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 熱中症を知る、防ぐ なぜ重症化…
 体に熱こもり、内臓にダメージ
 (朝日新聞社発行 2015年7月15日付 朝刊 32ページ)


<グラフィック・大屋信徹>


 暑さが厳しくなり、「熱中症」で病院に運ばれる人も増えてきた。重症化することもあり、総務省消防庁によると、4月下旬から7月12日までに10人が亡くなった。熱中症になってしまったときはどうすればいいのか。予防はどうすればいいのか。

 「自分はならないと思っていたけど、あんなに苦しいとは。もうこりごり」。東京都新宿区の宮沢俊夫さん(63)はそう振り返る。

 6月23日、一人暮らしの宮沢さんは普段通り、缶ビール数本を飲んで就寝。雨の予報のため、いつもは開けて寝る窓を閉めて寝たという。暑さは感じなかったが、夜中には寝汗がびっしょり。翌朝、起きたとたんに強い吐き気に襲われた。

 NPO法人などが地元団地で運営する「暮らしの保健室」の熱中症予防講座で、嘔吐(おうと)が症状の一つと聞いていた。病院を受診したところ、熱中症と診断され、それから5日間は下痢と吐き気が止まらなかったという。回復後は水分をこまめにとり、飲酒も控えめにしている。

 熱中症は気温や湿度の高い環境で、体温調節がうまくいかなくなることで起こる。昭和大の三宅康史教授(救急医学)によると、体は汗をかいたり、皮膚近くに血流を集めて冷ましたりして体温上昇を防いでいる。

 ところが、暑い環境や激しい運動によって大量の汗をかき、水分や塩分が不足すると、内臓や脳をめぐる血流も減り、めまいや立ちくらみなどの熱中症の症状が現れる。そのまま高温多湿の環境に居続けると、症状が進み、頭痛や嘔吐、倦怠(けんたい)感などが出てくる。

 さらに進むと、汗をかけないことや血流の低下で、熱を体外に発散できなくなる。内臓がダメージを受け、体温が40度を超すと細胞が壊れ始めて戻らなくなる。すると、意識を失ったり、多臓器不全になったりして、死亡してしまうことがある。

 神奈川県立保健福祉大の谷口英喜教授(栄養学)は「熱中症は体に熱がこもり、臓器がゆで卵の白身のように固まって機能が低下してしまう状態。後遺症に苦しむ人も多い」と話す。後遺症には、記憶力低下などの神経障害や、腎臓や肝臓の機能不全などがあるという。

■なった時は 一刻も早く、水分と塩分を補給

 専門家は熱中症になったと感じた時、まずは体を冷ますため、風通しのいい木陰など涼しい場所で横たわることを勧める。衣服のベルトやボタンを緩め、首や太ももの付け根、わきの下など太い血管周辺を冷たいタオルで冷やす。

 医療機関を受診するかは重症度から判断する。日本救急医学会の分類では、めまいや立ちくらみは重症度「1度」。見守りながらその場の応急処置で対応できる。頭痛や吐き気があるときは「2度」で、受診が必要に。呼びかけても返事がおかしかったり、意識がなかったりする時は「3度」で入院が必要になる。

 応急処置では一刻も早い水分と塩分の補給も重要だ。ただ、水だけでは体内の塩分濃度が下がって症状を悪化させるおそれがあるという。

 日本救急医学会のガイドラインでは塩分を含んだ飲み物、中でも「経口補水液」が適切としている。神奈川県立保健福祉大の谷口教授によると、水が小腸で吸収されやすいよう糖分も入っており、「早く飲めば、後遺症を減らすことが期待できる」という。補水液は水1リットルに対し、塩3グラム、砂糖20~40グラムをまぜれば自宅でも作れる。レモンなどを加えれば飲みやすくなるが、自分で作るときは腐らせないように注意が必要。薬局などで市販品も買える。

■体感鈍る高齢者、熱中症計や予報で判断を

 専門家は「暑さ」と「水や塩分の補給」に気をつければ「熱中症はなくせる病気だ」と口をそろえる。

 昭和大の三宅教授によると、昨夏は全国で約29万人が熱中症で医療機関を受診した。患者数に影響するのはその夏の「暑さ」が大きいという。「7、8月は暑さを避ける生活スタイルに変える発想の転換が必要。特に35度を超える日や熱帯夜が続くと、脱水や低栄養状態が進み、特に高齢者は持病が悪化したり、感染症にかかったりするので要注意」と話す。兵庫医大の服部益治教授も高齢者は気温や体温の変化を体で感じづらくなるため要注意だと警告する。

 暑さへの対策としては、外出時にぬれタオルを持ち歩いたり、自宅なら植物のカーテンやすだれで日差しを遮ったりする方法がある。

 「赤黄青」の色調などで危険性が一目でわかる「熱中症計」や、環境省のサイトで発表され、熱中症の危険度がわかる「暑さ指数」(http://www.wbgt.env.go.jp)も参考になる。服部教授は「自分は大丈夫と考えがちな高齢者ほど危険。自分の感覚ではなく、客観的な数値で判断するように気をつけてほしい」。

 水分では、大人なら3度の食事で約1リットルの水分を摂取しており、ほかに1日約1.2リットルが必要だ。入浴前後や就寝前など、のどが渇いていなくても飲む習慣をつける。3度の食事をとっていれば塩分は足りているが、屋外を歩くなど汗をかくときには、補給を心がける必要がある。

 「教えて!『かくれ脱水』委員会」(委員長=服部教授)のサイト(http://www.kakuredassui.jp)で、他にも対策を知ることができる。

(竹野内崇宏)

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