAgOを主成分とした黒色粉末が得られることや、黒色粉末と針状結晶の生成メカニズムの違いは、電解質水溶液の濃度差に伴う酸素発生量の差に依存すること、さらに陽極析出物を正極活物質とした電池は市販の酸化銀電池よりも高電圧を有することなどが分かりました。


【化学】

 おせち料理のゴボウとコンニャクの煮物を作った後に冷蔵庫で一晩放置したら色が緑に変化していました。この現象を調べたところ、ゴボウの中に入っているクロロゲン酸とコンニャクに入っているアルカリ成分が反応して緑色になるという、緑化の原因物質が分かりました。本研究では、ゴボウとコンニャクの緑化条件を調理工程に注目して解明することを目的とし、さらに得られた緑色を他食品に天然の着色料として利用したいと考えました。研究の結果より、最も緑が強く発色する最適緑化条件を得ることができました。そして、この得られた緑化条件を利用してグミを緑色に着色することができ、食品への応用の第一歩とすることができました。


【細胞・分子生物学】

 鳥類や哺乳類などの性は遺伝子によって決まりますが、鳥類の性染色体の構成は、ZWが雌、ZZが雄となっており、雌のZWがお腹の中の卵子にあるため哺乳類のような簡単な産み分けができません。そこで鳥類で雌雄産み分けを可能にするために「性決定のメカニズム」を探りました。
 まず最初の実験でニワトリの性比を約1000個の卵から調べたところ、雄:雌=1.08 : 1でした。次に、無精卵から卵子の細胞を回収してDNA鑑定し、本当にZ、Wの卵に分かれているか調べました。3つ目は、有精卵の孵卵前、24時間後、48時間後、72時間後の細胞や血液を回収してDNA鑑定を行い、さらに体外培養法により継続孵卵しました。今後は3つ目の実験を応用して時系列で血液を採取し性決定の時期を調べることと、孵卵しているときに何らかの刺激(温度、ホルモン投与等)を与え性転換が発現しないかを試したいと計画しています。


【微生物学】

 国花が桜、国鳥がキジであるように、日本には国を象徴する菌「国菌」があります。それが麹菌です。麹菌は味噌、醤油、みりんといった和食の食材をつくることができます。麹菌を寒天培地の上で培養すると、年輪のような模様のコロニー(菌の集合体)をつくるときと、模様のないコロニーをつくるときがあります。私はこの違いがなぜ生じるのか疑問に思い、麹菌がコロニーに年輪状の模様をつくる原理を解明するべく研究に取り組みました。様々な条件で培養してみると、麹菌はコロニーの形成途中で温度や光といった外部環境の変化を感じたとき、コロニーの部分ごとに菌の密度の差が生まれ、それが輸のように見えるということが分かりました。


【物理学・天文学】

 金属製の筒を覗くと、同心円状のリング模様が見えます。この現象に興味を持ち、どのような仕組みでこのような現象が起こるのかを明らかにしたいと思いました。
 まず、筒の中の模様の画像を撮影し、画像解析ソフトを用いて画像の輝度測定を行いました。次に、得られた結果から仮説を設定し、反射角度や反射回数の違いと輝度との関係を測定する実験を行い、仮説を検証しました。その結果、この模様は直接入射光の他に、筒の内側壁面でのn 回反射光によって生じた虚像を見ていることが分かりました。


【物理学・天文学】

 鉄などが磁右に引き寄せられることはよく知られていますが、磁石から逃げる性質を持つ「反磁性物質』が多くあることはあまり知られていません。私たちは、この反磁性の非常に小さな磁化率を、簡単な原理で測定する装置を開発しました。
 今後、装置の精度向上のために静電気除去装置の使用や真空中で測定することを考えています。また、この原理を利用して強磁性について応用できないかと模索しています。


【地球惑星科学】

 私たちは静岡県磐田市遠州灘鮫島海岸でガーネットや磁鉄鉱を多く含む砂を発見し、ガーネットサンドと命名しました。今回は、ガーネットサンドに多く含まれる磁鉄鉱がどこから運ばれるのかを研究しました。
 まず、鮫島海岸で1カ月毎に測量を行い、1年間の海岸の変化を調査しました。次に、漁船と採泥器を借りて鮫島海岸沖の海底の砂を採集し、鉱物の種類や大きさ、磁石に反応した砂の量を測定しました。また天竜川の上流で砂や岩を採集し、偏光顕微鏡で観察を行いました。
 この結果、磁鉄鉱は天竜川上流の三波川・御荷鉾帯と呼ばれる地質帯の蛇紋岩中に多量に含まれており、これが天竜川により侵食運搬されて遠州灘に流れ出し、台風や高潮によって鮫島海岸に打ち上げられることが分かりました。


【地球惑星科学】

 私たちは「枕状溶岩」という俵型に固まった溶岩の研究をしました。これは玄武岩の溶岩で、水中で噴出してチューブ状になったものです。
 細かく観察するとこの溶岩にはたくさんの穴(気泡)がバラバラにあることに気づきました。気泡の方向を測ったところ、規則性は見られませんでしたが、肉眼と顕微鏡下での気泡観察により、楕円形の気泡が集中して分布している箇所があることを見つけました。そこでさらに、溶岩が流れた時の気泡が どのような方向に並ぶのかを、ホットケーキの材料や寒天を使った実験で調べました。この結果を参考に「枕状溶岩」の気泡方向を調べ直したところ、一定の方向性が見られ、マグマの流動方向を推定することができました。


【コンピューター科学】

 一般的な「オセロ」については様々な研究が行われていて、6×6の縮小版オセ口ではその最適な置き方と後者必勝の結果が知られています。そこで私たちは、三角形の盤面と三色の駒で行う新しいタイプのオセロ(三角三色オセロと名付けた)が作れないか研究を行いました。
 まず、盤面の変更に伴う初期配置の考察が必要でした。次に、ルールを定め、ゲームとして成立するかどうか、場合分けとプログラミングを駆使して検証しました。また、ゲームの戦術を考察することによって、このゲームの特徴を明らかにしました。具体的には、いくつかの手筋についてプログラムで統計を取り、勝率からその手筋の妥当性を示すという手法を取りました。


【環境管理】

 「地域の里山の生物多様性は本当に豊かなの?」という問いに対して、さまざまな調査・研究が行われていますが、例えば植物の専門家は植物から、自然環境と言えばまずは景観から、といった具合にその環境を一面的に評価することはあっても、多面的に評価する研究はほとんどされておらず、文献も見当たりません。そこで、里山の生物多様性を評価するために、景観・植生、植物相、鳥相、チョウ相、トンボ相の5つの視点から多面的に評価する「里山生物多様性指数:Satoyama Biodiversity Index (SBI)」と、チョウとトンボがその里山にどの程度定着しているかを示す「定着度」を独自に開発し、愛媛県宇和島市宮下(大池)の生物多様性評価を行いました。


【環境管理】

 海水からマグネシウムイオン、廃陶器からアルミニウムイオンを抽出し、合成比を調整して、他の陰イオンが混在する状況下でも、硝酸イオンを吸着するハイドロタルサイトを合成しました。しかし、吸着材の質量の百分の1の硝酸イオンしかつかまえることができないため、太陽光で硝酸イオンを窒素ガスに変換する機能を持たせるために光触媒を組み込みました。多くの光触媒は紫外線の波長でしか働かず、高価であるため、窒化炭素と二酸化チタンを組み合わせ、可視光の波長で働く安価な光触媒を合成しました。更に、現場で用いるために、廃ペットボトルから製造した樹脂と吸着材の間に微小な隙間を形成しつつ、強度を損なわない固定方法を開発しました。


【数学】

 物体を破壊するとその素材によって出てくる破片の大きさ、個数の分布は変わる。そこで私たちはビスケット等を用いて破壊過程を数理モデル化し、自然数の分割をヒントに各分布が説明できないかと考えました。さらに破壊シミュレーションを用いて実験結果の分布の論理的裏付けを行いました。
 実験は、鉄球を対象の中心に向かって落とす、木槌を対象の中心に向かって振り下ろす、フードプロセッサーで割るという3つの方法を用い、数学的考察については、自然数の分割と合成の概念を用いて破壊の不思議に迫る有益な予想を複数見つけ、ほぼ証明できました。また、シミュレーションは2つのタイプを用いて理論的な裏付けはできないかと考え、破壊結果から、過程のメカニズムへの1つのアプローチができました。


【数学】

 今回の研究により、私たちは二次元ファレイ空間を点(0,1)から生み出すことのできるファレイ生成行列を発見しました。さらに、3点からなるファレイ原子を発見し、二次元ファレイ空間はファレイ原子で埋め尽くされた結晶構造をもつことを証明しました。さらに、ファレイ原子は必ずインデックスという量を持ち、インデックスの集合はファレイの分数理論と同じ構造をもつことも証明しました。三次元ファレイ空間においても二次元と同様な観点から研究し、ファレイ生成行列、ファレイ原子、結晶構造の存在性を発見し証明しました。現在は四次元以上のファレイ空間の研究を行っています。


【数学】

 足し算の繰り返しは掛け算で、掛け算の繰り返しがべき乗。ではべき乗の繰り返しは?これをテトレーションと呼ぶ。これは超演算と呼ばれるものの一種だ。そして、テトレーションを色々な数で割った余りを考える。すると、テトレーションする数を大きくすると(つまりべき乗を多く繰り返すと)余りは必ず一つの数になる。何で割っても、何のテトレーションでも、必ず。私はこれが「掛け算から数えて2回繰り返したからだ」ということを突き止めました。そして、掛け算に似た性質を持つ多項式について、「2回繰り返す」と同じ性質《あまりが一つの数になる》が表れることを発見し、証明しました。


【数学】

 私たちは同じ数をn  回掛けた数、つまりn乗数をnで割った余りが二つのn乗数で等しくなるのはどういう時なのかを研究しました。例えば、76 を6で割った余りは1となり、116 を6で割った余りも1です。この時の6と7と11の関係を調べたということです。
 その結果として得られた数式などを用いて暗号を作ったり、より高度な数学の研究を行いました。