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(科学の扉)
IoT、より身近に ネット環境充実、自己流で挑む
 (朝日新聞社発行 2016年10月23日付 朝刊28ページ)


 色々なモノがネットで結ばれる「IoT(アイオーティー)」は近年、経済成長の基盤になるとして各国政府や大企業から注目されている。一方、ネット環境の充実によって、身の丈サイズのIoTを実践する個人や中小企業が出始めている。


■ネット環境充実、自己流で挑む

 視察をした研究者が声を上げた。「これこそIoTだ」

IoT、より身近に<グラフィック・野口哲平>  東京都青梅市の武州工業は自動車や医療器用のパイプを製造する町工場。工場内に並ぶパイプの加工機には、携帯音楽プレーヤーのiPodが貼り付けてある。ガシャン、ガシャンという加工機の動きを感知し、自動的にデータを送信する役目を果たす。「もう使わないiPodの加速度センサーを利用しているんです」。社長の林英夫さん(65)が話す。

 この機能を使い、ほとんど費用をかけず、稼働率を正確に記録するシステムを作り上げた。例えば、ある作業員の部品加工は、午前中や昼食直後は調子よいが、午後3時ごろからスピードが落ちる。そこでこう考える。「午後は作業を変えようかな」「いや、休憩をとる方がいいかも」

 同社のIoTの実践例は他にもある。たばこ箱大の小型コンピューターに温度センサーをつなげ、原材料を加工する電気炉に取り付けている。不良品が生まれやすい温度変化の動きを探る狙いだ。

 「経験だけに頼るモノづくりから脱皮したかった。仕事の『見える化』です」。従業員の出退勤、材料の在庫、生産数、不良品の比率……。膨大なデータを活用し、急な注文の増減や市況の変化にも柔軟に対応できるようになった。作業員も携帯端末を持ち、自分でデータを分析し、効率の改善など不良品の削減につなげている。

 外部に委託しても、ここまで便利にはならなかったと考えている。1985年にパソコンを導入し、98年からはネット接続事業も手がけた経験が生きている。林さんは「工場を隅々まで知り尽くしているから、本当に使えるシステムを構築できた」と話す。
 

■部品安く手軽に  

 IoTは英語の「Internet of Things」の頭文字だ。99年、米国の無線IC技術専門家ケビン・アシュトン氏が打ち出した。家電や文房具といった日用品から巨大な産業施設まで、あらゆるモノがネットにつながることで、社会が大きく変わると予想されている。

 近年では各国政府や大手企業が競うように成長戦略などに組み込み、しばしば「大きな夢」として語られてきた。たとえば交通システムをIoT化して、より正確な渋滞予想をする。農業分野でも雨量や日照、作物の生育を各種センサーで感知して分析し、効率化が可能になるとみられている。

 一方、武州工業のように身近な場所でも着実に発展している。その背景について、三菱総合研究所の主任研究員、大川真史さん(42)はセンサーなどの電子部品が安くて小型になったことと、大量のデータを扱えるネット環境の充実の二点をあげる。さらに、最近はアマゾンやグーグルが、個人や中小企業でも手軽にIoTを使えるようなサービスも始めている。

 「大切なのは、私たち一人ひとりがこの変革に立ち会えること」と大川さん。貴重なデータを自ら活用することこそ、IoTの本質だという。
 

■安全対策に課題

 企業だけでなく個人も熱心だ。9月中旬、東京都内で開かれた、自作のIoTの発表会は、笑い声が渦まいていた。  「私たち、電子工作好きギャルで~す!」。「ギャル電」を名乗る、派手な衣装の2人組み女子が紹介したのは、彼氏に渡す携帯ストラップ。ぬいぐるみの中に小型コンピューターや無線ルーター、振動モーターを詰めた。「スマホから命令を送ると、『寂しいよぉ』って震えます」と話す。

 今後、光センサーや加速度センサーを追加して、彼氏の動きを探るツールにしたいという。夜でも明るくて動きがなければ、家にいてヒマだと推測できるという。お遊びだが、立派なIoTだ。

 この携帯ストラップに搭載された小型コンピューター「Arduino(アルドゥイーノ)」は電子工作ファンに愛用され、扱い方の情報も数多く公開されている。参加者たちは技術を磨き合いつつ、「自分流を生み出せるツール」として、IoTの楽しさを満喫しているようだ。

 新たな可能性をもたらすIoTだが、課題は安全性だ。

 米国の情報セキュリティー会社「インテルセキュリティ」のギャリー・デイビス氏は、ネットにつないだモノが外部から勝手に操作される危険性を指摘する。家庭用エアコンに不正なウイルスが侵入し、操作パネルに「100ドルを支払わないと華氏99度(摂氏37度)にするぞ」と表示して脅迫される危険性もあるという。

 同社によれば、20年までに世界中で500億のモノがネットにつながるという。「電機メーカーは短期間のシェア争いを優先するから、安全対策は後回しになりがちだ」とデイビス氏。IoTの行方を、みんなで気にかける時代になりそうだ。

 (伊藤隆太郎)

 ◇「科学の扉」は毎週日曜日に掲載します。次回は「日本発のモデル植物」の予定です。
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