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 「禎子の鶴」、オバマ氏の祈り
 平和を思い、そっと2羽置く 原爆資料館見学
 (朝日新聞社発行 2016年05月29日付 朝刊 39ページ)


 被爆地・広島を訪れたオバマ米大統領は、「サプライズ」の贈り物を残した。大統領手作りのカラフルな4羽の折り鶴。原爆投下の10年後、白血病で亡くなった少女にまつわる「平和のシンボル」だ。核廃絶の願いを世界へ広げようと、託された広島平和記念資料館(原爆資料館)は公開の準備を始める。

オバマ氏から贈られた折り鶴=27日、広島市中区、高橋雄大撮影


 原爆資料館見学 

 オバマ大統領は27日夕、広島到着後すぐに原爆資料館を見学した。同行者らによると、オバマ氏は約5分間、数点の展示資料と向き合い、岸田文雄外相の説明に熱心にうなずいた。なかでも関心を示したのが、佐々木禎子さんの折り鶴。アクリルケースを特別に外すと、オバマ氏は顔を近づけてじっと見ていたという。

 「実は折り鶴を持ってきました」。オバマ氏が突然そう切り出すと、随行スタッフがトレーに載せて運んできた。梅や桜の花が彩る和紙を丁寧に折り、「少し手伝ってもらったけれど、私が作りました」。白と淡いピンクの2羽を小中学生2人に1羽ずつ手渡した。

 「私たちは戦争の苦しみを経験しました。共に、平和を広め核兵器のない世界を追求する勇気を持ちましょう」。芳名録にメッセージを書くと、その上に別の2羽をそっと置いた。
 その後、原爆死没者慰霊碑への献花や演説を終え、原爆ドームを望む場所まで移動。岸田氏が、禎子さんの像が空に手を広げる「原爆の子の像」も紹介すると神妙な面持ちで答えた。
 「この一帯は、平和にとって大変重要な場所ですね」
 折り鶴4羽はすべて資料館へ寄贈された。志賀賢治館長(63)は「オバマさんは禎子さんの話を米国で知り、折り鶴を準備されたのかもしれない。なるべく早く公開したい」と話す。

 禎子さんの同級生で、被爆証言を続ける川野登美子さん(73)は「空に向かって大きく手を広げるさだちゃんの思いが、ついに米大統領にまで届いた。さらに多くの人に思いが広がるよう願っています」と喜ぶ。
 オバマ氏の折り鶴は海外でもさっそく報じられ、米紙USAトゥデー(電子版)は「象徴的な振る舞い」と紹介。禎子さんの折り鶴は「核戦争の痛切さの重要な象徴」と伝えた。英BBC(電子版)は「サダコと折り鶴」と題する記事を掲載。作り方の動画を添え、「今、折り鶴は平和の象徴」と報じた。
 (岡本玄、宮崎園子、平井良和)

「実は折り鶴を持ってきました。少し手伝ってもらったけれど、私が作りました」

平和記念資料館は国内外からの見学者で混雑していた=28日、広島市中区、伊藤進之介撮影

 佐々木禎子さんの兄・雅弘さん(74)は28日、朝日新聞の取材に答え、オバマ大統領について「禎子の千羽鶴に関心を寄せていただき、大いに感激。謝罪とともに平和への強い決意、寛容な心のぬくもりを受け取りました」と感謝した。
 雅弘さんは、禎子さんの生涯を語り継ぐ活動に国内外で取り組む。オバマ氏の広島訪問にあたっては関係者を通じ、米国側に禎子さんの折り鶴の意味を伝え、折り鶴も贈っていたという。「大統領は事前に広島のことを学習してこられたと思う。心の終戦に向け、日米の新たな一歩を示していただいた」と評価した。

■国内外から共感

 28日、原爆の子の像の足元に折り鶴を納める人の姿が絶えなかった。広島女学院高校1年の岩本彩香さん(15)ら同級生4人は、交流を続ける米ペンシルベニア州の小学生約20人から今月届いた千羽鶴を手に訪れた。オバマ氏の折り鶴をニュースで知り、「核をなくしたいというオバマさんの思いが本気だと、よくわかりました」と話した。
 スペインからの旅行客トニー・トゥバウさん(32)は、初めて折った鶴を友人と1羽ずつ納めた。広島・宮島の宿の人から「あす平和公園に行くなら」と折り方を教えてもらい、行きの電車の中で作ってみたという。なぜ平和を願って鶴を折るのか。禎子さんの折り鶴を原爆資料館で見学し、その意味を初めて知った。「原爆で苦しんだサダコは鶴を折れば病気が治ると信じていたんですね。平和のシンボルだと学びました」
(矢吹孝文)

■回収後再生紙に

 原爆の子の像には、国内外から年間約10トンの千羽鶴が届く。広島市は一定の期間がたつと焼却処分してきたが、2002年度以降は倉庫で保管している。
 NPO法人・おりづる広島(広島市南区)は、公園内にある様々な慰霊碑に供えられた折り鶴を回収し、再生紙にする事業に取り組む。12年からは原爆の子の像の千羽鶴も原料に。約15年間で4トン以上の折り鶴に新たな命を吹き込み、はがきや色紙、名刺に生まれ変わった。
(半田尚子)

◆キーワード

平和記念資料館は国内外からの見学者で混雑していた=28日、広島市中区、伊藤進之介撮影 <佐々木禎子さんと折り鶴>
 平和記念公園に立つ「原爆の子の像」のモデルとなった佐々木禎子さん=写真、兄の雅弘さん提供=は2歳の時、広島の爆心地から1・6キロの自宅で被爆。小学6年の時に白血病と診断され、闘病の末に亡くなった。鶴を千羽折ると願いがかなうとの言い伝えを信じ、薬の包み紙などを使って1300羽以上を病床で折り続けた。原爆の悲劇として国内外で広く語り継がれ、実物の一部は原爆資料館に展示されている。

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