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JSEC2016 優等賞


【植物科学】

 国の重要文化的景観に指定されている宇和島市遊子(水荷浦)の段畑を見た私たちは、その石垣や畑地の間から生えている小さなスキマ植物たちがその景観に花を添えていることに気付いた。そして、そのスキマ植物たちが段畑にどのように適応しているのかという疑問を持ち、三つの仮説を立ててその戦術を探った。
 植生調査の結果、スキマ植物たちはスキマの空間に適応しているというよりも、除草(剤)や土地の乾燥による影響が大きいことが分かってきた。また生育型から考察すると、各地の段畑で異なる戦術によって陣取り合戦をしている可能性が浮かび上がってきた。今後はスキマ植物の魅力によって段畑を2倍楽しむエコツーリズムに発展させたい。


【化学】

 学校で行われる生徒実験では、そのまま水道に流すことができない廃液が多く出され、その処理は業者に依頼する必要があります。私たちは、高校化学でよく用いられる銅イオンを含む廃液に着目し、同じく学校から廃棄される廃チョークを用いて処理する方法を考えました。
 実験の結果、高温で焼成したチョークを用いれば、銅廃液に含まれる銅イオンをほぼ全て吸着できることが分かりました。これはチョークの主成分である炭酸カルシウムが、焼成により酸化カルシウムへと変化し、銅イオンを水酸化銅として沈殿させるためです。さらに水酸化銅を焼成し銅イオンに戻りにくい酸化銅にすれば、より安全に廃棄できることが分かりました。


【化学】

 8.4℃〜71.1℃の様々な温度の純水70試料を冷凍庫内で冷却し、純水中央部と冷凍庫内の温度を5分ごとに、純水中央部の温度が-20℃に下がるまで測定したところ、16℃〜36℃の純水が最も早く0℃に達し結晶化を始めた。結晶化を終えるまでに必要な時間は11℃〜50℃の純水が短かった。
 ムペンバ効果は16℃〜36℃で見られる効果である。温水の水分子の共有結合は強く、分子間の水素結合は弱い。水温が低下すると、共有結合は弱くなり水素結合は強くなる。冷却に伴って共有結合に蓄えられていたエネルギーが放出され、その際の温度低下による冷却力によって、冷水よりも16℃〜36℃の温水のほうが早く凍るのではないか。


 【化学】

 過飽和とは、溶液や蒸気を冷却し、理論上析出が発生すると考えられる温度になっても析出が発生しない現象です。私たちは水溶液を冷却して結晶が出てくる温度を測るという方法を用いて、析出の発生のタイミングと溶液の温度変化を記録しました。さらに、過飽和が添加物によって促進したり抑制したりされるのかを実験しました。
 その結果、冷却時の温度変化のパターンは添加物によって4つのパターンに分けられ、過飽和が添加物によって促進されたり、抑制されたりすることがあるとわかりました。その結果から、水溶液の過飽和現象が水に溶かした物質との相互作用や化学反応のあり方を反映していると考えました。


【化学】

 炭素を電極にして電気分解で発生させた水素・酸素を燃料とする燃料電池が教科書に載っています。しかし、電気分解せずに、水素・酸素の中に電極を置いただけでは放電しません。これを解決するため、電極を多孔性のオガ炭にして、希少な白金触媒を使用しない燃料電池作りを目指しましたが、壁にぶつかりました。電気分解を1.0Vで行うと水素も酸素も発生しませんが、モーターを回転させる放電をしました。この電池は燃料電池ではなく、充電できる電気二重層コンデンサーと未知の二次電池になっていることが分かりました。教科書は訂正が必要です。インターカレーション、官能基への吸着、活性種などが二次電池の反応として考えられます。


【化学】

 蛍の光に興味を持ち、同じように振動する化学発光の反応機構を調べた研究です。昨年はCuSO、HOKSCN、NaOHとルミノールを用いて周期的な発光を再現でき、短時間強く発光する原因が・OSOCNであることが分かりました。
 今年はルミノール以外の色素で発光の振動が起きないか調べ、発光の感度が強いL-012を用いて、HOの変動の測定に成功しました。さらに、酸化還元電位との関係も確認できました。溶液中のそれぞれの成分の濃度を変え、発光強度や発光の振動周期、pHの変化を測定しました。また、振動が止まってしまいますが、その原因はpHが酸性に傾くからだということをつき止めました。パソコンで行ったシミュレーションで反応を再現することができました。


【物理学・天文学】

 私たちは月食の観測でターコイズフリンジについて知り、この研究を始めました。ターコイズフリンジとは、月が地球の影を通過するときに月の一部が青みがかって見える現象です。2014年10月8日と2015年4月4日に行った月食の観測ではターコイズフリンジの色、幅に違いがありました。ターコイズフリンジの色は、月と地球の天体位置、地球大気に影響されると考えられます。
 また、ターコイズフリンジは近年発見された現象であることから、時代に伴うカメラの発展に関係していると考えられます。私たちは、ターコイズフリンジを観測することで地球上空の大気の様子を知ることができると考えました。


【物理学・天文学】

 近年、スペースデブリ(宇宙空間のごみ)の数は増加し続けています。現在、デブリはアームで掴んで除去するという方法が考えられていますが、掴むためには、デブリの形状や回転の様子を知ることが必要です。そこで私たちはこれらの情報を得るための手法を確立する研究を行っています。
 最初に、観測したデブリのライトカーブ(天体が反射する光の量をグラフ化したもの)よりデブリの形状を推測します。そして、様々な特徴を持つ粘土モデルを複数個作成し、そのライトカーブのデータをとります。モデルとデブリのライトカーブを比較し、デブリのライトカーブに近づくようにモデルの形状や回転を調整していきます。これらの作業を繰り返すことで、デブリの形状や回転を特定することができます。


【物理学・天文学】

 摩擦を考慮しない面に衝突した小球の跳ね返りについてはよくわかっているが、摩擦を考慮した面や曲面に衝突させた小球の跳ね返りについては詳しくわかっていないことがあります。そこで、私たちは摩擦の大きさを変えた平面や円柱の側面に小球を衝突させて運動のようすの違いを調べました。
 実験するにあたり、小球全体を写そうとする一般的なストロボ撮影法では正確な記録ができないので、「光源写し込みストロボ撮影法」を開発しました。また、ハイスピードカメラも用いて衝突後の小球の回転についても調べました。これらの実験結果から摩擦の大小や衝突面が平面か曲面がという違いで、小球の跳ね返る運動に違いがみられることがわかりました。


【地球・環境科学】

 現在、鮫島海岸は浸食され続けている。この対策として消波ブロックが設置されている。しかし、消波ブロックが海岸浸食にどの程度有効であるか不明である。そこでこれを検証した。
 方法は消波ブロック周辺で1カ月毎に水準測量を行った。また凧やドローンを用いて空撮を行い、過去の航空写真と比較した。さらに、堆積構造を調べるためにトレンチ調査を行った。
 この結果、鮫島海岸では海岸浸食により標高が年0.10mの割合で減少しているが、消波ブロックを設置することにより、その陸側に砂が多く堆積して、浸食が抑えられる。また、単体型消波ブロックより連続型消波ブロックの方が効果は大きい。


【地球・環境科学】

 秋田県北部の湧水24カ所について、実地調査と採水を行い、水質分析を行った。水質は、日本海側ほどMg濃度が高く、内陸側の十和田湖に近いほどCa濃度が高い傾向が見られた。このことにより、湧水の水質はかん養地域の地質や火山活動と深く関係しているのではないかと考えた。中には「塩の井」のように塩水が湧出しているところや炭酸水が湧出する「坊山の冷水」などがあり、秋田県北部地域を形成するグリーンタフ層との関連が高いのではないかと推測した。


【地球・環境科学】

 「森林火災を予測しよう」という研究です。
 2015年、インドネシアで大量発生した森林火災が大問題となり、161億ドル(=約1兆6100億円)の損失を引き起こしたと試算されています。そのため、火災を予測する方法の開発が、いま、求められています。
 2015年に起こった森林火災の地点マップを入手し、その年のインドネシアの衛星画像を解析したところ、植物の健康状態をモニタリングすることで約4割の未来の火災を予測できました。また、人間の活動を見る指標として道路からの距離に着目したところ、人間活動が薄いと考えられる道から遠い場所においては、植物の観測で約半数以上の火災を予測することに成功しました。


【環境工学】

 硝酸イオンによる水質汚濁は世界中で問題視されています。ブルーベイビー症候群は、妊婦が硝酸イオンを体内に取り込んだ結果、胎児が酸欠状態になり、死に至る病気です。また、硝酸イオン濃度が高くなった水域では植物の異常繁殖や赤潮等の生態系の乱れが起きます。しかし、硝酸イオンを効果的かつ持続的に除去する方法は確立されていません。
 そこで、私たちは、「窒化物が白金触媒の代替になる可能性」と「銅と白金族の合金は硝酸イオンを除去できる」という事例からヒントを得て、窒化炭素と銅を固定した炭素電極を開発しました。この電極を用いて、触媒脱窒法を行った結果、非白金系触媒による世界最高事例とほぼ等しい除去速度を達成しました。


【環境工学】

 私は、廃コンクリートを再び固める技術の開発に取り組みました。東日本大震災によって廃コンクリートを多く含む震災がれきが発生しました。しかし、5年以上経過した今でも未処理がれきが多く残っているのが現状です。その要因として埋め立て用地が不足していること、また劣化したコンクリートは再び固めることが出来ないことが挙げられます。
 この分野についてはほとんど研究がなされていなかったので自分の手で解決してみようと思いました。
 現在、ほう砂と廃コンクリート=1:4の混合物を加熱と静置によって再固化出来る技術(CB法と命名)を開発しました。CB法は自由に造形可能・環境にやさしい・強度やコストが市販品に近い等のメリットがあります。


【環境工学】

 コンクリートはセメント・砂・小石・水を混ぜて乾かして作りますが、木片コンクリートとは、小石・砂の代わりにある割合、木片を利用しただけのものです。木片コンクリートは、セメントより価格の安い木片をつかうことで従来のセメント価格上昇に対応し、その上日本の未使用木材の新たな使用用途を生み出すことができます。その強度を調べ、実用の可能性を示しました。


【数学】

 18の約数を小さいほうから並べてそれらを2個の数からなる組(1,2)、(3,6)、(9,18)に分けると、各組の数の和は3、3の2乗、3の3乗となります。また、これらの数の並びは196でも同様なことがいえて、約数を小さいほうから並べてそれらを3個の数からなる組に分けると、各組の数の和は7、7の2乗、7の3乗となっているのです。
 2つの数の共通点は約数の中に、3や7といったメルセンヌ素数と、6や28という完全数と呼ばれる数があるということです。18や196はメルセンヌ素数から派生していると考え、これらの数を派生数と呼ぶことにしました。この立場から見ると、完全数もメルセンヌ素数の派生数となっていました。オイラーは偶数の完全数のタイプを決定することに成功し、その後多くの数学者たちが、未解決問題である「奇数の完全数は存在するのか?」に挑戦し続けています。
 今回、私は派生数の研究から、従来の完全数を一般化した素数pに関する完全数というものを定義することに成功し、研究結果の1つとして、pが3以上のとき、「pに関する完全数は奇数だけである」ということを示しました。


【数学】

 折り紙工学のミウラ折りは、紙の対角線の部分を持ち開閉する。大きなシート状のものを平面から立体に折りたたむことができる。私は力を加える点が2箇所ではなく、1箇所だけで済む、より効率的な折りたたみ方の可能性について研究をした。
 そのためには、力を加える点を1つにすればよいと考え、私は軸を作り、その軸に力を加えるだけで、容易に開いたり閉じたりできる折り方を作成してみることにした。軸に紙を巻きつけるように中心から折り、完成した展開図を比較することにより、3つの法則性があることがわかった。
 今後は、どのような厚みや材質にも対応した一般式を導き出し、様々な産業に応用できる折り紙工学の技術発展に貢献したい。


【数学】

 2元2次連立方程式は、様々な数学者によって研究されてきた、数学的に注目されることのある方程式である。私の研究目的はその2元2次連立方程式のオリガミクスの作図、すなわち折るという操作を用いた新しい解法を見つけるということである。
 現段階で、自分の研究の済んでいる少なくとも一部の2元2次連立方程式には、その新しい解法が存在するということを発見した。さらに、それらの解法は、一般的な方法で計算するよりも計算量が少なくて済むので、数学的に新しい発見であるというだけでなく、応用の可能性も秘めた発見であると考えられる。


【数学】

 立方体の各面が4×4数独になる「4×4三次元数独」を作成し、そのいろいろな性質について考察し、次のようなことが分かった。
 配置の総数は、立方体の向きを固定した場合は768通り、向きを固定しない場合は44通り、展開図を表に折って作った立方体と裏に折ったものを区別しない場合は23通りある。また、数字の2つを入れ換えると、それに応じて4×4×6=96個の場所のうち、22個または46個が入れ換わる。
 ヒント数が5個の「4×4三次元数独」のパズルを作ることができたが、最小ヒント数が5なのか4以下なのかについてはまだ不明である。
 正八方体の各面が4×4数独になる、三次元と同様の「4×4四次元数独」は作成できない。