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 (子どもと貧困)
 「食」の支え合い、手探り 子ども食堂、急増
 (朝日新聞社発行 2016年07月02日付 朝刊 2ページ)

 全国で開設が相次ぐ子ども食堂。朝日新聞の調査では、活動資金をどう確保するか、困っている子に足を運んでもらうにはどうすればいいかを課題に挙げるところが多かった。貧困対策というイメージから抵抗感を持たれるケースもあり、各地で模索が続いている。

 新 設  週3回無料「家族みたい」

 「ハラ減った~。早く~」。6月の土曜正午、沖縄県中部の公共施設。われ先に飛び込む小学生らの声が響いた。
 3月から週3回開かれている無料の子ども食堂。この日は約50人が集まった。メニューはそうめん。ボランティアの女性数人が錦糸(きんし)卵やキュウリをのせ、つゆをかけていく。「朝ご飯食べてない」と、待ちきれず先に手をつける子もいた。
 配膳を手伝い、最後に食べ始めた中学3年の女子生徒(14)は母子家庭で、5人きょうだいの末っ子。兄姉は仕事やバイトで帰りが遅く、女子生徒が炊事、洗濯、掃除を担う。公民館で週2回開かれる無料塾にも通い、そこで夕食もとる。

 「家に食べるものがない時もあるからうれしい。大きな家族ができた感じ」
 一方、「貧困の子が行く場所」という認識が、ハードルになるケースもある。
 東日本の山間部で今春、公民館で子ども食堂を開きたいと地区の区長に依頼にいった民間団体のメンバーは、問い詰められた。「なぜ、うちでやるのか。困窮者が集まる地域と思われる。どんな趣旨で開くのか」。他の地域で開いたときの新聞記事を後日持っていき、誰でも交流できる場と説明。「どんな子も楽しめるなら」と許可された。

 九州でも昨年、公民館で開こうとして「貧困の子どもはいない」と区長に拒まれたケースがあった。主催者が何度も足を運び、「全ての人の居場所になり、地域が活性化する」と説得して開設できたという。
 あえて「子ども食堂」と名付けないところもある。

 資 金  助成や寄付で、やりくり

 食堂の継続には安定した財源の確保が欠かせない。
子ども食堂の料金・開催頻度・開設数  子ども食堂の多い滋賀県。開設を後押ししているのが、県社会福祉協議会などでつくる「滋賀の縁(えにし)創造実践センター」だ。モデル事業で昨年度から、食堂を運営する団体などに初年度20万円、その後2年間は10万円ずつ助成している。
 5月現在で26団体が対象。今年度は県がこの事業を支援するため1212万円を計上した。センターは「小学校区に最低一つ、300カ所に増やしたい」。
 助成対象の一つ、大津市の「しらゆり子ども食堂」は一口5千円の協賛金も募る。運営する歯科医の山元浩美さん(55)は「助成終了後も活動を続けるには資金集めの仕組みが必要」と話す。

 歯科医師会やロータリークラブで協賛を呼びかけ、半年で30万円集まった。
 ネットで資金を集めるクラウドファンディング(CF)の利用も目立つ。
 埼玉県川口市の「川口こども食堂」はCFで48万円を得た。食材は寄付でまかなえるが、公民館の使用料やチラシ代、絵本などを保管する倉庫代がかさみ、月2千円余り足りないためだ。
 CFで目標の1・2倍を集めたが、佐藤匡史(まさし)代表(43)は「CFのお金が尽きたら“閉店”というわけにいかない」と、オリジナルの文房具などを販売し、運営の足しにする計画だ。

 食材の寄付や会場の無償提供など現金によらない支援も資金繰りを助ける。
 食材の寄付は各地であり、「野菜はほとんど農家からもらっている」ところも。那覇市ではスーパーの丸大長田店が近くの食堂の希望する食材を無償で提供している。琉球銀行は15団体に毎月1万円分の商品券や食材を贈っている。

 呼びかけ  困っている子に、どう来てもらう

 相模原市南区の元飲食店を使った「相南ハッピーこども食堂」。6月23日夕、十数人の親子で満員となった。訪れたのは、つわりで調理が難しく娘を連れてきた女性、妻が妊娠中で息子2人と来た男性ら。運営する富岡美智子さん(52)は利用を喜びつつ、「貧困や孤食などの子に来てもらえるかが課題」と話す。
 支援を必要とする子にどうすれば来てもらえるか――。誰でも利用できる形式の食堂に共通した悩みだ。
 「冬休み中、毎日開いたが、来てほしいと思っていた子は1回しか来なかった」(兵庫)、「ママ仲間が誘い合って来る。コミュニティーになっていいが、しんどい親子にも来てほしい」(東京)。

 情報を届けるため、子どもの実情を知る学校や地域とつながる動きもある。
 沖縄県うるま市の「スマイルカフェ」は、「誰でも無料で一緒にごはんを食べることができます」と書いた名刺大のカードを小学校長や民生委員、ケースワーカー、市に配り、気になる家庭に渡してもらっている。これまで数人の子がカードを持って来たという。
 食堂になっている児童館の山城康代館長(54)は「情報を届けるには、地域の事情を知る人たちに頼むことだと思った。何度も足を運ぶのも大事」と話す。
 (河合真美江、中塚久美子、丑田滋)

     ◇

 後日、生活面で子ども食堂への多様な関わり方や支援の事例を紹介します。

◆学校と連携を

 桃山学院大の金沢ますみ准教授(スクールソーシャルワーク論)の話 国の貧困対策とは別に、地域でできることとして子ども食堂のような場が始まった。つながりが薄れ、気になる子に声をかけにくい社会になっている。どの子も安心して過ごせる場が必要だと多くの人が感じ、活動が広がったのではないか。

 地域にどんな子がいるのかを知り、何を目指すのかを共有することが大切だ。大人の気持ちより、子どもが必要とすることを探してほしい。鍵になるのは学校との連携。事前に活動を丁寧に説明すれば、理解を得やすくなる。無理のない範囲で続けることが、子どもの安心・安全を支える。

各党、奨学金拡充など公約

 子ども食堂に対し、政府は間接的に支援する。政府が中心になって昨年秋に立ち上げた「子供の未来応援基金」は、民間から寄付を募り、資金を必要とする団体への橋渡し役をする。寄付金は6億円を超え、6月末、同基金は支援する団体の公募を始めた。500万円を上限に事業費を助成する仕組みで、子ども食堂を運営するNPO法人などは支援先の有力な候補だ。

 子どもの貧困対策は大きな政策課題となっている。
 国民一人一人の可処分所得を計算し、ちょうど真ん中の人の所得の半分に満たない18歳未満の割合を表す子どもの貧困率は2003年から上昇し続けている。最新となる厚生労働省による12年の統計では過去最悪の16・3%。18歳未満の6人に1人が「貧困」とされ、十分な食事や教育を受けられていない可能性が高い。とりわけ子どもの貧困率が5割を超すひとり親世帯への支援は喫緊の課題だ。
 ひとり親の子ども向けに学習支援と食事の提供などをする自治体に対し、政府が最大で900万円を補助する事業は今秋から始まる。政府は「可能な限り早期に年間延べ50万人分の居場所をつくる」という数値目標を掲げている。
 また、低所得のひとり親に支給される児童扶養手当は、今年12月支給分から第2子以降の支給額が最大で倍増する。ただ、手当の支給は高校を卒業するまでのため、返済する必要がない「給付型奨学金」の創設などが各党の参院選の公約に並ぶ。

 安倍晋三首相は先月22日のNHK番組で「子どもたちが経済事情で進学をあきらめなければならないということがあってはならない」と強調。民進党の岡田克也代表は先月29日の街頭演説で子どもの貧困問題を取りあげ、「自民党政治が間違っているからこうなっている。暴走を止めて、一人一人が安心して生活できる日本を一緒につくっていこう」と訴えた。
(伊藤舞虹)

■子どもの貧困解消に向けた各党の公約

自民 幼児教育の無償化や高校生等奨学給付金の充実、大学生らへの給付型奨学金制の創設などに取り組み、教育の機会均等を実現
民進就学前教育や高等教育の負担を軽減。貧困が子どもの健康に悪影響を及ぼし、学習や就労を阻害しないよう子ども食堂を促進
公明 子育て世帯などの住宅困窮者を対象に空き家などを低家賃で提供するセーフティーネット住宅を100万戸整備
共産就学前の子どもの医療費を所得制限なしで無料化。大学の授業料を半額に。月額3万円の給付型奨学金を70万人の規模で創設
おおさ
か維新
経済格差で教育を受ける権利を奪われないことと、教育の全課程の無償化を憲法上の原則として定める
社民 都道府県、政令指定市別の子どもの貧困率調査を実施。児童扶養手当の所得制限の引き上げや支給回数の増加などに取り組む
生活 高校授業料無償化は堅持し、私立高校や大学の授業料を減額。給付型奨学金の創設や貸与型奨学金の無利子化などに取り組む
日本の
こころ
バウチャー制度による子育て・教育政策の拡充により、親の経済格差によらず子供の教育を受ける機会を保障
改革 有利子の貸与型奨学金の無利子化、返済不要の給付型奨学金の創設。児童手当を充実させ、毎月の支給とするなど運用を改善

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